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噂は鵜呑みにしたり呑まれることがあったり


 シャーロットの日記を読み終えた後公爵は呆然と涙を流していた。感情が追いつかないのかもしれない。愛娘が悪女なんて呼ばれていたことを本当に知らなかったのだろう。国王は噂を公爵に伝えず王太子と婚約させることで静かに噂を沈静化させようとしたが失敗したというところか。

 公爵としてはずっと溢れんばかりの愛を向けてきたがそれが仇になりシャーロットにとって圧力となってしまった。これを受け入れるには時間が必要だろう、一人にしてやるべきだ。


 そして私はやらねばならぬことがあるとシャーロットの日記を手に馬車に乗り王宮へ向かった。


そして門の外でアルバートさんを見つけて声をかける。


「あの王太子殿下はいま何処にいますか?」

「殿下なら陛下の執務室だと思いますよ」

「ありがとうございます。」


返事を聞いたらすぐに私は国王の執務室へ向かった。いつもならノックする扉を勢いよく開け、一直線にエドリックの前に向かう。

驚いている国王とエドリック。


「どうしたんだい?スイ、そんなに急いで何の…」


エドリックの言葉がまだ途中にも関わらず私はエドリックの頬に平手打ちした。


小気味よい音が部屋に鳴り響いた。

エドリックは大きく目を見開いて私が打った方の頬を両手で撫でながら、意味がわからないといった顔で私を見つめる。


数秒遅れで国王が反応し声を張り上げた。


「何をするんだ!!」


そんな国王のもとに私はスタスタと向かい国王の目の前の机の上にシャーロットの日記を置いた。


「私シャーロットの日記を読んだんです。それまで殿下とシャーロットは仲が悪いけど人前でだけ仲の良いふりをしてる婚約者だと思ってました。でも違いましたね。婚約者の噂を鵜呑みにして表向きだけ婚約者の契約を持ちかけるクソ野郎だってよくわかりました。」


それを聞いて国王は急いで机の上の日記を開いた。その間エドリックはずっと俯いて黙っていた。


国王が日記に目を通し終えると呟く。


「なんだこれは…」


そしてエドリックの方に視線を移した。


「どういうことだエドリック!」


国王の声を聞いたエドリックは顔を上げるとにこりと笑った。


「どういうこととは…一体何のことでしょうか?」

「とぼけるな!シャーロット嬢の噂を鵜呑みにして契約婚約を持ちかけたんだろ!」

「それの何が悪いんですか?私が欲しいのはルードリェア公爵家の後ろ盾、シャーロットが欲しいのは王家の血でしょう?だったらわざわざ悪女と婚約者らしいこと送る必要ないじゃないですか。」


ずっと黙って聞いてた私だったがエドリックの言いようにまた怒りが込み上げてきた。


「王太子殿下は、シャーロットが王家の血が欲しいなんていつ聞いたんですか?」

「いつって…そうじゃなかったら何のために婚約したんだ。」


すると国王が口を開く。


「私がシャーロット嬢の嘘の悪い噂を払拭しようと勧めた婚約だったんだ。」


驚いてたじろぐエドリックだがまだ何か言いたいことがあるようだ。


「シャーロットの悪い噂は嘘ではないでしょう?シャーロットは実際悪女だったんだから。」

「シャーロットが悪女であるところを何処かで見たんですか?」

「それは、色んな令嬢がシャーロットが脅迫したりしてくると…それにシャーロットが怖くて社交界に出てこれなくなった令嬢もいるらしいし…」


たどたどしく話すエドリック。


「では実際に誰がシャーロットの被害にあったと言うんですか?」

「聞いた話だから詳しくは…」

「詳しくも知らないのにシャーロットが悪女であると考えているんですね。日記を読むと勝手に取り巻きを名乗る令嬢達が公爵令嬢の名前を使い他の令嬢達を牽制していると書かれていましたが。被害に遭われた令嬢はシャーロットからの脅迫などではなくその自称取り巻きからの勝手な脅迫だったのでは?」


私が詰め寄るとエドリックはまた俯いてしまった。


「王太子殿下、皆が話してればそれは全て真実と言えるでしょうか。確かに噂の中には真実もありますが、人によって面白おかしく話を盛られたり、存在しない話をさも真実かのように語られるのも噂です。本当の姿を見て真相を見極めるのも王になる者に必要なことではないですか?」


 小説が始まる時のエドリックの年齢は16歳。今の年齢は14から16歳ってところだろう。いくら幼い頃からの王になるための英才教育を受けていたとしてもまだ子供。噂に流される歳でもあるし、大人でも噂を鵜呑みにする人は沢山いる。

 それでもまずは本当の姿を見て自分はどう思うか噂通りなのか判断してほしいと思う。


 エドリックは反省した様子に見えたからシャーロットが戻ってきたとしてもまた同じ様に接することはないだろう。

しかし一つ気になることがあった。エドリックはシャーロットのことをよく思っていなかった、にも関わらず何故シャーロットを取り戻すため奔走する私達に協力していたのだろうか。

それについて問うとエドリックはこう答えた。


「あの時言った面白そうってのも本当だけどずっと気になってたんだ。なんで悪女っていう噂の令嬢を父上が可愛がっているのかって…」

「なら答えはシャーロットを取り戻してからシャーロットを自分の目で見てみてください。」

「うん…」


一言そう返事をしたエドリックは少し涙ぐんでいた。


すると国王が私の横にコソッと近づき、


「ありがとうね」


と礼を言った。


            ■


 その後国王とエドリックから最近開かれるパーティーの中で公爵閣下が出席するものを教えてもらい一番直近である3日後の夜会に王室のコネで出席できるようにしてもらった。マナーに関してはシャーロットは基本微笑むだけで会話を積極的に行っていたわけではなさそうだし問題はないだろう。


そうして成果をルードリェア公爵家に持って帰ると公爵は少し気力が回復したようで私に話しかける。


「昔のロッテに対してできなかったことは沢山あった。でも今は今私にできることをしなければならないと考えることができたよ。取りあえず家庭教師は追い出した。」

「さすが公爵様、仕事が早くて何よりです。」


そうして私と公爵は握手を交わしてにやりと笑いあった。


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