第40悲劇 応接室は恋とスイーツの香りに〇〇を添えて
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翌日の昼。
私達はゴルディバスさんに呼ばれ、応接室へと通された。
そこには彼に寄り添うように立っている小柄な獅子の獣人がいた。
獣人にしてはかなり小柄だけれど、二人は仲良さそうに立っている。
「昨日は色々あって紹介出来なかったが、この子はショコラ。お互いに想い合っている仲だ」
「初めまして。ショコラと申します。魔族と獣人のハーフです」
「まぁ、魔族との?」
「兄妹揃って凄いわね♡」
「兄は毛がモサモサの獣に近い姿をしていますが、私は魔族の血が強く、このような人間に近い姿をしております」
「モシヤ、兄ノ名ハ、ハロルドデハナイカ?」
「はい! 兄は獅子そっくりのハーフで、アタータダンジョンのボスをしておりました。今は違う職について……その、出世したそうです!」
「ソウ。ハロルド、無事ナノネ」
「兄は、毎朝必ず日の出前に起きて鍛錬しております。番に恥じぬ身体でありたい、と。昔から真面目でしたが……今は、誇れるほどです。それだけではありません」
ショコラは少しだけ声を潜めた。
「兄は四天王補佐官となり、防衛区域の再編を任されました。『番が足を踏み入れる場所に、穴は残せない』と、夜明け前に城壁に立っています」
その言葉に、ナンシーの指先がわずかに震えた。
ほんの一瞬だけ。
「兄は言いました。『番が望まぬなら退く。それが獣人の流儀だ』と、そして『力は誇示するものではない。番が安心して眠れる夜を作るために使うものだ』と」
応接室の空気が一瞬、静かに張り詰める。
「……ソウ、ナラ、会ウノガ、楽シミネ」
ナンシーは微笑んで小さく息を吐き、頬を赤らめながらも、どこか誇らしげだ。
ゴルディバスさんは「そんなご縁があったんだな」と驚いていた。
「兄も私も、番には一途なんです。例え婚約を為さっていても、いつかは……と我慢してきました」
「なんてつらい時期を過ごさせてしまったんだろうなと、今は後悔しかない」
「でも、ちゃんと番となってくださるんです……。それまでの苦しさはきっとスパイスなんです」
「ショコラ……」
「兄もきっと、離れている間はスパイスだと言うでしょう。番に負担をかけたくありませんし、番の幸せこそが我ら獣人の幸せ」
「素晴シイ考エネ!」
「ありがとうございます!」
この二人ならきっと大丈夫。
そう思える見えない絆が、確かにあるのだと思えた。
「魔族と獣人のハーフですが、匂いと言うべきか……そこは獣人にとても近いようで、私はこうして人里にて生活が出来ております」
「魔族というだけで忌み嫌う輩は多いからな。それが分からない程に、彼女の気質や匂いは獣人の匂いしかしないんだ」
「ソレデ、不思議ニ思ッタヨ。魔族ノ匂イシナイカラネ」
「魔族の中では落ちこぼれで……」
「それでいい。君が俺のもとに来てくれるのなら、落ちこぼれだろうがなんだろうが……どうでもいい」
「ゴルディバス様……」
甘い、甘いぞ! スイーッツ!
甘い、甘すぎる!
「甘い空気のところを邪魔したくないけれど、婚約はしたの?」
「ああ、朝し直して既に教会に出してきた」
「あら、それは良かったわね♡」
「ショコラを幸せにしたい……。絶対に」
「兄ナラ、出来ルネ!」
「断罪の翌日に、こんな未来の話をしている。不思議なものだ」
そう言うナンシーの目は、少しだけ誇らしげだった。
こうして、いつもの私達のテンポも戻ってきた所で一路泊まっている部屋に戻り、今後の予定を考える。
やはり原始の森を突っ切るのが一番手っ取り早いものの、ダンダくんを連れて行く事を考えると、原始の森は危険だと判断したのだ。
なにより、キャシーは懸念材料を口にした。
「EX冒険者ですら油断すれば命を落とす場所だ。あそこはEX冒険者の腕すら引きちぎる顎を持つコバエもいるからな……。ダンダなどひとたまりもあるまい」
「そ、そうなんですね……」
「ということは、このまま原始の森を抜けずに迂回する方法が良いわね。次に目指すのは――〝モッチョモッチョ街〟がいいかしら」
「〝モッチョモッチョ街〟には、何があるんですか?」
「そうね、有名なのはスライムの御神体がいるってことかしら?」
「御神体?」
「過去、勇者について行ったスライムなんですって。かれこれ千年は生きてるそうよ」
「レジェンドモンスターの一角だな」
「〝モッチョモッチョ街〟のシンボルのように動かずいるそうよ」
レジェンドモンスターか。
そう簡単に会える存在じゃないなら、なおさら見てみたい。
「御神体ネ」
「会いたいです!」
「決まりね♡ 次の目標は、ここからいつものダッシュで五日程先にある〝モッチョモッチョ街〟に決定! そこからは船に乗って魔王城を目指すわよ!」
「はい!」
船旅もあるんだ!
どんな旅が待ってるのか楽しみだな。
「流石に、船場というのもあって異世界勇者も多いと思うわ。皆、気を引き締めて行きましょう」
「はい!」
それだけを聞くと、本当に何事もないと良いなって思ってしまう!
……何事も起きなければいいけど。
こうして翌日、必要なものを購入してから私達はいつもどおりのお決まりで走り出した。
無論ダンダくんはキャシーが抱っこしている。
ああ、久々のアイ・キャン・フラーイ!
――いざ、〝モッチョモッチョ街〟へ!




