思わずそばにいる似たものに己を重ねてもそれは己のものではない
ということで王宮の本邸。つまり国王のいるところに行くことにしたのだ。公爵がつけた監視は一旦離宮で待ってもらって本邸には私とエドリックだけで行くことになった。
本来なら本邸に入るには国王の許可が必要だけどエドリックが隣にいる為パス。
その後も難なく国王のいる執務室の部屋の前までたどり着くことができた。前回国王にあった玉座の間と違い執務室は国王が政務をする場所のため限られた人しかはいることしかできない。
「ほんとに来ちゃったけど大丈夫なの?父上はスイのこと知ってるんだよね?」
エドリックに心配そうに尋ねられるも私は冷静に答える。
「問題ありません。国王陛下には資料を見せて頂くだけですから。」
そうしてそのまま執務室の前にいる護衛に話しかける。
「国王陛下に用件があってまいりました。シャーロット・ルードリェアとその婚約者である王太子殿下が来ました、って伝えてもらえますか?」
護衛はそのまま執務室へと入る。
しばらく待つと扉からは久しぶりに会ったアルバートさんが出てきて、中へと案内してくれる。
執務室には国王が机と向き合って座っていた。
そしてその隣の机には公爵が私の姿を見て目を見開いていた。
「…なんで君が!?」
まあ公爵がここにいる理由は大体想像がつく。
シャーロットの名誉のため堂々と異界の魂の伝承について調べることはできない。しかし王宮なら資料は沢山あるし外部の人間に情報も漏れることもない。調べるにはもってこいの場所だ。
「私は資料を見せて頂きたくまいりました。陛下も私がシャーロットでないことはご存知なんでしょう?なら、異界の魂である私が直接資料を見れば分かることがあるかと思いまして。」
私が説明をしていると国王が喉を鳴らせて笑っていた。
「前回会ったときは能天気な娘だと思っていたんだが、随分変わったんだな。エドリックまで味方につけて…。一体何があった?」
国王がエドリックに軽く目をやったあと私に威圧感の籠もった視線を向けてきた。
「理解しただけですよシャーロットという一人の人間を奪ったという事を。」
それだけ言って私は下を向く。すると国王がまた笑って私に向かって喋る。
「よかったよ、君が一つの愛に溢れた家庭を壊したことを理解してくれて。」
そして鋭く睨んだ後にこりと国王は笑った。
「資料が見たいんだったんだよな。じゃあ、見せてあげよう!」
「「え!?」」
公爵もエドリックも資料については国王に反対されるものだと思っていたようで思わずといった様子で声を出してしまう。
私は少し沈黙していると国王がどうした?と私に声をかける。
「何故そんな簡単に資料を見せるのかと気になっているのか?」
「いえ、理由は何となく分かっていますから。」
そう話すと国王が驚いたように私に問う。
「分かっているとはどういうことだ…?」
「陛下はルードリェア公爵家の家庭と己の家庭を重ねて見ていたのではないですか?」
今までの話の中で王妃が出てくることがなかった。小説の中でも同じだ。なぜ王妃の話を一回も聞かないのか、それはもう王妃がこの世にいないからではないだろうか。
そして精霊検査の時の様子から見るに公爵と国王は仲が良いのだろう。そしてシャーロットのことも可愛がっていた。
愛溢れる公爵家の家庭を妻の生きていた頃の自分の家庭と重ねて大切にしていたのではないだろうか。
「だから温かいルードリェア公爵家が私という異界の魂によって壊されたことを悲しんでいるんじゃないですか?」
「そして公爵様と同じ様に壊した本人の力を借りてでもシャーロットを、温かい公爵家の家庭を取り戻そうとしている」
最初はルードリェア公爵家という臣下を手放すのが惜しいから手を尽くしてるのかと思っていた。でも今日の国王の様子を見てれば公爵家を大切に思っていたことが分かる。
「そういうことですよね…だから、だから私がシャーロットを探します!だから皆さん協力をしてください!」
私がそこにいる公爵と国王とエドリックに頭を下げると最初に口を開いたのはエドリックだった。
「私はもともと君に協力をしているからね。」
そう言った後チラリとエドリックは公爵と国王の方を見る。
「異界の魂張本人であるか君が見たらわかる資料があるかもしれないというのはわかるが全て君と協力する程君が何かできるのか?」
そう公爵が私に尋ねた。そして国王もそれに頷く。
私は少し言葉を詰まらせながらまだ言っていなかったことを話すことにした。
「私はこの世界を小説で読んだことがあります。」




