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転生したら絶世の美少女だった件


 私は昔からあまり人に愛されない人生だったと思う。

親には別に虐待されていたわけではなかったけれどもこれまでの人生で数えるほどしか親に笑顔を向けられてこなかった。温かい家庭というものや優しい感情というものに触れずただ機械的に毎日を過ごしていた。親からの無条件の愛というものには触れずに生きてきた。

 それが原因かは不明だが友達との触れ合い方なんてこれっぽっちも分からず幼少期は人気者の同級生を眺め本来親とかから教えてもらうであろう人との親交の深め方を学んでいた。


 高校生くらいになると人との触れ合い方をマスターしたと言ってもよいくらいには常に周りには人がいた。

でも皆と仲良くなっているけれどお互いに一歩引いていて気を使いながら話をして中身のない会話を繰り返す。

 皆といるのにまるで一人みたいだった。

多分皆はクラス内で大きなグループに所属している自分が欲しかっただけなのかもしれない。


皆の心はそれで満たされたのかもしれないけれど、私の心は満たされなかった。


 大学に入っても人との付き合い方は変わらなかった。そして社会人になって当たり障りのない会話を繰り返し人に囲まれることでどんどん己の仮面が分厚くなり人と私の間に大きな壁が少しずつできていくのを感じていた。


 そんな私にも自分の愛着欲求ともいえるこの心を一時的にも満たしてくれるものがあった。


それが『悪役令嬢転生小説』だ。


 だいたいの悪役令嬢は親に大切に育てられ溢れんばかりの愛情を向けられている。周囲の人間は悪役令嬢のことを必要以上に嫌ってはいるものの、悪役令嬢は元が性格破綻者。故にそれが急に少し優しくなっただけでも特別なもののように見られギャップで愛されやすい。


(私も悪役令嬢に転生したら誰からも愛されるようになるのかな…)


布団で転がりながらいろんな悪役令嬢転生小説を読み漁っていた時ふとそんなことを考えてしまった。別に悲しいわけでもないのに頬を伝って涙が流れるのを肌で感じ心が虚しくなる。

 スマホに映る悪役令嬢転生小説の表紙には笑顔で笑う悪役令嬢に転生した子のイラストが。


(私もこんなふうに…)


スマホをスクロールしていた右手で思わずスマホの画面に触れて思いを馳せた。その時だった、スマホが光りだしたのは。


 あまりにも眩しすぎる光に目を瞑ったが瞼を越えて入ってくる光に何があったのか状況を把握すべく勇気を振り絞って目を開けてみた。


 そこにはさっきまで小説を読んでいた薄暗い部屋とは違いとても明るく、布団にいたはずが、天蓋のついた上品なベットに寝ていた。何がどうなったのが全く見当もつかず慌てて豪華なベットから降り部屋の状態を確認するも白を基調としたお姫様みたいな部屋であることしか分からず、部屋についていたバルコニーから外を覗いてみても美しい庭園が広がっているだけで現在地が全く把握出来なかった。


 分かったのはここは全く知らない場所ということだけ。


 そんな中小さなノックの音が聞こえる。


「は、はい!」


予想外の誰かの来訪に思わず反射で返事をしてしまうと失礼しますとの声とともに扉を開けて入ってきた人はメイド服を着ていた。


(メイド!?コスプレなのかな…)


私が困惑するのをよそにメイド服を着た人は水の入った洗面器を置いて告げる。


「おはようございます、お嬢様。本日のドレスはいかがいたしましょうか。春らしい暖かい風が吹き始めまして、春の花が蕾から花開き始めました。なので柔らかい若葉色のドレスにこちらの葉をモチーフにした髪飾りを合わせるのはいかがでしょう?」


葉っぱの髪飾りを差し出されながらメイド服の人に聞かれるも意味がわからない。


(お嬢様?私が…?この人何でなんてこともないように話してるの!?)


そして思い切ってメイド服の人に尋ねてみる。


「あなたは誰?というかここはどこなの?お嬢様って何!?」


メイド服の人は心底驚いたような顔をして慌てだす。


「何を言ってらっしゃるのですかお嬢様。私はずっとお嬢様に仕えてきたカロンですよ。ここはルードリェア公爵家でお嬢様はシャーロット・ルードリェアお嬢様ではないですか!」

(え、なにを…)


驚いたが急いで鏡を探すと後ろに大きな姿見があった。そしてそこに映った姿を見てまた驚く。


 そこには腰まで届く桃色の美しく輝いている髪に赤く煌めく瞳。

絶世の美少女といっても過言ではない少女が映っていたのだ。


(これってもしかして…私転生しちゃったってこと!?)


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