One must still have chaos in oneself to be able to give birth to a dancing star
画面の中央、上半分には力なく足の甲から引き摺られていく裸足と、その左右に硬そうな靴が映っていた。
2023年7月21日。令和5年7月21日。
「彼」の「Birthday」。アイコニックな日。
この日「彼」のファンクラブが開催した「映画上映」は、その前日の朝からTwitterのトレンドを占拠した。
そう一度もトレンドトップの座を譲ることなく、真夏の帝王の月が見せる夢のように48時間、彼は仮想空間を「染め上げた」。
もう、意味が分からない。
2016年から7年も過ぎている。ハッシュタグの並びは「作詞家様」である。公共放送にドームツアーと大変素晴らしいが、平成35年7月21日ではない。
朝から携帯を開けて、まだ寝ているのかと疑った俺は、どこまでも普通の感覚だと思う。
何度リロードしても変わらない画面に「目が覚めて携帯開けたら別の世界線だった件」と仕事に行く気がなくなるワードが浮かんでは消えた。溜息しか出ない。
大阪と東京の二か所、三回上映。
更に臨時レストランも開催。
そう、とっても行きたかった。だけど「にわかファン」が一人で「ガチファン」の集まりに向かう勇気がなかった。
楽しそうなTwitterを見ながら、後悔した。つながらない電話に、フランクフルトで見たニュース。この方のデータとはすれ違いばかり。
誰もが夢中になって手を伸ばす「女神様」を相変わらず遠くから見ている。
そっと、特徴的なクロスのピンバッチをもって。
「隠れキリシタン」と自己を定義した言葉は捨てる。
別に言わないだけで、聞かれたら答える予定ではいる。
聞かれたら。聞かれたことはない。
こっそり落ち込んでいたのだが、ファンコミュニティサイトが限定でライブ映像をストリーミング配信していた。
もう、耐えきれなかった。
楽しそうなファンたちの写真にコメント。
そう、ファンクラブですらない、ファンコミュニティサイト。だけど、どうしても見たかった。俺は耐えきれずに課金してしまった。
手のひらに収まるような「小さな画面」は映し出す。
苦悩のソースが掛かったベタ甘なラズベリーが美しいショートカクテルグラスで提供されている。赤いカウンターの上で、眩しいライトを浴びて。
楽しそうな「群衆」がこぞって掲げる。
採用されなかった別のモノクロームのポートレート。
「美しい彼」からの贈り物。
Man is the cruelest animal.




