愛し方というのは愛されなければわからない
すごい可愛い美少女に転生しちゃった私は今めちゃくちゃ診察受けてます。
少し前に遡ると、鏡を見て驚いた様子を見てメイド服のというかメイドのカロンが人を呼びに行ったと思ったら父親と母親らしき人が慌てて様子を見に来た。
「ロッテ!様子がおかしいと聞いて来たよ!どうしたんだい?」
とりあえずいろんな転生者がやっているように私は記憶喪失を装うことにした。
「えっと…貴方達は誰ですか?」
「ロッテ、私たちが分からないの?貴方の母よ!ちょっと今すぐ医者を呼んできなさい!」
ということで何人もの医者に診てもらって一時的な記憶喪失だろうということになった。
(ロッテってシャーロットの愛称だろうけどロッテって聞くとお菓子を思い浮かべちゃうんだよね)
それから付きっきりで母親と父親が自己紹介や屋敷の案内などをしてくれた。
「ロッテ、記憶は戻りそうかい?」
「無理に思い出そうとはしなくてもいいのよ。でも貴方が私たちのことを覚えていないとすごくさみしいわ…」
両親が泣きながら自分のことだけを見て心配してくれる。
(これが愛されているってことなのかな…こんな気持ち初めてかもしれない)
自分が愛されているという嬉しさからどんどん涙がこぼれていく。今までの人生で感じたことのない温かい感情が自分に向けられて初めて自分が愛されていると感じることができた気がした。私が涙を流せば流すほど両親は慌てながらハンカチで涙を優しくぬぐってくれる。周りの空気が温かく感じる。
(皆が私を愛してくれるこの優しい時間が続いたらいいな。)
屋敷を一通り見終わった後私にも一人になって考えたりする時間が必要なのではないかと両親は私の部屋まで送ってくれた。
一人になったところで考える、これはいわゆる転生ものであると。こういうのは大体元のゲームなり小説なりを知っていてその世界のキャラクターに転生してしまうものだけど私は見た覚えがなかった。何かあったような気がすると記憶をひねり出してみたところ普通に思い出した。
この世界は前に読んだ小説の『婚約破棄された私の素晴らしい日常』であらすじの内容はこうである。嘘の悪い噂を流され婚約破棄された子爵令嬢レアノア・ラルドットはそれを理由に家を追い出されてしまう。そこでレアノアは起業し成功を収めヒーローと仲良く暮らす話だ。
この小説でのシャーロット・ルードリェアは両親に甘やかされ育ち周囲の人間に恐怖を与え、王太子という婚約者がいる身にも関わらずヒーローに恋をしてつきまといヒロインをいじめる悪役令嬢。
これはもしかしてあの悪役令嬢転生というものをしてしまったのではないだろうか。
しかも両親に愛されているし、周りの人だって今まで怖いことばかりしてた人が優しいことをするようになったらすぐ愛されるとまではいかなくても好感を持ってもらいやすい、理想的な悪役令嬢転生かもしれない。
(そしたら今度こそ皆に愛されて私も皆を愛せるようになるかもしれない…!)
今まで愛という感情を向けられることがなかったため愛の向け方が分からなかった。でも、これから物語で見るような心を開き合える人ができたり愛してもらえたりすれば私も人を愛せるようになるかもしれない、そう考えるとこれからの人生輝きに満ちていた。
しばらくして夕食の時間になってメイドのカロンに連れられ食堂に着いた。そこでは両親が笑顔で迎えてくれ美味しそうな食事がたくさん広がっている。
早速ナイフとフォークを手に取り目の前の食事を食べすすめる。しばらく食べていた時ふと両親が食べる姿が目にはいった。美しい所作で丁寧に食べる両親と比べて私はナイフで肉を切るのさえおぼつかない美しいとは言えない所作だった。それが恥ずかしく感じマナーの講師をつけてほしいと両親に頼むことにする。
「あの、記憶喪失でマナーが不安定なのでマナーの講師をつけてほしいです。あと家庭教師とかも…」
「分かったよ。やっぱりロッテは記憶喪失でも偉いね」
お父様は簡単に講師と家庭教師について了承してくれた。マナーの講師のついでによく悪役令嬢転生小説に出てくる家庭教師も頼んでみたがやっぱりワクワクする。
その後はお父様とお母様に昔話などを聞かせてもらいながら食事をしたが全く覚えてないと違和感があるため多少は話を合わせなくてはならず大変だったが自分を絶対的に愛してくれる二人を見ると温かい気持ちが湧いてきてだんだん愛が何なのかわかってきたような気がする。
自室に戻って一人になってからも両親の笑顔が脳裏から消えなかった。これは二人のことを私が愛している証拠にほかならないのではと思わずニヤケが漏れてしまった。




