6-5
「次はどこに行くの?」
「どこへでも。足を呼びましたので」
「足?」
ビーリンが顔を上げると、古い日本車が公園の前で止まった。
「デートに誘ってくれたわりに仕事熱心だな」
あくびをしながら降りてきた男はくたびれたアロハにジーンズにスニーカー。
とてもデートに行くとは思えない格好の男が後部座席の扉を開けた。
「ボス。お休み中に申し訳ありません」
「いいさ、どうせ去年のウィンターホークスの試合以外見るものもなかった」
ベンはそういうと後部座席に乗り込んだ二人に振り返り、仕事用のシューティンググラスではなく、アビエーターを外してみせた。
そのブラウンの瞳が一瞬だけ、少女の存在の揺らめきを捉えて細められる。
だが、彼はすぐにいつもの気だるげな笑みに戻った
「さぁ、どこに行きたい。お嬢さんがた?」
瞳をのぞき込まれ、困ったように少女がビーリンに視線を向ける。
「港へ」
ビーリンが声を上げベンは頷くと、サングラスをかけなおしてエンジンをかける。
「何か買っていくか? 甘い物ばかりじゃ喉も乾いたろ」
ルームミラーに問いかけるが、少女とビーリンは小さく首を振った。
「OK、便所は早めに言えよ」
ベンがサイドブレーキを下ろし、アクセルを踏むと。車は猫たちに見送られるように華僑街の人ごみをゆっくりと避けるように動き出した。
「言っておくが、ポートランドのデカい港を期待するなよ。こっちは河川港なんだからな」
言いながらベンはナビのボタンを操作する。 ピッピっと電子音が響き、派手なリリックがスピーカーから流れ始めた。
「Bad boys, bad boys.What you gonna do? What you gonna do when they come for you? 」
日焼けしたハンドルを人差し指で叩きながら、ベンが肩を揺らし、少女は興味深そうにその後頭部を眺めていた。




