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第六章 光の向こう側8
二週間ぶりに仕事に復帰した明日歩は病名が付けられ、各方面に謝って歩くのが最初の仕事になった。
何もなかった様に明日歩は黙々と仕事を熟して行く。
不気味なほど沈黙を保ち、脇目も振らずに片っ端から来る仕事に没頭して行く明日歩を見ているうちに、中島と野村は歩を思い出していた。
「あいつもバカみたいに働いていたな」
バーのカウンター席、中島がポツリと呟く。
バーボンを一口飲んで顔を顰めた野村が、そんなこともあったなと頷く。
「これからどうすると思う。明日歩の奴?」
うーん。野村は唸って、またグラスを口に運ぶ。
「そっくりだな。親子って、こんなに似るもんなのか?」
野村が、とろんとした目で中島を見る。
「一人の女性を一途に愛しやがって。どんだけ、あいつの周りには綺麗な人がいると思っているんだ?」
「そうだ。美春の気持ちを弄びやがって」
「みはる? 美春って本気だったの?」
野村が頷く。
「俺も最初は冗談かと思っていたんだけど、本気だったみたいで、週刊誌に恋人なんて書かれて、あの喜びようたらなかった。切り抜きをファイルにして、お守りのように大事にしまってあるって、木綿子が言っていた」
「どうしたもんかな」
中島が頭を掻く。
「困った困った」
野村がおどける様に言うと、二人はグイッと同時に酒を煽る。




