第44悲劇 男を見せたダンダくんの想いに、キャシーがこたえる!
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「……ダンダを婿にしたいなら、我の屍を超えていけ!」
「いやいやいやいや、ムーリ――!!」
ただならぬ殺気を放つキャシーに、魔族のお姉さんは顔面蒼白で震え上がったのだった……。
しかし、魔族の婚活事情がそんなに酷いとは……。
でも、魔族や魔獣って結構増えるの早いって習ったんだけどな?
「でもお姉さん? 魔族や魔獣は増えるのが早いって、人間側では言われてますけど」
「それは、一部の強い魔族が恋を成就したら子作りに入るから……そういう意味では増えるのは早いわ」
「なるほど」
「子孫繁栄、大事だけど……互いに迷惑を掛け合うのは良くないわ」
「うう……それはそうなんだけどぉ」
「それに、俺は貴女とはお付き合いしませんよ」
思わぬダンダくんの言葉に、捕まっている魔族のお姉さんは目を見開き固まった。
どうやら付き合えると思っていたようだ。
「俺の好みからはその……随分と離れますので」
「どどど……どういう事? 私スタイルだけはその変の冒険者よりは優れてると思うけど⁉」
「ん~~。ぶっちゃけていいですか? 好みじゃないです」
「好みじゃ……ない」
「俺の好みは……その……迸るオーラの素晴らしい女性ですので!」
顔を真赤にして叫んだダンダくん。
咄嗟に顔を真赤にしたのは――キャシーだった。
あらあら? おやおや? これはこれは?
ワンチャンあり?
お互い自覚しちゃう?
それはそれで萌えるんですけど!
応援しちゃいますよ、全力で!
「うぐっ」
「キャサリンさん大丈夫ですか⁉ 何か怪我を……っ!?」
「……心臓に、矢を受けたようだな」
――その一言に周囲はざわめいた。
明らかにそれは……。
「膝じゃないんだ」
「心臓だと死んじまうぞ……」
「いいえ、あれはきっと恋のキューピットによる矢を受けたのかもしれないわ♡」
「恋のキューピット♡」
「ドキドキスルネ!!」
周囲のざわめきとは違い、いつも一緒にいた私達。
思わずグッと拳を握りあい三人でダンダくんとキャシーを見つめる!
熱い、血が滾りそう!
興奮しちゃうわ!
「キャサリンさん……その傷は癒せそうですか?」
「ふふ……どうだろうな? 私も今になって何となくだが……いや、気の所為かもしれん」
「それは……俺の好きなタイプについて……でしょうか? だとしたら……」
そう言うとダンダくんはキャシーの大きな手に自分の小さな手を乗せると――。
頬を染めて、目を少しだけ反らしつつ……口を開いた。
「間違いじゃ……勘違いじゃ……ないです」
「なっ!」
「俺は……! 俺はキャサリンさんの事が……っ!」
ダンダくんは一度、深く息を吸った。
「でも、俺のようなひ弱な男ではきっと……相手にされないと」
「そのようなことはない! 君はどんな男たちより努力している!」
「キャサリンさん……」
「でなければ、普通のポーターが魔族を捕縛出来るはずがない」
「くっ! 他人の恋のキューピットになるなんて不覚!! サキュバスの名折れよ!」
号泣する魔族さん……合掌。
私達三人は涙を零しながら喜びあった。
あれだけ長く続いたキャシーとダンダくんのなんとも言えないラブロマンスが始まりそうで始まらなかったのに、やっとラブロマンスが始まりそうなんだもの!
どこまでも気づかないかと思ったけど、ここでようやく……!
ダンダくんが男を見せた!
キャシーが女を見せた!
このふたつが尊いんじゃないの!!
「いいのかダンダ、我のような女で」
「俺はキャサリンさんにずっと……初恋です」
「なっ!」
「はは……でも、初恋は実らないなんて言いますから……でも、でも出来れば俺を……頼りないかもしれないけど男として見てもらえたら……」
「ダンダ……」
「ずっと言いたかったんです。でも言えなかった……。だから、思い切って言いますね? 俺はキャサリンが魔族の男に連れて行かれるのなら……その男を倒します」
これには私達三人は涙を流して拍手喝采を送った。
ダンダくん凄い!!
男を見せてる!!
キャシーはポカンと口を開けて驚いているけれど、フッと笑みを零すとダンダくんの頭を撫でて目を閉じた。
「そうか……我が魔族の男と番おうものならば」
「その相手を倒します」
「……ふっ。中々に豪胆だな?」
「俺はそれだけ本気です」
「そうか……ならば、その気持に答えなくてはなるまい」
思わず固唾をのむ。
キャシーはなんて返事をするの!?
ダンダくんの思いには応えてあげられるの!?
「ダンダ……我は……」
「俺では……魅力がありませんか?」
「……」
「確かに筋肉もないですし、キャサリンの好みからは外れるかもしれませんが……。でも俺は……貴女の特別になりたい」
きゃああああ!!
思わずミルクちゃんと手と手を握りあって様子を見つめる。
キャシーは、拳を握りしめたまま、視線を落とした。
「ふう……。そこまで想われて、嫌だと言う女がいるなら見てみたいものだな」
「キャサリン……?」
「これから先。婚活PTが解散しても、我だけのポーターでいてくれるか?」
「もちろんです!」
「はっはっは! 良いだろう! 我は今日、今この瞬間から……。ダンダ、君のものだ」
その言葉に、冒険者ギルド内は信じられないほどの拍手喝采が起き、飛び交う「おめでとう」の言葉は柔らかく、二人を包みこんだのだった……。
良かった……。
ダンダくんがキャシーのことを好きだと知っていたから、尚の事良かった……。
「――おめでとう二人共♡」
「私嬉シイヨ!」
「私もです!」
「はっはっは! 運命の相手というのは、意外と近くにいたものだな!」
「俺も今回やっと自分の気持ちに嘘が着けないと気づけました……。魔族のお姉さん、ありがとうございます」
「ふぐうううう……。他人のキューピットになるなんて……」
涙を零してうつ伏せに倒れる魔族のお姉さん。
貴女のお陰で「いつ付き合うの!」と思っていた二人がくっつきました。
ありがとうございます!!
「今日は盛大に祝おうじゃないか!」
「ええ、盛大にね!♡」
「お姉さんからは事情聴取ね♡」
「魔族ニツイテ、色々教エルネ!」
「いやああああ!!」
そう言って捕まえようとした瞬間サキュバスは消え去り……思わず舌打ちしちゃった。これじゃ事情聴取も聞けないじゃない。
でもまあ――。
今日くらいは、世界が少し優しくてもいい。




