第3悲劇 返り血は雨のように降り注ぐし、首も雨のように降り注ぐのよ……
「さぁ、気合を入れて、実力をリーダーのイサミンに見せるのよ!」
「「ガッテン♡」」
彼女たちは――群れで襲ってくる大量のオーガの群れに突っ込んでいった……。
そこからは……一方的な殲滅風景だった。
鞘に入れたまま剣を振るう。
――ボッ。
次の瞬間、オーガの首が空を舞った。
風圧で吹き飛び、壁に叩きつけられ、まとめて絶命。
ナンシーさんは素敵な異国の踊りを披露してるんだろうけど、早すぎて高速回転しながら敵の間を突き進み、吹き飛んでいくオーガの首が雨のよう……。
ああ……血の雨が降っているわ。
晴れているのに血の雨が降るなんて……狐もびっくりの嫁入りも出来ない雨ね。
「うふふ! 圧倒的じゃないの!」
「……オーマイゴッド。圧倒的ではないか……我が婚活PTは……」
「両手で惨劇を隠さない♡」
「あああ、いけませんお姉様! 私、血だけは苦手なんです!」
「でも、いざという時は戦ってたでしょう? イサミンのPT面子、弱々だったものね」
「うううう……。ミルクちゃんの意地悪♡」
「うふふ♡」
まぁ、血は苦手だけど、絶対駄目ってことではないし、見慣れれば何ともなくなると言うか……いや――ほんと、いろんな意味で虚無りそうだわ。
圧倒的すぎるもの。
これでまだふたりしか肩慣らしに動いてないのよ?
凄すぎない?
「私達は絶命したオーガから魔石やら何やら集めましょうか」
「そうだね」
「もう、そんなに喜んじゃって♡」
「ウフフ」
「ドンドン回収急ぎましょう! おかわりは何度でも来そうよ!」
「だああああ! もう急ぎましょう!」
こうして、高速回転しながらオーガの首をスパパパパパ――ン……と切り落としていく、美しきはずのダンスを繰り広げているナンシーさん。
ドッシュンダッシュンと音を立てつつ、オーガの首を吹き飛ばしていくキャシーの凄まじい殲滅力。
私とミルクちゃんは魔石と睾丸(※高値)、その他お金になりそうな物をゲットしようとしたけど――。
「ああ、そう言えば〝空間収納〟がアタシ、あったんだったわ」
「〝空間収納〟っていうと、異世界勇者が使えるっていう超巨大な空間収納の事?」
「そうそう。中のものは腐らないし、持ち帰るならオーガ肉も欲しくなぁい?」
「欲しい~。こう見えてオーガ肉って美味しいもん」
「決まり! 首はいらないから、首から下を持って帰りましょ♡」
「わぁ……絶命してるオーガの首を刎ねるのは……」
「お任せしたわ♡」
「わぁ~い。頑張るぞー」
虚無のまま、壁に吹き飛んで絶命しているオーガの首を剣で切り落としつつ、処理をしていく。
まぁ、オーガのお肉美味しいし、これくらいは仕方ないよね。
私、料理が壊滅的だけど。
……この面子で料理が得意な人っているのかしら?
キャシー……とナンシー……出来る?
いや、ああ見えて料理出来るかもしれない。
「私だけ料理が壊滅的だったらどうしよう……」
不安を胸にオーガを処理していくと、ズゥゥウウウン……という足音が響き、地面が揺れる。
この気配は――。
「オーガキングよ! 気を付けて!!」
「おお……ようやく我の本当の意味で肩慣らしになりそうなのが出たな!」
「相手ニ、不足ナシネ!」
「ミルクちゃん! ふたりじゃ危ないわ!」
「ん、危険になったら助けに行くわ。安心してね?」
安心出来るか――!!
相手は〝オーガキング〟だよ!?
ある種のボスだよボス!!
いくらEXのふたりとはいえ、か弱い乙女が勝てる相手じゃ――。
「武器は邪魔だ! いざ拳で勝負!」
「ソウネ! 枷は外シテ、良イカモネ!」
待って!?
武器が枷だったの!?
ってことは今まで枷付きでオーガたちを屠ってきたの⁉
嘘でしょ!?
「我が相手に不足なし!」
「私モ、一撃ハ、入レタイネ!」
「キャシーは腹を狙う!」
「ナンシーは顔面狙うネ!」
わぁ、一瞬にして役割分担出来てる。凄いわー。
そう思った瞬間、「ゴシュッ!」「ドスッ!」という音がオーガキングから聞こえ……。
腹の真ん中を突き破られたオーガキングは血を吐き……顔面に更に拳が突き刺さり……哀れ、登場して数分でオーガキングは地面に倒れた。
「登場して数分で床ペロですか……はは、圧倒的戦力!」
「このオーガキング、まだ若いオーガキングだったわね」
「マダ、身体ガ、出来上ガッテナイ……弱イ、キングネ」
「腕鳴らしにはならなかったかもしれないわ」
「全クモッテ、ソウネ」
お、おう……。
物足りないとばかりに、返り血を雨に濡れた水滴を払うかのように堂々と立つふたり。
しかも背後に後光が差してるわ……。
「少しだけ暴れるくらいは出来たかしら~?」
「そうね。ちょっとした運動くらいか?」
「普段シテイル筋トレノ方ガ、ハードネ!」
どんな筋トレ!?
ちょっと興味があります!
「後は全部〝空間収納〟に入れ込んじゃって……さて、帰りますか! でも、その前に返り血はなんとかしたいわね……。〝生活魔法〟使える?」
「使えるよ」
「使エルネ!」
「それで綺麗にして帰りましょう!」
――こうして、私も〝生活魔法〟で、顔や手に着いたオーガの血を落として、いざ帰路につくのだけれど……。
「私、回収しかしてないわ……私って弱すぎ?」
「あら、それを言ったらアタシも〝空間収納〟でオーガを入れてただけよ~?」
「うう……私もそんなスキルがあればっ!」
「ねぇ? イサミンの女神から貰ったスキル、何なのかしら?」
「気ニナルネ」
「確かに、勇者に選ばれるくらいだ。一体どんなスキルを?」
「それは――……」
――それは、今までの私には、致命的に足りなかったものだった。




