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婚活パーティは魔王城で!  作者: 寿 明結未(ことぶき・あゆみ)
第三章 婚活の前にやることが多すぎる件

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第48悲劇 魔王城は徒歩20分圏内!筋肉乙女、成婚する!

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 最果ての村だと思っていたオワタ街は、予想外に賑わっていた。

 子どもたちが駆け回り、若者たちの笑い声が街を包み込んでいた。

 その中でも特に目を引いたのは――ハーフの多さだった。

 人間よりも魔族の血を引く者の方が目立っていた。

 幸福度がすごく高そうな……そんなイメージが強いエリアだったのだ。


「これは……凄いわね」

「幸せオーラ満開ですね……」


 ミルクちゃんと私は呆然としながら口にした。

 ナンシーなんかは暫く無言になった後――。


「モッチョモッチョカラ、ココニ、移住モアリネ」

「ああ、旦那様になる人が魔王軍だものね」

「ゴルディバス大商会のここへの新規参戦もこれなら頷ける」

「ソウナノヨ。〝オターノシミデシターネ街〟ニダスヨリ、ウント、イイネ!」


 未来予想図が着々と出来上がっているらしい。

 でも確かにそれは良いと思う。

 勇者がオワタ街に住むのは問題がありそうだけど……。


「イサミたちー☆」

「はーい」

「帰る時まだ私に連絡して頂戴? 迎えに行くわ☆」

「ありがとうございます!」

「迎えにっていうか、三日後に帰るんでしょう?」

「そうよ☆」

「それまでには戻るわ。だって……目の前魔王城だし……」


 そうなのだ。

 みえているのだ、魔王城が。

 徒歩二十分と言う近さなのだ、魔王城が。


「待ッテイルカシラネ……ハロルド」

「会ったら抱擁ですか?」

「イイエ」

「我ら筋肉乙女。会ったらまずすることは……相手の耐久力が如何ほどか知ることだ」

「な、なるほど!」

「パンチデモ、ビンタデモイイネ」

「相手が吹き飛ばなければ合格だな」

「俺も……するんでしょうか?」

「ダンダにしたら君が死ぬぞ」

「「ですよね」」


 思わずダンダくんと頷き合う私である。

 とりあえず歩きながら魔王城まで向かうと、入口に獅子の魔族が立っていた。

 もしかして彼がハロルドさん……かしら?

 本当に徒歩二十分での再開。

 これまでの、あれやこれの方が長く感じて、なんというか、このお手軽感。

 これなら婚活PTもしやすそう!


 私が思わずそんな事を想像していると、ザッと歩き出したのはナンシー。

 ハロルドさんは筋肉隆々の獅子の男性で、ナンシーと睨み合っている……。


「会イタカッタヨ……ハロルド」


 ナンシーの目に涙が浮かんでいた。

 言葉にならない想いを、必死に押し殺して。


「笑止! 私のほうが会いたかった……」


 ハロルドの声は震えていた。

 遠く、手の届かぬ存在に感じた想いが滲んでいた。

 

「運命ノ邂逅トハ違ウネ。デモ……イザ尋常ニ勝負!!」

「受けて立つ!」


 ああ……ついに始まっちゃうんですね……お見合いが!

 いいえ、待ちに待った……二人の愛の奇跡!

 そう思ったその時!


「時ニ、聞キタイネ!」

「何をだ!」

「モッチョモッチョ街ノ、タウンハウスに、偵察コウモリガイタネ」

「う!」

「覗キ見……シテタネ?」

「すすすす……すまないナンシー! 君があまりにも美しい為、変な輩が来るのではないかと心配でたまらず……っ!」

「オ風呂場ニモイタネ!」

「男の欲は果てしなく!」

「変態ネ! 許セナイヨ!」


 バッッッヂィィイイイン!!


 凄まじい勢いの平手打ち!

 しかしハロルド選手動かない!

 鼻血は吹き飛んでいるが、それでも動かない!

 おっと。足元になにか……。

【身代わりの華】の花びらがニ枚散っている!

 合計二回死亡!

 そのうえで愛を受け入れられるのか!?


「許せなくてもいい……責任は取る! 結婚しようナンシー!!」

「~~馬鹿! ソノツモリヨ!!」

 

 おおっと、告白成功!!

 ガシッとお互い熱い抱擁!

 お互いギリギリと筋肉と骨の軋む音が聞こえる!!

 熱い、熱いぞこのカップル!!


「思わず実況してしまいました!」

「イサミンの熱いナレーションだったわね♡」

「迸る何かを感じたよ」

「芸歴幅広いですね!」

「芸歴って……」


 私がツッコミを入れている所で――。


「ナンシー……もう君を離せないし手放す気もない……俺のものになってくれるか?」

「当タリ前ヨ……」

「ナンシー……」

「ハロルド……」


 そこで熱いキッス!

 キッスが来ました!

 いや、片方獅子だし、ペットとチューしてるみたいだけど!

 可愛らしいキスといえばいいんだろうか!

 でも気持ちは熱い!


 思わず拍手喝采。

 キャシーに至っては涙を流している。

 そうだよね……ずっと一緒に来た苦労を共にした……ような相手が、ようやく本当の相手を見つけたんだもんね……。

 再会できたんだもんね……。

 嬉しいね、嬉しいね……っ!


「さぁ、俺達はどこに帰ればいいんだい?」

「ひとまずはモッチョモッチョ街ネ」

「了解だ。落ち着くまで仕事のお暇を貰っている」

「ソレハウレシイヨ!」

「ははは!」


 そう言って私達のもとに歩きつつポーションで傷を癒やしたハロルドさん。

 彼は私達のもとに来ると頭を下げ、ご同行する許可を伺ってきた。

 無論了承したけれど、ナンシーもハロルドも幸せそうだ。

 ハートが突き刺さるくらい舞っている。

 薔薇の花弁が舞うシーンを昔見たことあるけど、それのハート版。

 凄い、濃厚。


「さて、このまま戻って船に乗って帰りましょう」

「ソウネ」

「婚姻はどこでするの?」

「オワタ街は魔族の隠しが上手い、そこでやろう」

「了解ヨ」


 こうして私達はオワタ街の教会に行き、ナンシーとハロルドさんの婚姻の署名を見せてもらった。

 これで、ハロルドさんは人間の世界では「獅子の獣人」と言う事になった。

 花びらを購入して仲間内だけでのお祝いになったけれど、きっと後で盛大な結婚式をするのかも知れない。

 喜ばしいね!


「さて、船乗りのアルバレルさんと合流しましょう♡」

「そうですね♡」

「ハロルド……♡」

「ナンシー……♡」

「すごくハートが舞ってますね」

「我々には遠い世界だが、我々は互いの速度を守っていこう」

「はい!」


 ――こうしてアルバレルさんと合流し、三日後、私たちはモッチョモッチョ街へ帰還した。

 

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