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自分の価値を主張するための、ただ一つの権利  作者: Coppélia
The real world is much smaller than the imaginary.
20/24

We have art in order not to die of the truth.

大人しくドリアを食べるが量が多い。かなり厳しいが、ノンアルコールのカクテルを飲みながら完食する。


今、思ったがノンアルコールのカクテルって、ジュースってやつじゃないか?なんか、負けた気がする。でも、この雰囲気、嫌いじゃない。丁度、好きな曲が掛かったこともあり、にんまりしてしまう。


食べ終わったぐらいで、店員さんが話しかけてきた。

「来店記念のクリアファイルとポストカードです。あと店頭販売のグッズの案内とお水、置いておきますね。お皿お下げします」


早い。まあ、お客様は俺だけだし、店員さん達も話をしていたり緩やかな時間が流れていて、とても居心地がいい。


改めて店内を見渡すと、階段端に額装された衣装やバーカウンターの上にバカラグラスが飾られてきらきらした空間になっている。とりあえず分析しようとする思考は、現在お腹いっぱいで止まっている。


ゆっくりと残るカクテルに口をつける。


かなりはっきりとしたインパクト、というか情動、パッションをイメージさせる。「彼」のファーストシングルの名前のカクテル。


「彼」自身もこの時のテンションをなかなか越えられない、と言った曲。推定されるプロファイルや表化された情報から怒り、悲しみ、恐怖、後悔、責任などのあらゆる負の感情が最も強かった時間。だけど、その時間の、その想いで「彼」はこの曲を作り上げた。


この曲は「彼」の決意。「彼」の子供に合わせて作られた曲であり「彼」が「彼ら」と決別し「彼」になった曲。己を守る為に攻撃的で投げやりだった彼に、守るものができた「彼」の記録。


ベタつく様な甘い質感に、どこか苦い香りが混じり、炭酸でそれを飲ませる。確かに「彼」の曲だ。カクテル作った方、いいセンスだな。「彼」の曲をカクテルで再構築するとは尊敬する。


他のお客様が入ってきた。食べ終わったし、丁度いい。パラパラと冊子を巡りながら悩むが、まさかのランダムマグネット。もう一度挑戦するか迷う。いや、やめておこう。


「ご馳走様です」

「あ、テーブル会計なので、お席でお待ちください」


絶妙に恥ずかしい。

こういう場所に慣れていない感が酷い。


会計を済ませて、帰り際。

他のお客様のはしゃいでいる声が背中越しに聞こえてきた。


階段に手を伸ばすと店員さんに呼び止められた。


「あ、お店に初めて来られた方にお渡ししているピンバッジとサイトの送料無料になるコードです。ありがとうございました」

「こちらこそ、ご馳走様でした。美味しかったです。ありがとうございます」


今一度、階段を見れば様々な「彼」。


あの見たこともないカセットテープに記録された青年は、その限りある時間を強靭な意思で磨き続け、そして、こうして「聖域」を作り上げた。


「神」


彼は、一体、誰なのだろうか。

手の中には特徴的な十字架があしらわれたピンバッジ。


目に映る、赤い背景でバイクに跨り、右半分の顔が影になっている「彼」の「アイコン」。


まだ明るい地上に戻り「神話」の世界に想いを馳せた。

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