愛される悪役令嬢と愛されない私
その後公爵夫人とのシャーロットごっこを行ったり、図書館でシャーロットに関する手がかりを探しているうちに夜会の日が訪れた。
この日私はカロン含める数人の侍女達に身体の隅々まで磨き上げられ、ヘアセットは侍女達が悩みに悩んだ銀の葉のリーフヘッドドレスが飾られたハーフアップに。ドレスはふんわりとした透け感のある白の上品なものを身に纏った。
そして鏡を見て改めて思う。
(シャーロットって…やっぱりめっちゃ美人だな)
長くてストレートの桃色の髪に紅色の瞳、そして気品のある洗練された顔立ち。
これはあまり悪役令嬢顔というものではないのではなかろうか。大体の悪役令嬢は明らかに気の強くて悪辣そうな顔にされることが殆どなのに何故だろう。シャーロットは真顔ならば少し気が強そうには見えるが、いつも微笑んでいたのならば悪役令嬢とは程遠いイメージになりそうなものだが。
私は少し違和感を感じていたがそろそろ夜会のため馬車に乗らねばならぬ時間のため急いで向かうことにした。
馬車に乗ってから考える。公爵やエドリックの心配を振り切ってきてしまった為今回は一人だ。でも今日の夜会の任務は公爵閣下と接触することのみ。ならば問題ないだろうと意気込む。
小説の中の公爵閣下はヒロイン以外には冷たく戦場ではいつも返り血にまみれているのに、その赤の中で公爵閣下の瞳の青が鋭く光り引きずり込まれそうになることから『戦場の深海』という二つ名までついている恐ろしい人物だと書かれていた。
ヒロインには優しいけどその他の人にはめちゃくちゃ怖い。そんな人物に接触するのは怖すぎるけど私も作戦を考えてきたしなんとかなるだろうと己に喝を入れる。
しかしここでふと私は思った。私は何故こんなに怖い人と接触しようと、何のためにこんなことをしているのだろうと。
分かっている、私がシャーロットの体に入ったことでシャーロットの人生や家庭もろとも壊してしまったことなんて。でも私だって意図してシャーロットの体に入った訳では無いし、何なら巻き込まれた被害者だろう。なのに何故こんなに自責の念に駆られ、必死にシャーロットを取り戻そうとしてるのだろうか。
やはり公爵や公爵夫人からの愛を諦めきらないから?
初めはそれだっただろうけど今はそれもあるが別の物もある気がする。
少し考えてそして思い当たったのはシャーロットの日記だった。
シャーロットの日記を読んでシャーロットはただの悪役令嬢じゃなくて、自分の意見を出すのが苦手で不慣れながらもお父さんとお母さんが大好きだから社交を頑張ってて、周りに頼るのが苦手な心が優しくて使用人からも沢山の人から愛されるただの女の子ってことが分かってしまった。
そんなシャーロットは誰にも愛されなかった私なんかより生きる価値があるように思えてしまう。
もしシャーロットを元の体に戻して私が何処にも行けなくなって消えたとしても私はシャーロットを元の体に戻したいと思う。そしたら周りの色んな人たちがシャーロットの為を思ってくれてるって事がシャーロットも分かると思うから。
そんなことを考えていたら馬車がガタンと少し揺れ動きが止まった。どうやら今回の夜会の会場に着いたようだ。
馬車を降りゆっくりと夜会が行われている屋敷へ近づき足を踏み入れる。
そこは絢爛豪華な内装に多くの人が話し声と音楽が響く、まるで夜の魔界のようだった。
数多の人がいる中で青い瞳の青年は一際目立ち人々の視線を奪っていた。




