第8悲劇 皆の言う〝癖〟がわからないんですけど?
〝オッスオッスダンジョン〟のある〝チョリーッス街〟まで、私達の足で二日程。
普通の冒険者であれば、相当時間が掛かるのは言うまでもないんだけど、やっぱり力をセーブせず走れるって凄く気持ちがいい!!
今までは、か弱い女子冒険者に合わせていたから、やっぱり私には魔族くらいの結婚相手で丁度いいんだわって理解できた。
人間の冒険者でもSランクはまぁ……考えても良いかな、程度。
ただし、人によるけど。
「あれが〝チョリーッス街〟ね!」
「〝オッスオッスダンジョン〟がAランク冒険者の狩り場だから、それ相応に強い冒険者は集まっているとは、ギルドマスターに聞いたことあるわ」
「強イトイッテモ、所詮ハ、Aランクネ」
「十分、一般人から見てAランク冒険者って凄い憧れの存在なんだけどね……」
「だが、所詮はAランクなんだよな」
キャシーとナンシー、容赦ない。
容赦ないけど、それは事実。
苦笑いするしかない私としては、元同じPTだった奴がいたらどうしようかな~って思うくらいで、居たらそうね……すぐダンジョンに籠もりに行こうかな……。
ダンジョンに引き籠もるの……。
ダンジョンを破壊するまで出てきてやらないんだから。
「イサミン……大丈夫?」
「ミルクちゃん……」
「ドウシタ?」
「何かあったか?」
「ん~~何かあったわけではないんだけど、元PTメンバーがいたら嫌だなーって」
「ワカル」
「同じく」
「その時は、拳で屠りましょう? アタシはピンヒールで踏みつけるわ♡」
――わぁ、痛そう♡
……じゃなくて、スリットからちらりと見える脚線美。
ミルクちゃん流石です。チラリズムっていうエロスですね!
キャシーとナンシーはビキニアーマーだから露出って感じだけど。
私は良くも悪くも冒険者スタイルだし、露出はそこまでないのよね。
服装は追々考えていこう……。
肌を出す年齢でもないしね……。
「でも、出来れば穏便に……」
「あれ、女勇者じゃん。なんでこの街にいんの?」
「……いつぞやのレンジャーさん……」
そこには、恋人ができて去っていった元PTメンバーだったレンジャーさんが。
やだなぁ。この人絡むと煩いんだよなぁ。
「はは! ついに〝化け物〟連れて歩くようになったの?」
「ばっ! ~~許せません、失礼です! 謝って下さい!!」
「本当のことじゃん? しかも魔王城なんか目指してるらしいな? 本気で行くつもりか?」
「え? なんで知ってるの?」
「そもそも、その体でビキニアーマーは無いだろ、流石に。目の、いろんな意味で毒だよ毒。喜ぶ毒じゃなくて、死滅する方の毒」
「ナラバ」
「本当に両目を死滅させてやろうか」
「え?」
「「チェストー!!」」
ふたりの太い人差し指が、レンジャーさんの目を狙う!
あわわ……っ!
そう思ったその時!
レンジャーさんはミルクちゃんの足払いを喰らい、後ろから転倒!
おかげで目は守られたが、後頭部は強く打ったようだ!
「ちょっと貴方。言いたい放題言ってくれるじゃないの」
「うぅ……う? へ?」
「アタシの大事な仲間に対して、今、両目を抉られてても可笑しくはなかったのよ? 本気で両目を失いたかったかしら?」
「あ、う、そ、それは……。お、オイ! 女勇者! お前もなんか俺を弁護しろよ!」
「弁護しようが無いんですよ。自業自得すぎて」
「何だと! この役立たずのチッパイ女勇者!」
途端――「パァアアアアアン!」と凄い音が聞こえたと同時に、レンジャーさんは壁に顔面からぶつかり、その場に倒れた。
人って横にも吹き飛ぶんだな。いい勉強になった……。
「今のはギルティよ、クソ野郎……」
「ミルクちゃん……っ!」
「アタシの大事なイサミンに対して、なんて暴言を吐いたのかしら!」
「全ク、モッテ、ソノ通リネ!」
「女勇者のチッパイは正義だというのが分からんのが多すぎる。ああ、嘆かわしや」
「チッパイは……正義……?」
思わず虚無った瞳と引きつった笑顔で口にすると――。
「いい機会だからイサミンも聞いて? 市場ってね、需要と供給なのよ。つまりイサミンはブルーオーシャン」
「な、るほど?」
高度すぎて分からなくなってきた。
取り敢えず、需要と供給があるというのは分かったぞ!
私、偉い!
「ただ、悲しいことにチッパイ持ちで慎ましやかなお尻持ちは……癖持ちが少ない傾向にあるわ。でも、所謂、希少価値が高いとも言えるの」
「癖……? ……希少価値?」
「私は結構ありだと思うんだけど」
「もう、ミルクちゃんがありなら、それでもう良いわぁ~!」
……私は考えるのをやめた。
ミルクちゃんが良いって言ってるなら、もうそれでいいじゃない?
希少価値とか癖だとか言われても、私には難易度が高くて分からないわ。
「ああ……イサミンには、難しい話だったわよね?」
「そうかも知れない!」
「そんなイサミンも大好きよ?」
「ありがとうミルクちゃん!」
思わずミルクちゃんにギュッと抱きしめられる。
はぁ……ミルクちゃんには癒やし効果がありますなぁ……。
「ソレデ、アレ、ドウスルヨ?」
「埋めるか?」
「放置しましょう。喧嘩に巻き込まれた冒険者として片付けるのよ。証拠は抹消するためにあるの」
「「「イエス・マム」」」
こうして私達は、すぐにその場を去った。
人気のない時間帯で助かったわ……。
そんな時間帯に出会ってしまったレンジャーさん。
貴方のことはもう忘れるわ。記憶の底へサヨウナラ……。
「さて、まずは冒険者ギルドに行って、ギルマスに挨拶だけしたら、一旦街から離れましょう? なんだか、ここにいると難癖つけたがるアホがいる気がして嫌だわ」
「同感です」
「同ジクネ!」
「全く、我らの事を理解できない人間の男はやはり……」
「やはり?」
「……弱い男しか居なかった」
「ハハッ! ソレナ!」
ああ、弱い男しかって……レンジャーさん、あれでSランク冒険者なんですよ?
EX男性じゃないと、私達の相手は務まらないって事?
え? 他の勇者とか?
「それって、人間だと現地勇者か、異世界勇者との恋愛くらいしか残ってなくないですか? 後は手頃に魔族中心ですが」
「魔族と言っても、かなり上のランクになるわねぇ……」
「オーガキングは簡単に倒せてしまうからな」
「モット、手応エ、アルノガ、イイネ!」
――その手応えのある魔族って、どの辺なんですかね?
それを聞くのが、ちょっとだけ怖かったのは、流石に言えない。




