第33悲劇 婚活、依頼、たまに正拳突き
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その次の日、ナンシーは機嫌良さげで、皆がほっと胸を撫で下ろした。
着替えを済ませ、いざ原始の森を突っ切ろうとしたその時。
冒険者ギルドの職員が「待ってくださ~~い!」と全力疾走してきたのには驚いた。
「どうかしたんですか?」
「ギルドマスターがお呼びです」
「ギルマスが? 何かしら?」
「依頼でもあるのかもしれん、行ってみるか」
「ソウネ」
こうして私達は、一路冒険者ギルドに戻り話を聞くことになった。
原始の森は広く、周囲には森を避けるように街が点在している。
そこに用でもあるのだろうか?
「すまんな、今から魔王城へ魔王討伐に行くところを」
「魔王討伐ジャナイネ。婚活ネ」
「……ん?」
あ、ギルマスの脳が処理落ちしている。
「ああ、私達、魔王を討伐にしに行く予定はないんです。婚活パーティなんで」
「強ければ相手が魔族でも構わないと言う明確な意志のもと、大型婚活会場となる魔王城を目指す……と言うことだ」
「すまない、理解が追いつかない……まさか、魔王城が婚活会場になるなんて……」
「追いつかなくても結構よ♡ それで、その大事な婚活に行こうかと言う時に、一体ギルマスは何用かしら?」
ミルクちゃんが足を組みつつ告げると、何でもこの街から程近い、〝オウーマイーガ街〟の街のギルマスから、私達【ゼグディ】に依頼が来ているとの事。
どんな依頼か聞いてみると、甲羅がダイヤモンドで出来た、〝ガメーラ〟が大量発生して、並の冒険者では刃が立たないらしい。
「普通の甲羅持ちの亀を殺しすぎたのね?」
「そうらしいんだ。しかも困ったことに、アタータダンジョンにも二体湧いている……駆除してくれないだろうか?」
「アタータダンジョンにもなの?」
「件の殺された剥奪勇者達が亀を殺しすぎていたようでね……。生態系が崩れて、上位種のガメーラが湧いたらしい」
「困ったわねぇ……。ダンジョンモンスターは、一定数は残すのが基本だと言うのに」
「シカモ、ガメーラハ、中々ニ、好戦的ネ」
「だが、番で買う貴族も多いだろう? 増やさせてダイヤを確保すると言う目的の多いモンスターでもある」
「ソレナラ、アル一定数ハ、ゴルバディス大商会デ買イタイネ! 養殖シタイト、父ガ探シテタヨ」
「確かに、依頼を出してもらうか」
「そうね、そうしましょうか」
こうして、ナンシーの実家であるゴルバディス大商会から依頼を出してもらう事にし、それからアタータダンジョンの〝ガメーラ〟の捕獲と討伐作戦へ移行する事に。
ガメーラはかなり厄介な敵だ。
普通の冒険者なら苦戦必至。
だが私達はEX。多少厄介でも倒せない相手ではない。
噛まれたら痛いけど!
そんな事を思いつつ、今日は原始の森に入る予定だったため、アイテムの補充は済んでいた。
「ガメーラって、異世界で言うカミツキガメみたいなものなのよね」
「カミツキガメ?」
「かなり凶悪とされている亀よ」
「「「「へ――」」」」
「アタシ達にかかればなんてことはないけど、危険度は高いわ」
「確かに、討伐Sランクですもんね」
「普通ニ、Sランク冒険者デモ、苦戦スル相手ネ」
そんな話をしつつ、ゴルバディス大商会に到着し、代理店長にガメーラが二体湧いていることを告げると、「是非に捕まえて欲しい。出来れば養殖所のある〝オウーマイーガ街〟まで持っていって欲しい」と言う依頼を受けた。
クエストクリアした場合、オウーマイーガ街にある養殖所にて、金銭を多めに支払うように伝えてくれるらしく、これは気合が入りますね!
「アタータダンジョンの二体を捕まえたら、オウーマイーガの街に向かいましょう」
「賛成です!」
「ウチノ、実家モ、喜ブネ!」
「しかし、危険なSランクモンスターを養殖となると……ゴルバディス商会では、EX持ちを雇っているのか?」
「ソウネ。EXランクノ、テイマーガ、イルネ!」
「なる程、それで飼育が可能なのね♡」
「ダイヤノ、甲羅、剥グ時ハ、中々、壮絶ナモノガミレルネ。剥グノ、兄ナンダケドネ!」
「え、剥ぐのは兄!? 仕事とはいえ残酷すぎな気がしなくもないけど!」
「まさか、兄が甲羅を剥ぐなんて。EX家系、強い……」
「ははは! 確かに痛々しいだろうからな!」
まさか、ナンシーさんにEXの兄がいたとは!
家系なのかな?
「ナンシーさんは兄妹ですか?」
「ンーン、妹ガ、ひとりイルネ」
「その方もEXなんですか?」
「ソウネ、婚活、苦労シテルヨ。私ガ、卒業シタラ、妹入レテ欲シイネ!」
「婚活苦労は大変だからな……」
「そうね……。ご縁があったら是非に♡」
こうしてナンシーは嬉しげに頷き、まず向かうはアタータダンジョン。
そこでガメーラ二体を捕獲し、次は〝オウーマイーガ街〟だ。
相手はSランク討伐対象。とは言え、私達にかかれば難しい敵ではないので、アタータダンジョンにつくと、周囲を見渡しつつ池を探す。
しかし――。
「前の死亡していた剥奪勇者達は好き勝手していたようね」
「バインソンジェネラルが湧いている、珍しいな」
「超巨大モンスターノ、ひとつネ」
「バインソンジェネラルって、お肉美味しいんですよね……」
ずしん、ずしんと大地を揺らして歩く〝バインソンジェネラル〟は、羊と牛を足したような超巨大モンスター。
高さ五メートル。攻撃は頭突きのみだが地味に痛い。
だが角も毛皮も肉も高級品――つまりボーナスキャラだ。
「貴族ノ、結婚祝イニ、使ワレル毛皮ハ、最高級ネ」
「そういえば、ナンシー」
「ナニ?」
「お主、酒場で良い出会いがあっただろう」
「フフ、バレバレネ! ソウヨ、魔王城デ 再会スル約束、シタネ!」
「「「おおおおお‼」」」
「ふふ……。ナンシーに先を越されてしまったか。我も頑張らねばな……。ならば、コヤツはナンシーの祝いに狩っていかないか?」
「そうしましょう!」
「是非そうしましょ♡」
「血抜きは任せて下さい!」
「ブモ!?」
私達のやる気を感じ取ったのか、〝バインソンジェネラル〟が猛スピードで突撃してきた。
咄嗟に物陰に隠れる素早いダンダくん。
いざ尋常に勝負!!
「やつの弱点は見切っている! ここは私に任せろ!」
「キャシー!」
「ひとりでなんて無謀ですよ!」
「なんの! うおおおおおお!!」
雄叫びを上げるキャシーは拳に闘気を集め始め……バインソンジェネラルの片方の角を掴むと――!
「貴様の眉間に我が想いを込めて! 正拳突き――!!」
バインソンジェネラルの眉間にキャシーの渾身の力を込めた正拳突きが突き刺さる! 途端……。
「ブモォォォオオオオオオ……」
脳をやられたのか……バインソンジェネラルはふらつき、立つこともできなくなり、ズゥゥゥン……と倒れ込んだ。
痙攣し、泡を吹き――数秒後、完全に沈黙した。
拳を振り上げて立つキャシーは一言。
「我等が友情に、一切の曇りもなし!!」
声たかだかに、叫んだのであった……。
――こうして、森へ向かうはずだった私達の婚活旅は、今日も堂々と寄り道から始まったのだった。




