第22悲劇 キャシー節炸裂!? そして、冒険者は金だけで動かぬのです!
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「む。ひとつ足りない付与アクセサリーがあるな」
「え! これでも十分……」
「店員、この付与アクセサリーをひとつ頼む。すぐに装備していく」
「かしこまりました」
キャシーさんが気になってダンダさんに購入したのは――【身代わりの華】と呼ばれる、貴重な付与アクセサリーだった。
この付与アクセサリーは、装備者を花の枚数分だけ死から守るというものだ。
無論、枚数が多いだけ高い。
迷わず薔薇が数輪咲くそれを選び、キャシーは支払い、ダンダの胸元へ装備させた。
「よし、これで命の保証は最低限出来るだろう」
「キャシーさんそんな……こんな高価なものを俺なんかに」
「君は我達の大事なポーター。何かあってはいけない」
「ですが!」
「投資だ。君に対する我達の投資。それに見合うだけの働きを成してくれるだろうと言う期待と希望もある」
「キャシーさん……」
「だが、君にそれらを全て任せる気はない。頼れ、青年よ。困った時は頼ることをまず覚えよ。それが、君に投資する、最初のお願いだ」
やだ……凛々しい。
キャシーったら凛々しいわ……。
思わずトクゥンしちゃいそうになるほど凛々しい……ちゅてき♡
そう思っていると。
「そうね、まずはアタシ達に頼ることを覚えなさい。勇者だからとか、EXだからとかで萎縮してないで、頼ることで生き延びる確率が上がる場合も多いわ」
「……はい!」
「キャシー素敵だったわ♡ このハート泥棒さん♡」
「ははは! 初恋泥棒にでもなってみたいものだな!」
「やだ、豪快! でも、キャシーらしいわ♡」
「「初恋泥棒……」」
思わず私とダンダくんで口にする。
確かに、異世界には「初恋泥棒」なる存在がいるのだと言う話は、別の人から聞いたことがある。
初恋泥棒って、きっとキャシーみたいな包容力のある人のことを言うのかも知れないわね。
これは、異世界恐るべしだわ。
そんな完璧人間がいたら、誰だって恋しちゃうわよ。
「キャシーさんが初恋泥棒……い、いけません! 数多の男性のハートを撃ち抜いては!」
「風穴があくわね」
「心ニ残ル、爪痕残スノハ、得意ネ!」
「ははは! 違いない。我達は相手の心にザックリと、血しぶきでも上がりそうな程の傷跡をつけるのが得意だからな!」
「初恋泥棒と言うより、トラウマ泥棒」
「あら、トラウマ泥棒ならアタシも得意よ♡ そこのお兄さんたち?」
「「「「はい?」」」」
「百合って思ってるでしょうけど、違うわよ。アタシ、オネェよ?」
「「「「「リア充死ね!! 畜生が! 夢返せ!!」」」」
「ほほほ!! ほらね?♡」
今のは、どういう意味だろう?
私にはわからないけど、きっと高等テクニック……かな?
百合からの絶望? んんん、よくわからない世界だわ!
「ミルクちゃん、私には高等テクニックのようでよくわからないです」
「イサミンは純粋のままでいてね?」
「そうだな、女勇者は純粋のままがいい」
「純粋デ、純情ネ」
「そうですね、リーダーはそのままが良い気がします」
「なにやら、納得出来るような出来ないような?」
「ありのままの姿が一番ってことよ♡」
「そっか!♡」
こうして、最後に色々納品した希少種の魔物を解体したそうで、必要部位のアイテムを作ってもらうことになった。
私はサーベルタイガーの何故か、耳付きフードを。
他の人達も、色々欲しい素材でアイテムを作ってもらうらしく、私はその間外に出てダンダくんと待つことになった。
「しかし、ナンシーさんのお宅は凄いですね」
「本当ですね……。大商家のお嬢様だったとは……」
「ここでも支部でしょう?」
「ええ、本国に行けばどうなるんでしょうね」
「一度は行ってみたいですね。ナンシーさんの故郷」
「みんなの故郷に行ってみたいわ」
「……でもミルクさん、故郷ってあるんですか?」
「異世界勇者には、この世界に故郷がないから……」
そうなのだ。
異世界勇者であるミルクちゃんの実家は異世界にある。
現地勇者の私とは違う事を、ふと思い出して切なくなる。
故郷……帰りたいとか思わないのかな。
ミルクちゃんは何時も明るくて元気いっぱいだけど、故郷に恋人がいたりしないのかな?
いたらショックだけど。
「むう!」
「どうしました?」
「ミルクちゃんの故郷、どこかに作ろう!」
「――それはいい考えですね!」
「この世界で、ミルクちゃんの故郷ができたらきっと素敵だわ!」
「そうですね!」
「キャシーの故郷も行ってみたいわね!」
「そそそそ、そうですね!! それまでに色々俺も頑張ります!」
「みんなで婚活頑張るぞー!」
「俺はついて行くだけですけどね!」
ムン! と二人気合を入れたところで、奥から男性が走ってきた。
なんだろうと思いダンダさんの前にスッと出ると――男は泣き叫びながら私の前まで来て店の隅に立っていた兵士に取り押さえられる。
一体何事!?
「ナンシー! 頼むううう!! 俺の謝罪を聞いてくれえええ!!」
「お帰り下さいませ!」
「ナンシー様はお会いにならないそうです!」
「ナンシ――!! おい! そこの冒険者! 金! 金払うからナンシー呼んでこい!」
「は?」
「俺達ですか?」
「冒険者は金で動くんだろ!? だから金をやるって」
「お言葉ですけど! 何でもかんでも金で動くと思ったら、大間違いです! だからナンシーに捨てられたんじゃないの? このクズ男!」
「なっ」
「店に戻りましょう。気分が悪いわ」
「俺もです。戻りましょう」
「お、おい、ナンシーを知ってるのか!? だったら――」
その続きを聞く前に、ドアを乱暴に閉めて店内へ戻った。
外で喚いてる声は聞こえたけど無視よ無視!
金で人が何でも動くと思ってる屑なんて知ったこっちゃないわ!
「何よあの男、気持ち悪い!」
「全くですね。俺達は冒険者なりポーターなり、自分の職には誇りを持ってるんですよ!!」
「安易に金で買えるほど、安くはないわ」
「全くです!」
二人言葉が荒くなったけれど、大きく深呼吸して頬を叩き、にっこり笑いあうと――。
「戻りましょうか。皆のところへ」
「ええ、俺も戻りたかった所です」
喚き声は遠くなっていき、私とダンダくんは皆の元へと合流しに向かったのだった。




