第11悲劇 大事な話は、右から左へ聞き流してました
ミルクちゃんからの愛の告白来るか!?
期待したのに、いきなり猛烈な殺気を感じてそれどころじゃなくなった上に……。
現れたのはなんと魔王!
次から次にこんなことってある!?
しかも未来の夫とか普通に言ってる。
確かに私達は魔王城に婚活に行こうとしてたけども!!
「さぁ、我と共に帰ろう。魔王城はいつでも君を歓迎しよう」
「断るわ! だって、だって……」
「だって……なんだ?」
「だって私――……っ! も、《《もやし》》な人とは結婚出来ないわ!」
「「「「もやし……」」」」
そう、魔王ってもやしなのよ!
言わば、《《筋肉がない》》!
今まで私は筋肉に囲まれてきたのよ!?
ここで〝もやしの体した魔王〟が出てきても……。
「駄目なの! ときめけないの! 筋肉がない、もやしには用はないの!」
「何だと⁉ 知的男子は好みじゃないとでも言いたいのか‼」
「知的男子は素敵だと思うけど……だって、だって筋肉がない……。それじゃピクピク動く大胸筋もないんでしょう……? そんなの……悲しすぎる……」
「イサミン……」
「理解できん……。俺達の子供はさぞかし可愛いぞ⁉ さぁ、嫁に来い!」
「嫁も嫌! 婿がほしいの婿が!」
「なんて可愛くて我儘なんだ!」
「あら、そこがいいんじゃない? 魔王様の癖に……理解できないわけ?」
「くっ! 勝ち誇るなオネェさん……。俺は可愛くて我儘な現地勇者を、視察コウモリでひと目見たときから一目惚れだ!」
「ハッ! キッモ!」
「オネェさんには言われたくないぞ⁉」
何やら魔王とミルクちゃんが言い合っている。
ミルクちゃんに抱きしめられたまま、私は時を過ごした……。
言い合いは加速したけど、両者譲らない。
これ、どっちも勝てないんじゃないかな?
「そもそも! 貴方が男性である限り、オネェであるアタシには勝てないわ!」
「どういうことだ!」
「なぜなら! オネェと言う事はすなわち《《乙女》》! 乙女という事はすなわち、一緒のお風呂も楽しめる! それ、すなわち! 裸の付き合いなり!」
「ぐはぁっ!!」
「男の貴方がイサミンとお風呂に入ってご覧なさい? ただの犯罪者よ!」
「ま、魔王として犯罪者になるわけには行かない……。くそっ! 今日のところは引き上げる……だが諦めんぞ、現地勇者よ! 必ず我が妻にしてみせる!」
「筋肉つけてくださいねー?」
「俺は筋肉がつきにくい体質なんだ!」
「終わったな」
「勝テナイネ」
「終わらないし終わってない! そこの《《筋肉乙女達》》は黙っていたまえ!」
「「筋肉乙女!」」
そう言うと魔王は煙の中に再度消えていった……。
全く、筋肉のない魔王だったなぁ……。
やはり、胸筋ぴっくぴくの胸板には勝てないのよ。
「は――……どうなるかと思いましたね」
「本当ね。でも、アタシの気持ちは伝わったかしら……」
「はい……。右から左に聞き流しちゃったけど」
「聞き流しちゃったか~。何度でも言ってあげる♡」
「はーい♡」
私とミルクちゃんが微笑み合ったその時――。
「魔王」
「イイカモネ?」
「「お?」」
「筋肉乙女と言って差別しなかった」
「化ケ物、言ワナカッタネ!」
「優良物件!」
「後ハ、顔ダケネ!」
「魔王言うくらいだし、イケメンでは?」
「イケメン……デモ、筋肉ナシ」
「「そこが問題」」
相手に求めるもの……私達は〝相手に求める筋肉〟が問題なのだ。
我ら【ゼクディ】の面々は私を抜けて皆さん筋肉乙女。
相手がもやしでは困るのだ。
だって、ポッキリ折っちゃいそうだから。
「流石に、ピンヒールをぶっ刺したら死ぬかしら?」
「脳天にぶっ刺したら死にそうですね」
「デモ、魔王ネ」
「腐っても魔王、紳士的魔王、防御力は如何ほどか……。ああ、一発本気の拳を受け止めて欲しい」
「ワカリミガ深イネ。本気ノ、拳。受ケ止メタラ、惚レルネ」
「魔王様があのタイプということは、筋肉的な部下も中には?」
ふと思ったことを私が言うと、キャシーとナンシーは目を光らせた。
「〝筋肉レディ〟って言ってくる〝筋肉紳士〟が居たら……」
「「結婚」」
「ですよね」
「――俄然ヤル気デテキタネ!」
「魔王ありがとう! 君の登場は我らのハートを更に熱く滾らせた‼」
「「目指すは筋肉紳士! 魔族の筋肉紳士!!」」
「それで駄目なら、魔王をふたりで旦那にしちゃったら?」
「フタリデ」
「分け合う」
「「魔王」」
おっと? 犯罪めいてきたぞ?
大丈夫かな?
魔王泣いちゃわない?
でも、魔王もふたり相手にしたら勝ち目ないかもしれない?
「けど、魔王はアタシとタメを張るくらいには強かったわ。あの殺気は本物だった」
「そうですね……」
「筋肉的魅力ゼロも魔王といったところか」
「コレカラ、もやし、食ベラレソウヨ……」
「ナンシーの野菜嫌いも、彼のおかげで克服できそうね」
ミルクちゃん、その視点で行くの大好きです!
「さて、この前に雷ぶつけた冒険者だけど……アイテムなにか奪ってく?」
「人のものは盗んじゃ駄目ですよー」
「放置安定ネ」
「放っておけばそのうち起きるだろう」
「そうですね。先に進みましょう」
――色々あったけれど、魔王も去ったことだし先に進んだ私達一行。
幾つかの隠し扉を勘で当てたナンシーに、拍手喝采しつつ金品とアイテムを回収しつつ、下へと降りていく。
しかし、そこに待っていたのは――思いがけない人たちだった。




