表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
82/102

第六章 光の向こう側7

 大人たちのもくろみは、いつでも明日歩の意に反している。


 だからこの家が嫌いなんだ。オレは普通で良かったんだ。母さんが父さんのフィルムを見て、あんな顔をするから、こんなはずじゃなかった。今頃は採用試験にパスして、めでたく教壇に立っているはずだった。仕事が落ち着いて、お金が貯まったら、あずさにプロポーズをしようと思ったのに、どこでボタンを掛け違えたんだ? 

 明日歩は顔を手で覆う。

 何度迷っても、難問を突き付けられた時も、そばにはあずさが居てくれた。答えを導き出してくれたのはあずさだった。

 あずさなしでは考えられない、オレの人生なのに。


 「オレはさ、たくさんの人を護るよりも、たった一人の人を護るヒーローになりたかったんだ」

 冬の海、歩が嬉しそうに笑って言った言葉だ。

 「奈緒はオレの一番大切な人だから笑っていて欲しいんだ。いつかお前も分かるよ、オレの気持ちが。この人だけは泣かしたくないって」

 畜生。クソ親父。あんたのせいじゃないか。


 明日歩は起き上がり、全力疾走で自転車を走らせる。

 絶対にあきらめたくない。

 見慣れた風景が飛ぶように流れ、無我夢中で明日歩はあずさの家のチャイムを鳴らしていた。

 応対に出てきたのは、弟の孝文だった。

 思いっきり迷惑そうな声で何か用と言う。

 「あずさは、あずささんはいますか?」

 上ずった声で言う明日歩に、孝文は怪訝な顔を見せ、いませんと答えた。

 「そんな訳ない。学校にもバイト先にもいなかった。家にいるんだろ? 頼む、会わせてくれ。会って話さなければならないことがあるんだ」

 「帰ってくれ。姉はいない。迷惑だ。帰れよ」

 「頼む。本当に頼むから」

 家の中に戻ろうとする孝文の服を掴み、明日歩は必死に食い下がった。それでもふり払われ、閉まってしまったドアに向かい明日歩は大声を張り上げる。

 「あずさ、中にいるんだろ? 一分でいいから話しをさせてくれ」

 「姉ちゃんからはっきり言ってやらないと、あいつは辞めないよ。近所の人も気が付いているだろうし、警察沙汰にしたくないなら、自分で決着付けろよ。俺は知らないからな」

 戻って来た孝文がお手上げだと言って、ソファーに寝転がり、テレビのスイッチを入れる。

 『チョコチョコはーとチョコチップ。一人で食べてもおいしい。恋人と食べればもっとおいしい。はーとチョコチップ』

 軽快な音楽と、明日歩の弾けんばかりの笑顔の映像が流れ、孝文が目配せをすると、あずさはドアチェーンを掛けたまま、ドアを開けた。

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ