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Enjoy your stay.  作者: ゆう
case.6
49/52

6-9

「謝謝」

「休日の昼から呼び出したにしちゃマシなデートだったろ?」


 ハイウェイのネオンがアビエーターのレンズを不規則に跨ぎ、街の明かりを背に、古びたアパートの駐車場へ車を滑り込ませた。


「道具に頼るのは感心しません、美国人の悪い癖です」

「テクノロジーは人の力だろ」


 ベンは答えの代わりに鼻を鳴らし、EVPリーダーをグローブボックスにほうり込む。


「謝謝。 では、月曜日に」


 ビーリンは助手席のドアを閉めると、ベンはひらひらと手を振って見せ、日本車は夜の街へと消えるように去っていった。

 静まり返ったアパートの階段を上り、鍵を開けて部屋に入ると、濃厚な生活の気配が彼女を迎える。


「お帰り……」

「……我回來了」


 僵屍(キョンシー)のような顔でソファーに横たわる同居人に挨拶し、スーパーの袋をテーブルに広げる。


「……何それ、すっごいいい匂い」


 ソファーの主が、這いずるようにしてテーブルへ這い寄ってきた。

 ビーリンが買ってきた馬告の袋を開けると、柑橘めいた爽やかな辛みが、殺風景な

部屋の空気を一瞬で塗り替える。


「その袋が陳皮と桂皮、良姜、丁香、五香粉ではどうしても香りがコントロールできませんから……そちらは……」


 ビーリンがメイジーに視線を向けて眉をひそめた。


「獣の臭いですね」

「わかる?」


 メイジーは真顔で言った後、ドサッとソファーに帰った。


「……夕食を準備します。簡単なものですが」

「ルンバは?」

「誰にでも休日は必要です」

「あっ、そ……」


 天井を見つめたままそう言ったメイジーをしり目に、ビーリンは冷蔵庫を開いた。


「招魂師ですか」

「あたり」


 包丁の音を聞きながら、メイジーは魂が抜けたように一日を振り返っていた。

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