第30悲劇(閑話)〝EX勇者剥奪者捕縛騎士団〟より……
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――EX元勇者Side――
カテエラの街のアウートダンジョンで、好き勝手動いて、挨拶代わりに血を見る程度のこともしてストレス発散!
幾度となく〝EX勇者剥奪者捕縛騎士団〟から逃げ切ってきた俺達にとって、今回も緩ゲー感覚で楽しんでいた。
ひとつの不満を除いてはだが。
「ユサがいれば、拠点出してもらって近代的な生活出来んだけどなぁ」
「ギルド嬢脅して聞いてみたけど、ユサって言う冒険者は行方不明らしいぜ」
「あれだろ? どうせ名前変えて冒険者してんだろ。見つけたらゼッテー連れて行こうぜ」
「でもアイツが消えて五年だろ? 見た目変わってんじゃね?」
男の五年は見た目も変わる。
見事に変わっていたら、俺達でも見分けがつかないかも知れないな。
「それにしても、甲羅って高く買い取ってもらえるんだろ?」
「だな」
「狩り尽くしちまったし、なんか適当な敵倒してから外に出ようぜ」
そう仲間が口にすると――。
「聞いた話だと、筋肉ダルマの女冒険者が、婚活だーとか言って、ダンジョンボスに挑んでるらしいぜ」
「なんでダンジョンボスが婚活相手になんだよ、大草原だわ」
「なら、ここのボスでも倒していこうぜ。婚活パーティ、なんとか到着するもボス死亡。みたいなの面白くね?」
「確かに、それ良いかもな」
「サクッと倒してアイテムも回収できるし、ダンジョンボス倒してから帰るかー」
「どうせ到着するまでにまだ時間かかんだろ?」
「ダンジョンボス倒して金のもの奪って帰ろうぜ~」
こうして俺達はダンジョンボスを倒すべく、他のモンスターは無視して突き進んだ。
ダンジョンボスの扉には『留守にしている!』と、達筆で書かれていたが、無視だ無視。
ドアを蹴り飛ばして開け、中に入るとボスの気配はなかった。
「――っ? おかしいな?」
「本当に留守だったか?」
「血しぶきもう少し見たかったんだけどなぁ」
ぶつくさ言いつつ靴音を鳴らしてエリアを見ていくと、上から「ガシャン」と何かが降ってきた。
檻だ。
何で檻なんて降ってくんだよ! トラップか!?
「この檻……っ! 俺達EXでも開けられねぇぞ!?」
「まじかよ!」
「どうなってんだ!?」
ガシャガシャと音を立てたり、持ち上げようとしたがびくともしない。
どうしたものかと騒いでいると――。
「違うゴミが捕まったか……」
「誰だ!」
俺達が声を上げて、声の主を探すと――白いマントに身を包み、白の仮面に赤い筋の入った模様をつけた細い男が降ってきた。
「テメェ! こんな事して許されると思うなよ!」
「誰だよお前はよぉ! ダンジョンボスじゃねーだろ!」
俺達がそう告げると、男が指パッチンした途端、全員が一斉に鼻血を出した。
止めど無く流れる鼻血……脳を……攻撃したのか?
「お、おい、あれって……もしかして……」
「お前……何者だ……? 普通の魔族じゃね―だろ!」
止まらない鼻血をそのままに叫ぶと、そいつは地面に降り立つと、コツコツと足音を立てながら何かの魔法陣を発動させ、俺を抜けた三人に何かの魔法をかけた。
「異世界勇者だな? お前たちは今から……元の世界へ強制送還させる」
「元の世界へ……強制送還……だと?」
「い、いやだああああ!」
「う、うわあああああ!!」
「マサオ!!」
「嫌だ! 嫌だ元の世界になんて戻りたくねぇ!」
「リーダー助けてくれ!」
「フクジ! ダイスケ!」
「「「うわあああ――……!!」」」
魔族が何かを呟いた途端――俺の仲間だった彼らは姿を消した……。
一気に血の気が引いていく……。
お、俺は、俺も戻されるのか?
「俺は今、盛大にイライラしている。異世界勇者が憎くてしょうがない……。異世界勇者は俺の大事な妻となる予定の女性を奪っていった……」
「そんなの言いがかりじゃねーか!」
「彼女たちが来た時。君の死体があれば……どうなるかな」
「俺を……残したのはまさか……」
「メッセージ要員だよ。魔王を怒らせた罪をしっかりと伝えてくれ」
「ふざけんな!」
と叫んだ途端、パンッという乾いた音と共に、俺の両腕が消えた。
あまりの激痛に雄叫びとも悲鳴とも取れない叫び声が部屋にこだまする。
「なんで俺がぁぁあああ!!」
「君は随分と……色々酷いことをしてきたみたいだね?」
「ぐぅうう……っ」
「恐喝、強盗、暴漢、正に屑というに相応しい。そんな君が死んだところで、感謝はされても文句を言われる筋合いはない」
「く……。俺の……仲間たちが……黙ってねぇからなぁ!」
「ああ、君たちには拠点があるんだったね。そこにこそ、本来のボスがいるわけだ」
「へへへ……剥奪勇者を……舐めんなよ……」
「なら、君たちを殺したとしても、世界から〝ゴミ〟が無くなるだけ、俺は良いことをしている」
「俺達はゴミじゃねぇええええ!!」
「異世界勇者なんてのはな? 俺から大事な結婚相手を奪うような最低な野郎しかいないんだ……。あの子の前で夫を殺したら、きっと嫌われてしまう……。二度と心を開いてくれないかも知れない……」
「そんなの俺に関係なんか……」
俺に関係ないことなのに……俺はコイツに、魔王に殺されるのか!?
規格外すぎんだろ!
「そういえば、君が死んだら……君の仲間は、必死に君を探してくれるような人たちかい?」
「……それは」
「どうせ捨て駒……そうだろう?」
「ち、ちが」
「ああ、どこまでも汚い。異世界勇者はどこまでも愚かで汚らしい」
次の瞬間、俺の両足も存在ごと消えていた。
畜生、なんで俺がこんな目に……こんな目に――!!
「その異世界勇者の所為で俺がこんな目に遭うとか……畜生……どこのどいつだよ!」
「さてな? この世界では偽名を使って生きているようだが?」
「はぁ!?」
「本当の名前は――確か、〝ユサ〟……とか言ったかな?」
「ユ……ユサ……ユサだと!?」
「お喋りが過ぎたね? そろそろ君の汚らわしい声を聞くのも飽きてきた。……死んでくれ、ストレス発散の為に」
「な――……」
その言葉を最後に、俺の体がどうなったのかは分からない。
こんなことなら……元いた世界に戻されたほうがマシだった……。
畜生、ユサ……テメェのせいでこんな目に……。
畜生……畜生……。
「後は、この遺体が腐敗しないように施して……。俺の怒りがどれだけか、イサミンも知ると良い……。イサミン、イサミン、イサミン、イサミン……うう……何故あんなのと結婚なんて……」
響くボス部屋で、魔王は静かに姿を消す。
残ったのは――俺の死体と、囚われた影だけだった……。




