第43悲劇 キャサリンと魔族サキュバス、婚活で激突!
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モッチョモッチョ街は、思っていた以上に騒がしかった。
流石港町と言う事もあり、異国の人も多く見かける。
「異国の言葉を聞くと、流石港町ねって思うわ」
「ここから一気に魔王城にいけたらいいんだがなぁ」
「船で魔王城のある大陸に渡って、そこから直ぐ……ではありますけどね」
「そうね。オワタ村こそがあの大陸の港町であり……」
「魔王城まで直通ですもんね」
オワタ村と言われているけれど、渡る人が少ないだけで今はどうなっているのか分からないところがある大きな街なのだ。
一応勇者達が滞在するための施設などは揃っているらしいけれど、よく分かっていないエリアでもある。
魔族も結構はいってきているのかもしれない。
「しかし、さっきから後ろについてきてる彼はどうします?」
「どこまでついてくるつもりなのかしら?」
そうなのだ。
正直彼の視線が痛い。
私と結婚したと言うのが許せないのかな?
あれ、ミルクちゃんの事を女性だと思ってるから、また百合って思われてるのかな?
単純に夫であるミルクちゃんのようなオネェさんが好きと言う、特殊部類なだけなんだけどなぁ。
冒険者ギルドに入り、私達が到着の旨を記載していると、タケシが叫び始めた。
「ミルク! 今からでも遅くはない! 俺を選べ!」
「いやよ。私はイサミンがいいの♡」
「痴話喧嘩ですかぁ~?」
声を掛けてきたのは、女性冒険者だ。
でも私達はすぐに分かった。
彼女は魔族だと。
「聞いてくれそこの冒険者! 俺の最愛の女性が、こともあろうことか、女性と結婚してしまったんだ!」
「それは……お可哀想です~」
「だよな!」
「お二人は離縁して、ちゃんと男女で結婚したほうが良いと思う~」
ケタケタ笑うその女は、魔族の匂いを隠していた。
しかし――。キャシーとナンシーが瞬時に武器を抜いて首と脳天に武器を当てると、魔族は「ひへ?」と声を上げて固まった。
これには周囲の冒険者たちも呆然とし、床に酒を落とす者も少なくなかった。
「随分ト、コノ冒険者ギルドハ、ヌルイネ」
「魔族の冒険者等をここの冒険者たちは雇っているのか?」
「ま、魔族だって!?」
一瞬にしてざわめく周囲。
私達も武器を手にしギルド内は一触即発……。
しかし――魔族の彼女はケタケタ笑いだし、「バレちゃったー」と笑っている。
「でもでもー? 結構このエリア魔族多いですよ~? 気づかない人間が悪いんじゃないですかー? ちなみに私は~? んふふ……。男を堕落させる魔族でーす♡」
そう言うと姿を変えてサキュバスの姿になった彼女が目をつけたのは――ダンダくんだった。
「ソコノ彼、美味しそうだから貰っていきますね?」
「え?」
その素早さに一瞬取り乱した私達だけど、背後にいたダンダくんが捕まった!
この事に一番動揺したのは――キャシーだった!
「ダンダ!」
「おっと、そこの筋肉のおねぇさんは動かないでね? 彼の首くらい平気でへし折るよ?」
その言葉にダンダくんの首に手をつけて笑顔を見せる魔族。
絶望に染まるキャシーの顔を見たダンダくんは――。
何かが、切れた……んだと思う。
ダンダくんの目が、静かに変わった。
――意を決してポケットから何かを取り出すと、魔族に押し当てた!
途端光が空から降り注ぎ魔族の女性を縛り上げていく。
「ヒギイイ!?」
「対魔族用捕縛アイテムです! 俺に手を出したのが運の尽きでしたね!」
「この……このこのこの!」
「お姉さん……俺達は魔王城に婚活しに行くんです。この程度のアイテムは大量に用意してあるなんて思わなかったでしょう?」
「こん……かつ? 魔王城に婚活!?」
困惑する魔族を他所に、ダンダくんは笑顔で答えた。
「ちゃんとお話を聞いてくれる魔族ばかりではないと判断して、こういう捕縛用アイテムもふんだんに持ってきてるんですよ」
「流石だダンダ! 用意が素晴らしい! だが肝が冷えたぞ!」
「タダで捕まっては勇者パーティのポーターの名折れです」
「ごめんなさいね? この子、スピードはかなり早いみたい」
「この魔道具のせいですね。スピードアップの高い付与が着けられています」
そう言うとダンダくんはそのアイテムを取り、笑顔で魔族と向き合った。
なんだろう、圧を感じるぞ?
「俺もこうみえて、キャサリンさんたちの足手まといにならないように工夫や用意を何十にも重ねているんですよ……。お姉さん。残念でしたね?」
「くっ!」
「その魔道具は一度発動すると使用者が解かない限り取れませんからね?」
「畜生! 人間風情が魔族を婚活相手にするなんて……不届き者め!」
「何ヲ言ウネ! 魔族ダッテ、結婚相手ガデキニクイ、キイテルヨ!」
「特に、インキュバスやサキュバスは結婚しにくいと聞いているな」
「ゆーえーにー♡ 人間の男とか、女をおとす……って聞いたことあるわねぇ」
「どっちが不届き者ですか?」
私達が笑顔で告げると、魔族でサキュバスのお姉さんは無言になってしまった。
やはり婚活のために人間界に来ていたんだろうか?
「しかし、ギルマス? 魔族だと気づかなかったの?」
「……気付いていた。だが、ここは港町だ。婚活に国境は引けん」
「魔族側にもお優しいのは良いことだけど、国からみれば反逆者よ?」
「だが、どこの国でも魔族でも、婚活事情と言うのは深刻らしくてな……」
「アララ……デモ、ソレハ、私達ニモ、言エルネ!」
「たしかに我が国は婚活は推奨されている。特にEX冒険者の婚活は死活問題だ。今回私達の相手が魔族と言うだけで、それが駄目とはされていない」
「ソレモソウネ」
「さて、お姉さん。話を聞きましょうか」
私がそう告げると、サキュバスの魔族お姉さんは涙をこぼし始め、涙をこぼしながらも――。
「だって、魔族の婚活って……人間界の国家試験に受かるくらい厳しいのよ!」
と口にし、これには周囲の冒険者も驚いていたけれど――。
「それにだってだって! 私だって素敵な恋がしたいの――! 魔族の男は皆、強さばかり見てくるのよ! 特にそこのダンダくん、好みだったの――!」
「えええ!?」
「私と結婚して!!」
そう叫んだ途端、彼女の前の前にキャシーの拳が舞い降り、床石が砕けた。
ほとばしる怒りのオーラは、空気が震え、鋭い視線が辺りを焼くようだった……。
私達は冷や汗を流し「ごくり」と生唾を飲む……。
「……ダンダを婿にしたいなら、我の屍を超えていけ!」
「いやいやいやいや、ムーリ――!!」
ただならぬ殺気を放つキャシーに、魔族のお姉さんは顔面蒼白で震え上がったのだった……。




