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自分の価値を主張するための、ただ一つの権利  作者: Coppélia
He who has a why to live can bear almost any how.
23/24

He will always exchange truths for illusions

「〜♪」


こうして物語を書くために音楽を調べていることが増えた。以前の俺ならまずしないし、物語を書くということに、自分の気持ちの整理以外を求めていなかった。俺は、変わってしまった。


とても耳触りのよいビロードのように流れるどこか必死な甘い声に、そんな感傷的な気持ちになってしまう。


手のひらサイズの携帯電話が映し出す輝かしい栄光の時間は、遥か遠い映像。


このライブは今から15年前、2008年の映像。

2023年の今となっては「いない人」が、きらきらとファンたちに「夢」を見せ、また「愛」を返してもらっている。


先週発売になった「対だとみなされた」人の「最新アルバム」と「ギターマガジンの特集」を机に広げて、この「新しく」期間限定で解禁される「過去」映像を携帯で流し聞いている。


そして、机の上に置いてある卓上ミラーに映る俺の顔は「泣き苦笑い」となっていた。


1988年当時「彼」は予見した。斟酌して要約すれば「3年後にはバンドについて言わせない」と。それはまだ勝気な時間の「彼」らしい言葉であった。


「彼」は「売れること」が勝つことだと思っていた節がある。


「彼」の音楽ジャンルは「ロック」だが、1950年代半ばにこの音楽ジャンルが始まったとWikipediaにはある。


その語源からも「社会風刺」または手軽な「ラブソング」が想定されるその音楽はアングラであり、1980年前後は行き場のないエネルギーに溢れた若者向けであったことを示す資料が残っていた。日本はいわゆる「歌謡曲」全盛期。


「彼」はこのロックという大人からみれば、色物扱いな外来語を「かっこいい」「気持ちがいい」ととっつき易くすることで大衆が受け入れやすいものにした。


具体的に、言葉そのものは「気持ちよく踊れればいい」とし、テーマはあるが文意の明確さより耳触りを重視し、よくわからないが「かっこいい」という「感性」に訴え、気持ちがいいとみんなが感じるものを提示した。


これはいわゆる「歌謡曲」「演歌」が「感情」に訴えて、文字、すなわち「言葉」「左脳」から「受け取り手」の記憶と結びつけるのに対して、彼が「定義」した「ロック」とは「感性」に訴えて、聴覚からの「メロディ」「右脳」からの刺激が「受け取り手」の記録を想起させると考えられる。


簡単に言えば、それまで日本のポピュラー音楽は「小説」だった。彼は音楽を「絵」として提示した。


文字がわからなくても、意味がわからなくても、言葉が通じなくても、絵は誰にでも感覚的にわかる。社会もちょうど高度成長期の絶頂期。乱痴気騒ぎしたい社会情勢は、小難しい「モラル」など求めていなかった。


ロックの語源から「社会や世相」を映し出す「音楽」を提示し、見事に「彼」はスターダムにのしあがった。


その「彼」にしてみれば「売れる」ことは勝つことであり、それが「社会」に受け入れられた「証」であったのかもしれない。


そして「彼」は最初の「死」を迎える。

最初に「彼」を殺したのは「彼」の描いた絵に色をつけた人。


後年のデータから逆算すると「彼」の絵の具は寒色系で暖色系の色が少なかったと推察される。だから「彼」は探して求めた。カラフルな色をつけてくれる人を。そして「彼」は「彼ら」になり、そして殺された。


傍証として、ファンコミュニティサイトで期間限定で解禁された1988年当時のインタビューには、大衆受けすることができない時点で「負け犬」だと思っていたことが記載されていた。


「サイコパス」と調べてから1年以上経ったが、消せない文字を相変わらず封印している。


1987年に「彼ら」が「彼」になって、その5年後に「彼」は「彼ら」を超えた。数字、要は「CDの売り上げ枚数」として。「彼」は再び大衆に受け入れられた。


そして、予言通り、ほとんどの人は忘れ去った。

「彼ら」の関係を。

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