第7悲劇 以前のパーティとの相性の悪さを思い出しながら、私達は突き進む!
――基本的、勇者一行とは〝魔王を倒す為の存在〟であって、それ以上でもそれ以下にでもない。
その為、勇者には国が一定のお金を常に払い、そして衣食住のお金も用意してくれる。
村娘だった私には、破格すぎる内容だった。
私が教会で選ばれた時、両親は泣いて喜んだわ。
でも、その後に待っていたのは地獄のような勇者となるための訓練の日々。
ボロボロになるなんて当たり前。
青痣、打撲、打ち身に擦り傷に切り傷、なんでもござれだったわ。
厳しい修行の末に身につけたEXという立場。
そして、女神様からの祝福。
これらを鑑みても、頑張った甲斐はあったと思う。
ただ――それまでのPT面子との相性が最悪だった。
どうしても駄目だったのだ。
普通の冒険者では。
やはり、規格外のEXランクは、EXランクの人たちと一緒に頑張るのが気楽でいい。
何より、同じ目標を持っている人達との冒険は――楽しい!
夕暮れが近づいてくる頃、オッスオッスダンジョンまであと半分と言った所で、森の中で一夜を過ごすことになった。
と言っても――ミルクちゃんの出した異世界勇者特有と言うべきか、ミルクちゃんの持つ特殊スキルと言うべきか……【拠点】のおかげで快適だわ。
「これがアタシの持つ拠点よ」
「「「ログハウス……」」」
「中は案外広いの。一日走ったんだし、夜はゆっくり休みましょ?」
「賛成~! まだ気力は十分だけど、途中でダウンしたら元も子もないものね」
「タシカニネ」
「休むのも一流の冒険者の心得だわ♡」
こうしてミルクちゃんが拠点のドアを開けると、私達は中に入った。
外は蒸し暑いっていうのに、拠点の中は……涼しい……。
なんていうか、湿度も丁度よければ、室温も完璧だわ!
柔らかい木目の美しい室内には、可愛らしいソファーや机といった家具も備えられていて、二階建てのログハウスの上は、なんと寝室らしい。
「ひとり一部屋使えるわよ♡」
「「「おおおおお……」」」
「まずはお風呂の使い方を教えるわね」
「「「はーい」」」
こうしてミルクちゃんからお風呂の入り方を学んだ。
異世界のお風呂の作りらしく、こっちの作りとは大幅に違うけれど、一度覚えれば後は簡単。
ひとりずつお風呂を頂く前に、ミルクちゃんが何かの飲み物を持ってきたわ。
「プロテインよ」
「プロテ……ん?」
「筋肉を強くする飲み物……って言えばいいかしら?」
「「飲むわ」」
「私は普通の水でいいんだけど……」
「あら、大胸筋大きくしたくないの?」
「飲みます!」
初めて飲むプロテなんとかは……とても甘かった。
何とも言えず粉っぽいけどフルーティー。
一気に飲み干した私達を見て、ミルクちゃんは嬉しそうに微笑んでいたわ。
「これ、アタシのおすすめなの♡」
「おすすめなのね♡」
「運動後、三十分以内に飲めば効果テキメンよ!」
「「「おおおお……」」」
「さ、お風呂入っちゃって? その間にご飯作っちゃうわ」
「え? ミルクちゃんも入るよね?」
「お料理してると汗掻いちゃうから……先に入ってて♡」
「分かったわ!」
こうして私達は、ひとりずつお風呂に入ってシャワーを浴び、部屋着に着替えて、ソファーに座ったり椅子に座ったりして乙女トークを炸裂させる。
「体の匂いが全然違う……。石鹸で洗うよりフローラルよ!」
「スゴイネ! 体臭キエタネ!」
「見て頂戴この美しい金髪を……輝いてるわ!」
「「おおおお……」」
異世界のアイテムを使って体を洗ったり髪を洗ったりしたけど、異世界のアイテムってチート級ばかりなんじゃないかしら?
凄いわ~……異世界。
でも、ミルクちゃん曰く、とても住みにくい世界って言ってたわね。
出来ることなら元の世界には戻りたくないって言ってたし、余程住みにくい場所なのかしら?
そんな事を思っていると、ご飯が出来上がったようで食卓に呼ばれ、私達は机の上に並ぶシチューにパンにサラダ等に目を輝かせたと同時に――物凄い地響きが起きそうな腹の音を鳴らした。
「ふふふ、特製シチュー。昨日のうちに作っておいたの。寸胴五杯分はあるから、しっかり食べてね!」
「美味しそう~!」
「イタダキマス!」
「このパン固くない!」
「異世界のパンですもの。固くないのは当たり前よ?」
「「「ふわ――……」」」
もう何もかもが驚きの連続だったけれど、ミルクちゃんの作る料理は絶品だったわ!
はぁぁぁぁ……。
私の壊滅的な料理とは全く違う。
素晴らしい腕前……。
嫁にほしいくらい……。
いやいや、私が探してるのは婿養子。
何としても魔王城に行くわよ!
「明日の昼には、このペースだと〝オッスオッスダンジョン〟に着きそうね」
「街に入る前にダンジョン行くの?」
「街に入ったら、宿取らないといけなくなるでしょう?」
「一応、冒険者ギルドには行ったほうがいいね」
「あ、そうね。確かに」
「ダンジョンボスについては不明なのよね? 誰も戦ってないのかしら」
「その辺りも含めて聞きに行きましょう?」
「賛成ー」
話し合いの結果、宿は取らないけど、オッスオッスダンジョンのある街の冒険者ギルドには挨拶に行くとして。
集める情報は、ダンジョンボスと、誰も戦っていないのかという情報ね。
ボスの特性がわからないと不安な所があるし……。
食後の最高に美味しい珈琲を頂きつつ、決めるところはしっかり決めてから、夕飯後の片付けは私がすることになった。
その間にミルクちゃんにはお風呂に入ってきて貰う、という感じで。
食事が終わったら、私とキャシーとナンシーでローテーションを組んで食器洗いをすることにしたのだ!
それくらいの気遣いくらい、私達だってやるわ!
「食器用洗剤も……異世界は凄いのね。泡立ちは良いし、水切りもいいし」
「ソンナニ、スゴイノネ」
「異世界凄いわね……」
「でも、住みにくいんですって」
「文明が発達してる分、何かと時間が早く過ぎるのかもしれんな」
「生き急ぐみたいな?」
そんな事を語り合いつつ食器も洗い終わり、後は寝るだけ。
丁度よくミルクちゃんもお風呂から上がったし、いざ、二階の寝室へと向かい、ひとりずつ部屋を貰って中に入る。
私の隣はミルクちゃんだ。
「皆、おやすみなさーい」
「おやすみー」
部屋に備え付けられているフワッフワのベッドに身を沈め、あっという間に眠りについた私達一行は、そのままぐっすりと朝まで眠り……。
翌朝、美味しい香りと共に目を覚まして着替えを済ませ、身支度を済ませてリビングに向かう。
「皆おはよう♡ 朝ご飯しっかり食べたら、またひとっ走りしましょ!」
「おはよう! 思いっきり寝たから体力も十分よ!」
「体、痛くないね!」
「快適快適! 朝ご飯食べ終わったら洗い物は私がするよ」
「順番ね!」
「ありがとう、皆!」
平和な空気。
平和な朝。
やっぱり、ギスギスしていた昔のPTが可怪しかったのよ……。
このPT面子こそ正義……。
無論、相手が見つかれば卒業していく定めだけど……それまではね!
ちょっとだけの寂しさを感じつつも、私達は朝ご飯をしっかり食べ、しっかり水分補給も行い、外に出てミルクちゃんが拠点を消すと、ザッと前を向く。
「いざ、オッスオッスダンジョンのある〝チョリーッス街〟まで!」
「レッツゴー!!」




