第41悲劇 愛されオネェの受難と、未だに初心なダンダくん
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――その時だった。
背後から、聞き覚えのある声が響いた。
「ミルク――!! 俺だ――!! タケシだ――!!」
「うわ……最悪」
そう叫んだタケシさんに、ミルクちゃんは顔を大きく顰めたのだった。
私達の前までマッハでやってきて両手を広げて止まった彼だったが――。
キャシーとナンシーは止まれなかった。
ドン。
タケシは消えた。
一体何の用だったのだろうか。
あまりにも綺麗に消えた。
「今、相当ダメージ喰らいましたよね」
「ええ、食らったわね」
「急ニ前ニ来ルノガ、悪イネ!」
「ほそっこい冒険者だったが、全身複雑骨折などしてないと良いが」
「彼はEX冒険者のひとりよ。私がまだ受付嬢していた時に世話をした事があるの」
「そうなんですね」
「あの時からしつこく、告白してきてたんだけど……。ストーカーになるなんて思ってもいなかったわ」
え、ストーカー!?
思わず私達がミルクちゃんを見ると、「私モテルから♡」と照れ笑いしていた。
「流石ミルクちゃんね♡」
「うふふ♡ 今頃結婚したっていう通知が行ったのかしら♡」
「慌てふためく冒険者多そうですね」
「アタシはイサミンのものになったの♡」
「いやん♡」
思わずお互いをツンツンし合いながら照れ合う。
ダンダくんはまだ見慣れないようで……。
「あの、質問なんですが」
「なぁに?♡」
「好きな人とその……お付き合いとか、結婚するって、どんな感じですか?」
「最高の幸せよ~?♡」
「幸せですね~♡」
「最高の幸せ……」
「なんだダンダ、好きな女性でもいるのか? 全力で我は応援するぞ!」
「い、いえ! どんなものなのか聞きたかっただけなので!」
慌てるダンダくん。
わかる、わかるよ?
キャシーの事好きなんだよね?
顔真っ赤にして可愛い!
「そ、それよりタケシさんですが」
「遠くまで飛ばされたし、今頃失神してるんじゃないかしら?♡」
「放って置いてさっさと次の街まで行きましょう」
「そうね。でも、今が丁度中間地点だし、一旦拠点で今日は休みましょうか」
こうして私達はミルクちゃんの拠点で今日は休むことになった。
しかし、結婚報告が今頃ついたとしたら、今後ミルクちゃんのファンだった冒険者達が押し寄せてきそうな……。
「タケシさんは、どんな冒険者だったんですか?」
ふと気になって聞いてみると、何でも冒険者ランクが一番低いときから担当をしていた冒険者らしい。
彼がEX冒険者担ってからの活動は目覚ましく、応援していたのだとか。
「ただ、彼って思い込みが激しいタイプで……。アタシのことをまだ女性だと思っているのよね」
「まぁ、これだけ美人ならば無理もあるまい」
「ソウネ。ミルクハ、トッテモ、キュート♡」
「いやん♡ ありがとう♡」
確かにキュート。
ものすごくミステリアスなオネェさんな夫なのに凄くキュートな時がある。
そのギャップ萌えは凄く理解できる。
だが、私の夫である。
文句なく、私の夫である!
故にタケシ、貴様がミルクちゃんを……と言うのであれば決闘だ!
私がフンスと気合を入れていると、ミルクちゃんからギュッと抱きしめられた。
「もう、そんなに気合を入れなくても大丈夫よ♡」
「だってぇ……」
「アタシはイサミンさえいればいいの♡」
「もう、ミルクちゃんったら……♡」
「むしろ、イサミンを我が物にしようとしている、モヤシ魔王をぶっ飛ばしたいわね」
「彼はもう姿を表してないですし、諦めてくれたのでは?」
「ソウデモナイト思ウネ。魔族ハ、惚レタ相手ニ、強烈スギルホド一途ネ」
「確かに魔族はそうですね。それが魔王ともなれば……」
「やだわ。もやしの癖に……アタシの大事なイサミンに……」
まだまだ、もやし魔王のことは気になるけれど、今はまずタケシの方が問題ね。
名前からして異世界勇者……だと思うけど、勇者になれなかった一部の異世界冒険者っているのよね。
異世界に来たからと言って、百人が全員勇者になれるわけではない。
半数以上は、勇者から弾かれて、一般的な冒険者になるものも多いのだ。
「タケシさん、今まで頑張ってきたんだから犯罪とかしないで真っ当に生きてほしい」
「他人ノ夫ニ手ヲ出ス男……イヤネ。文字ダケミルト、ヤバイワネ」
「はっはっは! 恋愛は自由! 我の夫も実は女かもしれん!」
「やめて下さい! 俺の情緒が崩れます!」
確かにキャシーの相手が女性だったら、ダンダくんの情緒が崩れそう。
そうなる前になんとか男を見せてほしいところだけど……。
「そういうダンダも、魔族の嫁なんてどうだ?」
「俺は……人間の女性が良いですね……」
「そうか。確かにダンダくらいの細さならば……」
「筋肉はそれなりにあるんですけどね……」
「あの、一般的にはイケメンの部類ですし、モテると思いますよ?」
「慰めありがとうございます……」
ああ、ダンダくん落ち込んじゃった……。
すると、ミルクちゃんはダンダくんの方をトントンと叩き――。
「ダンダくん、次の街についたら一度二人で外に飲みに行かない?」
「え? ミルクさんとですか?」
「男同士の……っていうと変だけど、オネェさん聞きたいことがあるし」
「えっと、良いですよ?」
「決まりね♡」
どうやらミルクちゃんが動くらしい。
これは期待できそうかしら!
「外にタケシガイル気配がするわ。数日、籠もったほうが良さそうね」
「仕方ナイネ」
「無駄に争う必要はないからな」
こうして、数日私達は拠点にいることになるのだけれど――。
――その時、私達はまだ知らなかった。
異世界料理とお菓子が、恐るべき〝依存性〟を持っていることを……。




