26話 俺の起源
数十年前
俺は、何故かは知らないが、ふらふらと辺りを歩いていた、目的地はない、帰る場所もない、頼る人もいない、なにをすることも出来ない、そんな時、俺は声をかけられた
「貴方…大丈夫?」
腰に2本の刀をぶら下げた女だ、銃刀法はどうした?働けよ法律、まぁ、こんな状態じゃ法律も機能しないか、何たって今の世界は【異能】と言う力を手にした馬鹿どもが荒らしに荒らしまくり、魔境の様になっているのだから
「まだ子供だし……警察…もう全滅してるかしら…」
女はそう呟いている、いや俺はもう高校生だぞ?通っていた高校も消し飛んだが…
「俺の事を思ってくれてんのなら、俺に構わない事だな、じゃあな」
「いや、でも…あっ待って!」
そんな言葉が聞こえて来たが、無視だ
だが、俺が前を見るとそこにはクレーターの様な物が出来ていた
「………ほぇ…?」
そんな間抜けな声を出して、腰が抜けて尻餅を付いていた
「チッガキか……でも【異能】があるかどうかだな」
大男が俺の前に着地してくる、そして俺に手を伸ばして来たところで、その男の手が手首から消えていた
「は?え?」
男は困惑の表情を、浮かべている、そして2秒ほど俺と男の動きが止まって、男の首が消えた
「ふぅ、口にも無いやつね…」
後ろを見ると、刀を鞘に戻していた女の姿があった
「……これは…あんたが…?」
「私以外にあいつを殺す理由がある人がいるかしら?」
淡々と答える、そんな姿の女に俺は、何故か口角が釣り上がっていた
「お前…名前は?」
「お、お前って……時腹詩織よ」
「そうか、じゃあ詩織」
俺は一拍おき、言葉を続けた
「………俺を弟子にしてくれ…ください…」
と、詩織の答えは
「いいよ」
と、淡白な答えであった
「え?いや、もっとなんか葛藤とか…」
「ないね、私は私をこの世界に残しておきたいの」
俺は首を傾げる、一体どう言う意味だ…?詩織はそれを勘付いたのか
「私がこの世界にいたと言う証拠が欲しいの、貴方が弟子になってくれるのなら、それは私がこの世界にいた証拠になるじゃない?」
「………そうだな」
俺は納得した、詩織が何故この世界にいたと証明したいのかは知らないが進んで聞くべき事でもなかろう
「ところで、貴方の名前は?」
「あぁ、言ってなかったか…俺の名前は」
言いかけたところで頭痛がした、だが俺は言葉を紡いだ
「調停建だ」
こうして、俺は【最強の無能力者】時腹詩織の弟子となった
それから数年が経った
「師匠、なんで頑なに師匠の手料理を食べさせようとするんです?」
「グッ!?」
俺は飯を食べる手を置いて師匠に聞いてみた
「だ、だってまだ充分にはこの国は立て治ってないし?私だって無一文だし?」
「いや、もう充分でしょ、警察とかの組織は復活してるし、【異能】を利用した施設や仕事もできて来た」
「た、確かにそうだけど…」
「あと俺見ましたよ、懐にいつも30万くらい入ってるの」
「んっ!?!?」
どうやら図星のようだ、30万はハッタリだったんだがなぁ………
そんな何気ない会話をしていた時だった
「ハロー、時腹詩織さん?」
師匠がノータイムで刀を鞘から抜き、短い白銀の髪色で片目が白くもう片目が緑色の女の首元に刀が触れる
「おーおーおー、落ち着い…」
「黙って、貴女の名前は?」
師匠が睨みを利かせて聞く、すると女は
「信濃永沢よ、いや、離してお願い」
ふぅん、と師匠は呟き刀を女の首元から離す
「はぁっ、本当短期なんだから、さ本題よ」
「本題って言うのは?」
「私ね、【十人ノ原理他者】って言う10人の治安維持組織を作りたいの」
「そして、私に声がかかったって事ね」
「そゆことそゆこと〜」
なんか、俺は蚊帳の外な気がする…そんな事を考えてると
「ところでそこの少年は?」
「私の1人弟子よ」
「ふーん?」
そう言って永沢とやらは俺に歩み寄ってきた
「な、なんだよ」
そして、次の瞬間俺は思考するよりも早くに、模擬戦をする時に使っていたナイフで首を守った
「へぇ、反応出来るんだー…」
永沢の手刀の形をした手がナイフを粉砕した
「はっ!?」
さらに続け様に蹴りを腹にぶち込まれる、数メートルほど吹っ飛び地面に転がって止まった
すぐさま起き上がり、永沢を見据える
「じゃあ、これはテストだね」
そう永沢がぼやき、そして目の前から永沢が消えた、もうほぼ勘だった、俺は地面に伏せ永沢の腕の横払いを避ける、空気が揺らいだ気がした、いや空間が切断された……?
「バケモンかよっ!?」
俺は足払いをかけるが、永沢はバックステップで避けた
「貴方、【異能】は?」
攻撃の手を止め永沢が聞いてきた
「知らん、俺に【異能】があるかすら知らん」
「でも、それじゃ、アンフェアだよね〜」
そう永沢は呟き顎に手を当て、考えるような動作をする
「これなら………行けるかも…?」
そう永沢が呟いた、次の瞬間、俺の身体が宙に浮いた
「はっ!?!?」
「【異能】使ってみなよー、さもないと死ぬよ?」
クッソ!マズイマズイマズイ、どうすればどうすれば、生に執着はない…と言えば嘘になるが……
そんな事はどうでもいいんだ、【異能】を使わないと…!いや、俺に【異能】なんてあるのか?考えろ考えろ考えろ、なんとか生還する方法……
そして、俺は気づいた、何故地面に衝突しない?師匠は俺と永沢を交互に見ている、永沢は俺を見ている、落下を開始してから30秒は経過している、だがそのお陰で解決策が一つ浮かんだ、これなら…!
俺は、地面に向かって、いや永沢に向かって急降下し始めた
「まじかっ!?」
「おおマジだ!!」
俺は両腕を振り上げる、永沢は腕を上げ、受けの姿勢をとった、そして、俺は両腕を永沢の腕に叩きつけた
バキッ、となってはいけない音が鳴った気がした
だが、落下の衝撃を防いで地に足をつける事が出来た
「はー、マジか……すごいね詩織の弟子って子は」
「そうでしょ?自慢の弟子よ」
永沢の腕を見るとぶらんぶらんと脱力した腕の様な感じで腕をぶら下げてた
「折れてるね、建くんはピンピンしてるのに…」
どうやら、バキッと音が鳴ったのは永沢の方だったらしい、良かった
「合格かな」
永沢はそう言い、続ける
「おめでとう!君を【十人ノ原理他者】に加入してあげよう!合格だ!」
「あ、お断りで」
「なんでぇ!?!?」
そうして3時間ほど永沢と詩織の説得を受け、【十人ノ原理他者】に俺は入る事にした
だが、俺は知らない、この組織が世界の敵になるなんて事は




