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第34話 最後に交わした了解
「コーヒー、届きました。ありがとう。
今までのお手伝いは、これで終わりにします」
送信ボタンを押す。
指先から、ひゅっと力が抜けていく。
テーブルの上のスマホだけが、小さく光っていた。
しばらくして、画面に「既読」がついた。
心臓の鼓動だけが、無駄に大きく聞こえる。
たった二文字を待っているだけなのに、
数分が何倍にも引き伸ばされたみたいだった。
そのあとに届いたのは、
たった一言だけだった。
『了解。』
句読点まできっちり付いたその二文字が、
コーヒーの箱よりも重く感じた。
これで本当に終わるんだ、と頭では理解しているのに、
どこかで、まだ何か続きの言葉を
期待していた自分がいたことにも気づいてしまう。
自然消滅だけは、たしかに避けられた。
約束は、ギリギリのところで守られた。
それでも、守られた約束の形は、
想像していたものとは、少しだけ違っていた。




