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バックミラーに映る賑わいが、遠くで西海岸の昼の日差しに溶けていくのが見える。
異郷の地で、かつて誰かが建てた小さな廟。
そういった小さなの光がこの国ではひっそりと消え去っていく。
「……领班 、どこに向かっているんですか?」
「せっかくだ、昼飯、食ってくだろ?」
「この辺に旨い広東料理屋があるんだ、食は広州にありだろ?」
「正しくは生在蘇州、穿在杭州、食在広州、死在柳州。です……寄り道するのであれば遠回りを。食後に99 Ranch Market に寄っていただけますか」
「冷凍餃子でも買うのか?」
ベンがアビエーター越しにルームミラーを見つめると、美鈴は窓の外の退屈なファストフードの看板を見つめたまま応じる。
「香辛料を買います。馬告の取り扱いがあるようですので」
「そいつは重畳だな。想像もつかないが、食い物か?」
「マーコウ?」
少女がビーリンに無邪気な好奇心丸出しの声で尋ねた。
「マーコウって……山椒のこと? あの、すごいスパイシーでピリッとするやつ?」
「……四川山椒は花椒、台湾のものは馬告。どちらも料理に使えば美味です」
「うわぁ、私も食べたい! どんな味がするの? チリペッパーみたいに辛い? それとも麻なの?」
「……味よりまずは香りですよ」
「嗅いでみたい!」
ビーリンが苦笑しながら首を振ると、少女は身を乗り出すと座席の上でぷんぷんと頬を膨らませ、ベンは軽く笑った。
「ガキがまたひとり増えたな」
「そう言わないでください、領班。もう一人の子供は恐らくまだ夢の中です」
「ははっ、言うねぇ」
ベンは笑いながらウィンカーを点灯させる。
「生憎、四川料理じゃないが、似たようなもんだろ」
ベンは片手で器用にハンドルを回し、国道から寂れた商業区画へと車を滑り込ませた。
色あせたグリーンのオーニングに、大きく『香江酒家』と書かれた文字が、昼の強い光に晒されている。
車が停まると、少女は窓にぴったりと顔を寄せ、物珍しそうにプラスチック製のチープな看板を見つめた。
ビーリンはチラリと視線をやり、ルームミラー越しにベンと視線を合わせた。
その横顔は、ただの幼い子供のようでもある。
「……領班、その認識は改めた方が良いと思います。『素人』判断は危険ですので」
空気を切るように捨て台詞のように言ったビーリンに続いて少女が降りてから、ベンはアビエーターを少し下げ、ダッシュボードのEVPリーダーの電源を落としながら、ただ肩をすくめてみせる。
「まぁ、プロがそういうなら任せるさ」




