第17悲劇 一難さって、新たな仲間!
その日私達は、婚活が上手く行かなかったことについて、酒場で反省会をしていた。
第一回の婚活だったゆえに、反省点は沢山あるかも知れない。
そう思って始めたのだけれど――……。
「うむ、今回の魔族は中々にペット想いの優しい青年だったな」
「確カニネ。魔族ハ、モット、仲間ヲ使イ捨テスルカト、思ッテタヨ」
「でも、それを言ったら人間の方が仲間を使い捨てにしてるわ。それを鑑みても、カテエラのアウート街にいるという筋肉な魔族に会いに行くのは十分に有りね」
「ソウネ」
「粗忽で乱暴者でないのなら良いのだがな」
「紳士かも知れませんし、そこは会ってみないと分かりませんね」
「ああ、情報が欲しい。こうも情報が乏しいとな」
「実際にカテエラ街に行って聞いてみないとわからないことだらけですね」
と、次の目的地である、〝カテエラ街にあるアウートダンジョン〟について盛り上がっていた。
アウートダンジョンもAランク冒険者が潜るダンジョンのひとつで、錬金術に使うような薬草等、そっち方面に強いダンジョンであることは、ミルクちゃんの情報で分かっている。
流石元冒険者受付嬢!
色々網羅してるわ!
「次なる婚活会場に向かうべく、今日は気合を入れて呑まねばな!」
「そうね。次こそはという気持ちは大事だわ!」
「では、かんぱー―」
そう言いかけたその時、私の頭にエールが注がれた。
あまりにも突然で驚いていると、ゲラゲラ笑う声が聞こえてきた。
「やだ、やっば☆ 女勇者がゴリラ連れているんですけどー☆」
「自分がゴリラだからって、ゴリラ集めるかよ普通、うけるー」
「汚物は消毒しなきゃ~☆」
「その声は……以前パーティを組んでいた、元戦士さんと元僧侶さん……ですかね」
私のもとから去っていたカップルである。
まさかここで出くわすとは……しかも頭からエール注がれるとは思ってもいませんでしたわ。
「どう? 汚物は消毒できた?☆」
「まだだな。酒場のおねーさーん! エール追加~!」
「リーダーやめて下さい! 相手EXでしょう? 殴られたら、貴方なんて直ぐに……!」
「うるせぇ!」
「リーダー!! 謝ったほうが良いですって!」
「なんでゴリラに謝らないといけねーんだよ! お前このゴリラが好みかー?」
そう言い争いが始まった時、素早く動いたのはミルクちゃんだった。
元戦士さんの鳩尾に拳で一発!
途端吐き出したエールが吹き出して悲鳴が木霊したけれど、それを無視してミルクちゃんは戦士さんの首を乱暴に掴んで絞め上げた!
「貴方、今アタシのイサミンに何したのよ?」
「ふぐぐっ……ぐゔぉぇっ!」
「り、リーダー!!」
「誰か回復魔法使えるやつ連れてこい!」
「イサミンがアンタになにかしたかって聞いてんのよ……答えな!!」
「ひ……ぐぅ……ごぼぉ……っ」
「み、ミルクちゃんそれ以上したら死んじゃいます!」
「十回殺しても殺し足りないわ」
「ミルクちゃん、私は大丈夫ですから! そ、それよりミルクちゃん、お酒でベトベトなので! ここらで新しいアーティーファクトの服でも買おうと思うんですが、選んでくれます?」
慌てて提案すると、ミルクちゃんは首を掴んで戦士さんを床に叩きつけ、大きな穴が空いたけど……痙攣こそして白目向いて泡は吹いてるけど生きてる様子。
良かった、死んでない。……まだ息はあるわね。
ミルクちゃんが人殺しになるところだったわ!
「も~~。おねだり上手なんだから♡」
「えへへ♡」
「でも、その前に一旦お風呂ね。あーあー。折角呑んでたのに気分台無し。ねぇ皆? アタシの拠点で美味しいお酒出すから、そこで飲み直しながら、明日は一日オフにしましょう?」
「そうだな。チョリーッスの街にはアーティーファクト店があったな」
「ソロソロ、勇者ノ防具モ草臥レテキテタ頃合イダカラ、丁度イイネ」
「決定ね♡ 支払い済ませてサッサと帰りましょう。ああ、それとそこのクソうざい女」
「ひいいいいいい」
「次あったら、顔面破壊するから、気をつけてね♡ 二度と同じ顔には戻れないわよ」
「いやあああああ!!」
僧侶さんが叫ぶと、回復魔法を中断して走り去っていった。
あとに残ったのは、失禁して震えている戦士さんと、頭を抱えて溜息を吐いている、先程リーダーさんを止めに入った男性だわ。
「……この度はクソ馬鹿なリーダーが申し訳ありません」
「次あったら殺すわ」
「ええ、それだけのことをしたと自覚しています。少なくとも俺はですが」
「話の分かる男性で助かるわね」
「俺はこの人たちに誘われて入っているポーターのダンダです。そろそろこのパーティとは潮時かな……低俗すぎる」
「ポーター……荷物持ちか」
「支払いも滞ってますし……そろそろ頃合いかと思って……」
ポーターとは、ダンジョンで荷物を運んでくれる人のこと。
命がけの仕事が多いけど、その分実入りがいいのがポーターなんだけどな……。
支払いが滞っているんなら、抜けるのが一番だろうなと思っていると……。
「我らはそれぞれアイテムボックスを持っているから、ポーターはいらないんだが」
「ですよね……。はぁ……新しい仕事探さなきゃな」
「貴方、キャシーやナンシーを見ても差別しないのね」
「え? そりゃ驚きはしますけど、EX冒険者は尖っている方々が多いですから、それもまた普通かと」
「あら、素敵な考え……。貴方みたいな方が増える事を祈るわ」
「あの」
「何かしら?」
「婚活、頑張ってください。応援してます」
まさか私達の話まで聞いていて応援してくれるなんて!
いい人すぎる!!
「ダンダさん!」
「はい?」
「うちのパーティのポーターしません?」
「え!?」
「あ、私は既に売約済みものなので、私の扱いには注意が必要ですが」
「いえいえ、え、でも」
「そうね……。ふたりに対して差別をしない……という人材は大きいわ。それに、女所帯だから力のある荷物持ちはひとり欲しかったし。あなた、ダンジョンや薬草、鉱石の違いはわかる?」
「はい、勉強してますので」
「私達に対して、何か他に気になること無いか?」
「え? お二人……えっと、素晴らしい筋肉の持ち主だとは思いますが」
「フム。筋肉ニタイシテ、イイ目シテルネ! 好感度ハ、爆上ガリヨ!」
「差別せず、我々の誇る筋肉を褒める素晴らしい目を持っている。決定だな」
「優秀な人材は引き抜いてこそです!」
こうして、受付に向かいダンダさんは先程のPTから抜け、うちのPTのポーターとして入る事になった。
色目も使わないし、誠実そうだからというのもあるんだけどね。
問題があれば……その時は三人が判断するだろう。
「さて、このままじゃイサミンがエールで酔っちゃう。急いで拠点に行きましょう」
「賛成です」
「皆さんよろしくお願いします。色々と教えて下さい」
「「ガッテン!」」
――かくして、私達のPTに、荷物持ちのポーターであるダンダさんが加わったのだった。




