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婚活パーティは魔王城で!  作者: 寿 明結未(ことぶき・あゆみ)
第三章 婚活の前にやることが多すぎる件

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第33悲劇 婚活、依頼、たまに正拳突き

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 その次の日、ナンシーは機嫌良さげで、皆がほっと胸を撫で下ろした。

 着替えを済ませ、いざ原始の森を突っ切ろうとしたその時。

 冒険者ギルドの職員が「待ってくださ~~い!」と全力疾走してきたのには驚いた。


「どうかしたんですか?」

「ギルドマスターがお呼びです」

「ギルマスが? 何かしら?」

「依頼でもあるのかもしれん、行ってみるか」

「ソウネ」


 こうして私達は、一路冒険者ギルドに戻り話を聞くことになった。

 原始の森は広く、周囲には森を避けるように街が点在している。

 そこに用でもあるのだろうか?


「すまんな、今から魔王城へ魔王討伐に行くところを」

「魔王討伐ジャナイネ。婚活ネ」

「……ん?」

 

 あ、ギルマスの脳が処理落ちしている。

 

「ああ、私達、魔王を討伐にしに行く予定はないんです。婚活パーティなんで」

「強ければ相手が魔族でも構わないと言う明確な意志のもと、大型婚活会場となる魔王城を目指す……と言うことだ」

「すまない、理解が追いつかない……まさか、魔王城が婚活会場になるなんて……」

「追いつかなくても結構よ♡ それで、その大事な婚活に行こうかと言う時に、一体ギルマスは何用かしら?」


 ミルクちゃんが足を組みつつ告げると、何でもこの街から程近い、〝オウーマイーガ街〟の街のギルマスから、私達【ゼグディ】に依頼が来ているとの事。

 どんな依頼か聞いてみると、甲羅がダイヤモンドで出来た、〝ガメーラ〟が大量発生して、並の冒険者では刃が立たないらしい。


「普通の甲羅持ちの亀を殺しすぎたのね?」

「そうらしいんだ。しかも困ったことに、アタータダンジョンにも二体湧いている……駆除してくれないだろうか?」

「アタータダンジョンにもなの?」

「件の殺された剥奪勇者達が亀を殺しすぎていたようでね……。生態系が崩れて、上位種のガメーラが湧いたらしい」

「困ったわねぇ……。ダンジョンモンスターは、一定数は残すのが基本だと言うのに」

「シカモ、ガメーラハ、中々ニ、好戦的ネ」

「だが、番で買う貴族も多いだろう? 増やさせてダイヤを確保すると言う目的の多いモンスターでもある」

「ソレナラ、アル一定数ハ、ゴルバディス大商会デ買イタイネ! 養殖シタイト、父ガ探シテタヨ」

「確かに、依頼を出してもらうか」

「そうね、そうしましょうか」

 

 こうして、ナンシーの実家であるゴルバディス大商会から依頼を出してもらう事にし、それからアタータダンジョンの〝ガメーラ〟の捕獲と討伐作戦へ移行する事に。

 ガメーラはかなり厄介な敵だ。

 普通の冒険者なら苦戦必至。

 だが私達はEX。多少厄介でも倒せない相手ではない。

 噛まれたら痛いけど!

 そんな事を思いつつ、今日は原始の森に入る予定だったため、アイテムの補充は済んでいた。


「ガメーラって、異世界で言うカミツキガメみたいなものなのよね」

「カミツキガメ?」

「かなり凶悪とされている亀よ」

「「「「へ――」」」」

「アタシ達にかかればなんてことはないけど、危険度は高いわ」

「確かに、討伐Sランクですもんね」

「普通ニ、Sランク冒険者デモ、苦戦スル相手ネ」


 そんな話をしつつ、ゴルバディス大商会に到着し、代理店長にガメーラが二体湧いていることを告げると、「是非に捕まえて欲しい。出来れば養殖所のある〝オウーマイーガ街〟まで持っていって欲しい」と言う依頼を受けた。

 クエストクリアした場合、オウーマイーガ街にある養殖所にて、金銭を多めに支払うように伝えてくれるらしく、これは気合が入りますね!

 

「アタータダンジョンの二体を捕まえたら、オウーマイーガの街に向かいましょう」

「賛成です!」

「ウチノ、実家モ、喜ブネ!」

「しかし、危険なSランクモンスターを養殖となると……ゴルバディス商会では、EX持ちを雇っているのか?」

「ソウネ。EXランクノ、テイマーガ、イルネ!」

「なる程、それで飼育が可能なのね♡」

「ダイヤノ、甲羅、剥グ時ハ、中々、壮絶ナモノガミレルネ。剥グノ、兄ナンダケドネ!」

「え、剥ぐのは兄!? 仕事とはいえ残酷すぎな気がしなくもないけど!」

「まさか、兄が甲羅を剥ぐなんて。EX家系、強い……」

「ははは! 確かに痛々しいだろうからな!」


 まさか、ナンシーさんにEXの兄がいたとは!

 家系なのかな?


「ナンシーさんは兄妹ですか?」

「ンーン、妹ガ、ひとりイルネ」

「その方もEXなんですか?」

「ソウネ、婚活、苦労シテルヨ。私ガ、卒業シタラ、妹入レテ欲シイネ!」

「婚活苦労は大変だからな……」

「そうね……。ご縁があったら是非に♡」


 こうしてナンシーは嬉しげに頷き、まず向かうはアタータダンジョン。

 そこでガメーラ二体を捕獲し、次は〝オウーマイーガ街〟だ。

 相手はSランク討伐対象。とは言え、私達にかかれば難しい敵ではないので、アタータダンジョンにつくと、周囲を見渡しつつ池を探す。

 しかし――。


「前の死亡していた剥奪勇者達は好き勝手していたようね」

「バインソンジェネラルが湧いている、珍しいな」

「超巨大モンスターノ、ひとつネ」

「バインソンジェネラルって、お肉美味しいんですよね……」


 ずしん、ずしんと大地を揺らして歩く〝バインソンジェネラル〟は、羊と牛を足したような超巨大モンスター。

 高さ五メートル。攻撃は頭突きのみだが地味に痛い。

 だが角も毛皮も肉も高級品――つまりボーナスキャラだ。


「貴族ノ、結婚祝イニ、使ワレル毛皮ハ、最高級ネ」

「そういえば、ナンシー」

「ナニ?」

「お主、酒場で良い出会いがあっただろう」

「フフ、バレバレネ! ソウヨ、魔王城デ 再会スル約束、シタネ!」

「「「おおおおお‼」」」

「ふふ……。ナンシーに先を越されてしまったか。我も頑張らねばな……。ならば、コヤツはナンシーの祝いに狩っていかないか?」

「そうしましょう!」

「是非そうしましょ♡」

「血抜きは任せて下さい!」

「ブモ!?」


 私達のやる気を感じ取ったのか、〝バインソンジェネラル〟が猛スピードで突撃してきた。

 咄嗟に物陰に隠れる素早いダンダくん。

 いざ尋常に勝負!!


「やつの弱点は見切っている! ここは私に任せろ!」

「キャシー!」

「ひとりでなんて無謀ですよ!」

「なんの! うおおおおおお!!」


 雄叫びを上げるキャシーは拳に闘気を集め始め……バインソンジェネラルの片方の角を掴むと――!


「貴様の眉間に我が想いを込めて! 正拳突き――!!」


 バインソンジェネラルの眉間にキャシーの渾身の力を込めた正拳突きが突き刺さる! 途端……。

 

「ブモォォォオオオオオオ……」


 脳をやられたのか……バインソンジェネラルはふらつき、立つこともできなくなり、ズゥゥゥン……と倒れ込んだ。

 痙攣し、泡を吹き――数秒後、完全に沈黙した。

 拳を振り上げて立つキャシーは一言。


「我等が友情に、一切の曇りもなし!!」

 

 声たかだかに、叫んだのであった……。

 ――こうして、森へ向かうはずだった私達の婚活旅は、今日も堂々と寄り道から始まったのだった。

 

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