第18悲劇 お人好しで気の優しいダンダさんが仲間に加わって
こうして、新しく仲間に入ったポーターのダンダさん。
栗色の少しウェーブの入った髪に優しげな緑の目が印象的な青年だ。
筋肉は、言ってしまえば細マッチョといったところ。
少し気の弱そうな彼が、このPTに入ってどうなっていくのかが楽しみだわ。
「これが……異世界勇者の一部しか使えないという……【拠点】ですか」
「え? 一部しか使えないの?」
「はい、そう聞いてます」
「うふふ♡ アタシ言ったでしょ? レアスキル沢山持ってるって」
「なるほど……」
「さ、皆入りましょう。そして呑み直しよ! その前に……イサミンはお風呂に入ってお酒流してきてね?」
「はーい!」
中に入り、私は真っ先にお風呂に向かい、アイテムボックスから着替えを取り出してシャワーを浴びる。
ベタベタした感覚が抜けてホッと一息。
お風呂場の外からは笑い声が木霊している。
きっと楽しい会話をしているのね!
「人の良さそうなポーターさんが仲間に入ってよかったなぁ」
男性を入れるのをミルクちゃんが嫌がるかと思ったけど、全然そんなのはなくて、キャシーもナンシーも普通に受け入れてくれた。
好感度爆上がりって言ってたから大丈夫だろう。
しっかりシャワーでお酒を落として生活魔法で体の水気を取り、着替えを済ませて向かうと、ミルクちゃんが色々な見たこともないお菓子を出して、見たこともない瓶のお酒だろうか?
それを出して呑んでいた。
「うふふ♡ アタシ、異世界のアイテムを買えるスキル持ってるの。皆に月金貨貰ってるのも、スキルから購入していたのよ♡」
「なるほどです!」
「このラガーとかいう酒は最高に旨いな!」
「俺もこんな旨い酒呑んだの初めてです!」
「ウマイ!!」
「ドンドン呑んじゃって~! 今日はダンダくんがパーティに入ったお祝いと、さっきの馬鹿野郎を忘れるために呑むのよ~!」
「私も一本くださいな~!」
「イサミンは私の隣ね♡」
「はーい♡」
こうして始まっていた酒盛り。
たまにミルクちゃんが料理を出してくれたりして、ポテトフライとか絶品!
こっちの世界とは違う味のソーセージとかもあって、どれも美味しすぎた!
「ウマウマ!」
「最高~~!!」
「旨い……ところでダンダ、あのPTにさよならを告げずにパーティを抜けて良かったのか?」
「受付のお姉さんには、支払いが滞っていて、規約違反である事を伝えたうえで抜けさせてもらうことを伝えています。冒険者ギルドも、規約違反をしているパーティに対してはきびしく指導するとのことでしたので、抜けて大丈夫だと言われました」
「流石、手を回すのがうまいな」
「お褒めいただき光栄です!」
「でも、それなりの期間キャサシーンの受付嬢してたけど、ダンダくんみたいなポーターは稀ね」
ミルクちゃんが問いかけると、ダンダさんは少し言い淀み、それから「実は……」と事情を話し始めた。
なんでも、ダンダさんは元々孤児院出身らしい。
その孤児院が老朽化したりと、他の自分にとっては弟妹になる孤児たちが苦しむのは見たくないという理由と……。
出来れば沢山食べて大人になってほしいという願いから、危険なポーターの職につき、毎月お金を送っているのだとか。
「ひもじいのは辛いです……。寒さに凍える夜だって辛いです……。だから、少しずつでもお金を送って……俺にとっては弟妹たちにあたる子供たちを支えていければと思って」
「……ダンダ、優シスギル。故ニ、アノ、パーティナンカニ、嫌デモ、入ル事ニナッタ?」
「優しすぎるかは分かりませんが、少なくとも俺の得たお金で食うに困らず、寒さに凍えずにいてくれるなら……それが一番です」
「なるほど……そういうことなら、我らも手助けせねばならんな」
「そうね、アタシ達も手伝いは出来るわね」
「と、言いますと?」
不思議に思ったのか、ダンダさんが首を傾げると、ミルクちゃんは前の職場の知識をフルに利用して次のような説明をしてくれた。
「孤児院や協会に関して、冒険者が出来る支援というのがあるの。ひとつは金銭的な支援ね。これが最も一般的かしら? 特にパーティの名で支援することが出来るの」
「そういう支援方法もあったんですね」
「ええ、あまり知られていないけど、SランクやEXランクのパーティなら、ギルドに支援したい孤児院を伝えて毎月決まった額を支援することは可能よ」
「イイネ、ソレ。私、ダンダノ育ッタ孤児院、支援シイネ」
「うむ、これからの働きに期待するという意味を込めて、毎月決まった額を我ら【ゼクディ】が出すのも、支援としては悪くなかろう」
「そういう事。どうする? イサミン」
「是非しましょう! ひとりで支えるより、皆で支えたほうがきっと土台は大きいですよ!」
「皆さん……ありがとうございます!」
涙を零しながら頭を下げたダンダくんの頭をキャシーが優しく撫でる。
明日には彼の過ごしていた孤児院に【ゼクディ】の名で少なからずの支援を毎月していくことが決まった。
一人金貨数枚ずつ出して結構なお金になったわ。
これなら一ヶ月どころか、毎日スープに肉を浮かべられるはず!
これだけあれば、冬は越せるし、布団も増やせるし、なんならおかわり自由よ!
「ただ、婚活成功して抜けていったら、少し減っちゃうけど」
「無論、皆さんが婚活しているのは知っていますから、大丈夫です!」
「ナカナカ、アリノママ、受ケ入レテクレル、男性イナイカラネ」
「苦労はしているな、ハハハハハ!」
「けど、次のダンジョンでは望みがあるかも知れないわ。諦めずオワタ村を目指しつつ頑張りましょう!」
「「「「はい!」」」」
「では再度、かんぱーい!」
私達はお酒を呑み、美味しいお菓子を食べつつ平和な時間を拠点で過ごし、ある程度呑み終わると全員で片付けをして歯磨きをしてから眠りについた翌日――。
冒険者ギルドで【ゼクディ】の名前でダンダくんの過ごした孤児院に支援することを決め、金額を伝えると銀行から毎月落としてくれることになった。
「さて、ここにいるのもこれで終わりかしら?」
「移動は、我がダンダをおんぶして次の休憩場所まで連れて行こう」
「すみません、ポーターなのに運んでもらうなんて……」
「我らについてこれんだろう」
「お世話になります、キャサリンさん」
「うむ、我が責任を持って連れて行こう!」
「じゃあ、次の場所に――」
私が口にした時――。
「お、そこにいるのってミルクじゃね?」
「まじかよ、ミルクじゃん」
おやおや?
波乱の予感がしますが……大丈夫ですかね?
一瞬にして、ミルクちゃんの顔から表情が抜け落ちたけれど――。
「さ、出発!」
「おいミルク!」
「待てよ! 話を、」
「次の休憩エリアに着いたら美味しいジュース出すわ!」
「楽しみです! 私はカフェオレがいいなー?」
「んふふ♡ 愛しのイサミンの願いを叶えるのは、アタシの役目よ?♡」
「きゃっ♡」
「出発!」
「「「ガッテン!」」」
「キャサリンさんお願いします!」
ミルクちゃんに声を掛けてきた相手をガン無視して、私達は時速百キロで一気に走り出したのだった。
あの人達、恐らく異世界勇者よね?
ミルクちゃんを奴隷にしてた人たちだったら、五発ずつ――いや、最低でもそれくらい殴ってきたかったな。
そんな事を思いつつ、全力疾走していたのだった。




