第31悲劇 実は黒幕、何となく知ってましてね?
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その後の調査で、壊されたボス部屋の中で件の剥奪勇者のひとりが、無惨な形で死亡していたことが、EX勇者剥奪者捕縛騎士団の調査でわかった。
けれど、遺体には呪いが掛けられていた為、教会で使う死者を弔う際に燃やす『炎の砂』を使って灰にしたらしいわ。
――剥奪勇者でありEXを倒せる敵となると、最早もやし魔王しか想像がつかない。
「……本当に、魔王がやったのかしら?」
私がぽつりと呟く。
その場が一瞬だけ静まり返るけれど、次の瞬間にはミルクちゃんが肩をすくめて笑った。
「えー、じゃあ誰がやったっていうの? 私達の婚活には関係ないわ♡」
あっさりとそう言い切るミルクちゃんに、私も「そうね」と笑みを浮かべた。
恐らく彼ら数名を元の世界へ戻し、件の亡くなった男性に関しては……何かのメッセージか。
勇者剥奪されたEXを殺せる存在が明確となり、世間は揺れた。
【魔王という脅威】が現実味を帯びたのだ。
そして――。
「そんな、もやし魔王ちゃんは、勇者にぞっこんなんだ」
「ええええええ!?」
「ダンダくん、そこまで驚きます?」
「驚きますよ……。ええぇ……。これからその魔王が襲ってきたら、俺達でも太刀打ちできますかね……」
「分からないわ。ただ言えることは、もやし魔王は、イサミンの嫌うことは絶対しないという事ね」
「何故ワカル?」
「アイツとアタシは同類だからよ」
「ナルホドネ……。デモ、腑ニ落チナイノハ、ボスガイナイコトヨ!」
「確かに!」
「私達、婚活乙女ネ! 婚活相手ガ、留守! 困ルネ!!」
「全くよ! なんで留守なんて使うのかしら!」
と、別の意味で怒り出した面々。
確かに私達は婚活PT!
相手が逃げ出して留守なのは困るわ!!
「やはり、チマチマダンジョンに行くよりは、〝大規模婚活会場〟に乗り込んだほうが良さそうだな」
「それってつまり……」
「……魔王城だ」
「あ、やっぱり大規模婚活会場って魔王城のことなんですね」
「フ……。良かったらダンダも魔族娘で嫁を探したらどうだ?」
「あ――俺は良いです。まだ早いっていうか」
「だが、君は二十八歳だろう。一番年上だ」
「そうだったんですか!?」
「あ、はい」
「若く見えるって、得よねー♡」
思わずダンダくんの年に驚く。
見た目って役に立たないな!
ダンダくんもっと若いかと思ってた!
「ダンダコソ、早ク、嫁、見ツケルネ?」
「それは分かっているんですが……」
「好みの女性がいるとか? 意中の相手とか?」
「それは! なんと言いますか……」
「ふむふむ?」
「深読ミハ、ダンダニ、失礼ネ。気持チ、ケジメツケバ、言ウヨ」
「そういうものか?」
「ソウイウモノネ」
キャシーさんの言葉にナンシーさんが間に入る。
なんだか不思議な感じだったけれど、きっと二人の間だからこその伝わることもあるのだろうと、笑顔で頷いた。
「愛も恋も一筋縄ではいかないわ。そして、独り相撲ではどうしようもないのよ♡」
「そうですね♡」
「ミルクノ言ウ通リネ」
「なるほど、我はどうにもせっかちでいかんな」
「ソコモ、キャシーノ、魅力ノひとつヨ!」
「そうだといいんだがな!」
「キャサリンさんは魅力の塊ですよ」
「ははは! 我を喜ばせてどうする! 狙っている女性を褒めたまえ!」
「あはは……」
その様子を見て、私とミルクちゃん、そしてナンシーは目を光らせた!
恐らく……恐らくだけど……ダンダくんはキャシーが好き!
これは、これはこの恋! 実らせたい!
私達にできることは限られているけれど。
せめて、二人きりの時間くらいは作ってあげたい。
「何にしても、婚活相手が大規模婚活会場にしか居ないなら、そこを目指すしかないわね」
「オワタですね」
「まだ始まってもいないのに!」
「違うわよダンダ。最果ての街のオワタ! ここからオワタまでは随分とあるわね。途中の街を経由しながら行きましょう。アタシ達が全力で走ってもオワタまで三ヶ月は掛かるわ」
「暫ク、森ヲ突っ切ルト言ウ手モ、アルネ」
「確かに、カテエラの街のそばにある、原始の森……だったかしら?」
「ソコヲ、移動デキレバ、ニヶ月ヨ」
「となると、森を突っ切るのも手か」
「普通ナラ、シナイネ。デモ、ミルクノ拠点アルカラ、イケルネ」
「そうね、突っ切ってみましょうか」
「なら、明後日から突っ切ろう。今日はまだ冒険者死亡の余韻が残っている」
「ナラ、夜ハ、チョット出カケテクルネ」
「うむ、気晴らしも必要だろう」
こうして、ナンシーは少しだけアンニュイな様子で部屋を出ていった。
自分だけ相手がいないというのは……中々に苦しいのだろうと思う。
少しでも気晴らしになると良いけど……。
その日の夜、ナンシーは少しお洒落をして出かけていった。
何でも執事さんに聞くと、ナンシーお気に入りのバーがあるらしい。
何かあると、そこで飲んで帰って来るのだとか。
それならば、ひとりでゆっくりさせたほうが良いと思い、私達はミルクちゃんの用意したお酒を飲みつつ会話を楽しむ。
「婚活会場で素敵な出会いがあるといいんだけど……」
「案外バーで素敵な出会いがあったりして……まぁ、そうだと良いなと言う予想ですが」
「ダンダの予想が当たると良いんだがな」
「ナンシーさんだって美人なんですから、良いお相手くらいできていいのに」
「本当よね。うちの女性陣の良さを分からない男はノーサンキューだけど」
「それは言えている」
「「ですね!」」
こうして、夜ひとり出かけていったナンシーに何が起きるのか……。
はたまた、素敵な出会いがあるのかは……まだ分からない……。
でも。
「ナンシーも、素敵な恋をするといいな……」
「キャシー……」
「そうね♡ 素敵な恋は、素敵なものをはこんでくれるから♡」
「切なさもな」
――静かな夜はラガービールを飲みつつ、お菓子を食べながら過ごした夜のこと。




