世界と世界を繋げる通路と小説の噛み合わない点について
私の世界でこの世界のことを異世界ロマンス小説として書かれていたことや、その小説の主なストーリー。そしてシャーロットが悪役令嬢であることなどを皆に告げた。
「そして私の世界には悪役令嬢転生というジャンルの小説が存在していたんです。その名の通り悪役令嬢に転生する話なんですけど、私は最初本当に小説の悪役令嬢に転生したんだと嬉しくなったんです。でも小説の世界だと思っていたものが現実であることに気づきました。」
「でもそうなるとおかしいことがあるんです。ここの世界と私のいた世界はどちらも現実の世界です。同じ様に時間も進みます。つまり何らかによって本来繋がるはずのない世界と世界が繋がり私がシャーロットの中に入ってしまったということです。」
私が気になる点を説明していると公爵が少し口を挟んだ。
「例えば世界と世界を繋ぐ通路のようなものがあるとすればロッテはそこにいるか迷い込んでいるか君の世界にいるってことになるのか?」
「そうかもしれません。しかしどちらにせよ世界をどうこうするのは人知を超えた力。シャーロットを取り戻すには同じく人知を超えた力が必要になるかもしれないです。」
全員が顔を暗くした。人知を超えた力を用意するのは簡単ではない。
「取り戻すにはとにかく情報が必要です。私にも資料を見せてもらえますか?」
そう言うと国王が資料を手渡してくれたのでそれを見る。エドリックも私の右肩から覗き込んでいる。
軽く見た感じだと内容は主に今までの異界の魂に乗っ取られた事象の記録から書かれた論文だった。
論文を抜粋して見ると、
『異界の魂の様子は体を乗っ取ってからどんどん精神を病んでいるようだ。どの異界の魂も最終的には意思疎通も図れぬほどには精神が崩壊していく。』
『異界の魂は乗っ取る意思はなく何故か気づいたら体が変わっていたという主張ばかりするという文献も発見した。異界の魂が書き表す言語には我々が読めない言語があるがそれに共通性はない。そして異界の魂にはこちらの世界の文字が読めるらしい。』
『異界の魂が体を乗っ取った日付に何か自然や世界に何か変化があったわけではない為、世界の何らかの現象の拍子に異界の魂が呼ばれるという説は否定された。』
『私はこう結論づける。異界の魂は何者かとてつもない力を持った者が意図的に起こす現象であると。』
「これって最初の精神が不安定になってるみたいな話は見知らぬ世界に放り出されてそうなってしまったってことなのか?」
エドリックが首を傾げているところに私が言葉を返す。
「それは多分この人たちがこの世界のことを何も知らなかったからじゃないですか?後の方に言語に共通性はないってありますよね。多分この人たち全員違う世界から来たんだと思います。」
私の言葉にエドリックだけではなく公爵や国王も驚く。
「私はこの世界のことを事前に知っていたからあまり慌てませんでした。でもこの人達はその小説を読んだことないかもしれないしその小説が存在しない世界で暮らしていたかもしれません。そしておそらく前の異界の魂の言語を見ても後の異界の魂の方は何語なのかすら判断できなかったのでしょう。つまりそういうことかと思います。」
「つまりとてつもない力を持つ何者かが色んな世界の者を連れてきているということだろうか…」
神妙な顔で国王が話をまとめる。
そこで公爵が私に質問をした。
「小説の内容を詳しく教えてもらってもいいかい?」
「分かりました。えっと…ヒロイン、つまり主人公のレアノア・ラルドットはどの精霊とも契約出来なくて親から虐待され周りから見下されてたんです。そんな中で悪い噂を流され婚約者から噂を理由に別の人と婚約すると婚約破棄されちゃって…挙句家門を追い出されるんですが、ヒロインのおばあちゃんの形見の品を担保に融資を受けてレストランを開いたら繁盛してビジネスパートナーとしてサーナルド公爵閣下と関係を築きます。」
「そんな時その、悪役令嬢のシャーロットが公爵閣下を好いているという理由でレアノアをいじめてくるんです。そして精霊がいないことを馬鹿にされるんですが実はレアノアはどんな精霊とも契約できる人間で最終的に伝説級の精霊と契約して全員を圧倒してレアノアは公爵閣下と結ばれます。そしてレアノアをいじめ遂には手を掛けようととした罪で処刑されます。」
私の話をしばらく聞き続けていた皆はいつの間にか眉間にしわを寄せている。
「その話は少しおかしい。ラルドット子爵家には確かにその名前のご令嬢がいるが両親は子供のことをとても大切にしている。そしてシャーロットはルードリェア公爵家の人間だ。王族の暗殺や国家転覆などを企まない限り処刑されることはない。その物語にはあり得ないように思える点があるんだ。」
最初に不審なところを話しだした国王から次々に公爵やエドリックも疑問点を指摘し出す。
「形見の品だけでは家門を追放された令嬢が融資を受けることは不可能だよ。しかも社交界であまり良い噂の無かった令嬢なら尚更だね。」
エドリックが冷静に説明する。
「そもそもロッテは貴族令嬢というものに誇りを持っていた。婚約関係にある王太子殿下がいらっしゃるにも関わらず表立って他の男性に好意を寄せる様子を見せたりはしないだろう。」
公爵があり得ないといった様子で首を横に振る。
「どうやら小説の内容はこの世界の人物や世界観などをモチーフにしているだけでこの世界で起きることなどを書いているわけではないみたいですね。」
私がまとめるように話す。すると国王が神妙そうに口を開いた。
「だが他の世界でこちらの世界をモチーフとした娯楽小説が存在するのは何かの意味がありそうだ」
それからお互いに持ってる情報を共有しあったがこれ以上はあまりよい収穫は得られなかった。
一旦ルードリェア公爵家に戻ることになりまた何か情報が分かり次第いつでも執務室へ来てもいいとのことだ。
(国王の政務とかは大丈夫なのかな?)
若干国が心配になりつつもシャーロットのための情報を見つけるのが先なので気にしないことにした。




