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転生ボーナスの精霊


 私が王宮に行く宣言をしてからすぐに王宮へ向かうことになった。おそらく昨日の時点で手筈を整えていたんだろう。


そんなわけで私は今馬車に揺られている。よくある悪役令嬢転生ものでは大体の馬車は乗り心地が悪いものだけれど今乗っている馬車は背もたれなどにたくさんのクッションが敷き詰められたような感じでそんなに乗り込まは悪くない。これもお父様とお母様の愛情の表れかな。


少しすると馬車が止まりお父様が王宮にたどり着いたのだと教えてくれる。ルードリェア公爵家から王宮って結構近いみたいだ。


それから馬車を降りてみるとそこはルードリェア公爵家の庭園ほどではないが美しい庭園が広がっていた。その奥に大きくて豪華な建物が見える。あれが王宮なのか。

 綺麗な庭園をしばらく進み建物の中へと入る。

入ってすぐのところで誰かが待っていて私とお父様とお母様に話しかけた。


「こんにちは、本日案内人のアルバートです。ルードリェア公爵令嬢の検査は国王陛下の玉座の間にて行われます。そこまでの案内と質問などがあれば承りますよ。」

「あの、今更なんですけど精霊の契約とかは神殿でやるんですよね。何故検査は玉座の間で行うんでしょうか?」

(まさかの国王陛下の玉座の間!?早速国王に会うことになるなんて!)


私が覚えていた小説の内容と合わせながら質問をすると少し驚いたような顔をしたアルバートさん。すぐに質問には答えてくれた。


「今回のルードリェア公爵令嬢の検査につきましては精霊に関するもので慎重にならないといけないため、表向きは国王陛下に謁見という形で検査することになります。」


つまりは公爵令嬢の名誉のためということだろう。貴族は必ず持っていなければならない精霊に何か異常があるなどと噂になってしまえば、公爵令嬢の名誉に傷がついてしまうということだ。


(めっちゃ配慮してくれてる…)


そんなこんなで国王陛下の玉座の間の扉の前まで着いてしまった。お父様とお母様は今回は検査を受けるだけだからマナーなんて気にしなくていいと言ってくれているが緊張するものは緊張する。


(国王だし…一番偉い人だし…)


扉の前でウジウジしていたらアルバートさんに強制的に扉を開けられ中にはいるしか選択肢がなくなった。

緊張しながらもゆっくりと足を進めていくと玉座の間の高いところにめちゃくちゃイケオジが座っていた。


「久しぶりだなシャーロット嬢。突然記憶喪失だと聞いてびっくりしたぞ!」


そう言ってイケオジがニカッと笑ったがイケオジの突然の笑顔は心臓に悪い。別におじ専とかでは決してないがめちゃくちゃ心臓に悪い。

なんて返答したらいいかとあわあわしているとお父様とお母様が


「ロッテは今記憶喪失なんだ。いきなりそんな親しげに話しかけられたらびっくりするだろう」

「そうですよロッテが驚いてますよ」


さらっとカバーしてくれた。ありがたい。


(それにしてもお父様とお母様と国王って仲がいいのかな?)

「まあ仕方ない…早速検査といくか。検査って言ってもな精霊との契約とやることは同じなんだ。」


 精霊との契約では聖物である水晶に手を当てると魂にあった精霊を召喚することができ精霊とお互いに契約をするといったものだったような気がする。

 おそらく検査というのは精霊を水晶で呼び出して精霊に変化がないか確認するだけだろう。

 本来契約をした瞬間から精霊は自由に呼び出せるものだが小説を読んだだけじゃ精霊の呼び出し方とかなんてものはわからない。それを一昨日お父様とお母様に伝えていたため検査ということになったと思われる。


「それじゃシャーロット嬢。ここの水晶に手を当ててくれるか?」


 そう言い国王が目の前の水晶を指差した。

そしてそっと私が水晶に触れると水晶が突然光だしその光が私をゆっくり包んだ。少し体が震えるような寒さを感じゆっくりと目を開けるとそこには銀の毛並みに鋭く青い目つきをした大きな狼が立っていた。


「この精霊は確実に前の風の上位精霊ではないな…」


国王が妙に神妙な面持ちで告げる。


「しかもこんな精霊どの文献でも見たことがありません。」


アルバートさんも驚いたように言う。

すると突然頭の中で響くような声がした。


『吾輩と契約するか?』

「え?」

『吾輩と契約をするかと問うているんだ。』

「え、えと…します!」


理由がわからなかったもののおそらくこういうのはよくある悪役令嬢転生ものの転生者ボーナスとやらだろう。受け取らない理由はない。

さっきの会話は脳内で声が聞こえていただけのため私の声だけが実際に発されていたものだった。そのためお父様やお母様達に不審がられていたので必死に説明した。


「あの、なんか頭に契約するか?みたいなのが聞こえてきてそれで」

「それでさっきのだったのか…契約したんだね」

「えっと、駄目だったんでしょうか?」

「いや今のは精霊との契約だろう。問題ないよ」


お父様との会話で少し安心する。二つ返事で契約すると言ったもののよく分かってなかったため安全なもので良かった。


 その時前にいた狼が犬が体についた水滴を振り払うかのように体を震わせた。

すると突然室内にいるのに吹雪が私達を襲う。お父様とお母様が私のことを抱きしめるかたちで庇ってくれしばらくするとその吹雪は止んだ。

何だったのかと思っていると狼の方から声がする。


「少し吾輩の力を見せてやるつもりだったが強すぎたようだな。」

(え、狼から声がしたんですけど!!いや、脳内での会話も大分おかしかったんだけど!精霊だからか!?というか、)

「さっきの貴方がやったの!?」

「ああ、自己紹介がてらな。吾輩の名はエドクレス」

「あらそうなの…じゃなくて自己紹介激しすぎるよ!」


思わずツッコミを入れていたがお父様とお母様達の様子が気になって見てみると呆然としたような顔をしていた。


「お父様?お母様?」


心配になって声をかけるとハッとしてお父様は私の頭を撫でた。


「今まで数々の精霊の文献を見てきましたが人の言葉をしゃべる精霊も吹雪を発生させる精霊も見たことがありません。精霊は四大元素のどれかに対応する者しかありませんから」


びっくり仰天って顔でアルバートさんが教えてくれる。国王は私が水晶に触れてエドクレスを召喚してからずっと神妙な面持ちで何かを考えている。


(今まで見たことないような精霊と契約できるのも転生者ボーナスってやつ!?)


私はもしかしてチートなのではとワクワクしていた。


その後エドクレスは私と契約したからと私の魂の中に入りアルバートさんに精霊について教えてもらうことになった。


お父様とお母様と国王は何かをコソコソと長い間話していたがまあ私が異例の精霊を呼び出してしまったのだから仕方がないだろう。


お父様とお母様がエドクレスの出した吹雪から私を抱きしめてまで庇ってくれたこと、あの時の温もりが忘れられないくらい優しく私の中に残っていた。


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