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満足した少女が歩き出し、美鈴もその背中を追う。
決して少なくないチャイニーズストリートの人をかき分けるたび、屋台の蒸籠から立ちのぼる湯気に少女は目を輝かせる。
小籠包、胡椒餅、砂糖で飴がけした果物。ひとつひとつに感嘆の声を上げ、美鈴はそのたびに財布を取り出した。
「……美国では経費で落とせるのでしょうか」
屋台やテイクアウト用の窓口の主人の差し出す、切り慣れていない領収書を受け取り、几帳面に財布へ仕舞う。
少女は看板の灯りや、舗道に並ぶ新しい看板を指差しては「こんなに変わっちゃったんだ」と声を上げる。
彼女の記憶の中にある街は、まだ木造の建物と簡素な桟橋が続いていた時代なのだろう。
今の雑多でネオンや電飾で彩られた街並みは、まるで別世界に写っているようだった。
「あれは……? みんな箱を持ってるの?」
「ええ、いまは誰もが通信機を携帯しています」
「ふふっ、海の向こうまで声が届くの?」
「ええ、海底のケーブルか宇宙を中継しています」
少女の無邪気な驚きに、美鈴は生真面目に答え、少女の両手にある屋台で購入したいちごの砂糖串を領収書の店名を整理しながら眉をひそめた。
「任務中に遊興費……説明が大変そうです」
路地を抜け、コロンビア川を見渡せる寂れた公園で少女はふいに足を止め、懐かしむように振り返った。
「ここ、昔は船乗りが集まって歌ってたの。私の歌も、聞いてくれてたんだよ」
そう言う彼女の笑顔は、ほんの一瞬だけ、神格らしい輝きを帯びて見え、足元にいつのまにか三毛猫がすり寄ってきた。
少女が振り向くと、別の猫も闇から姿を現す。
「ふふ、あなたたち、まだここにいたのね」
少女が笑うと、猫たちはまるで返事するように一斉に小さく鳴き、足元をすり抜けるようにして集ってきた。
彼女の裾にからまる三毛、石畳に輪を描いて回る黒猫。どの瞳も小さく光り、彼女を見上げていた。
美鈴も足を止め、胸の前で手のひらで拳を包み込み、恭しく頭を下げた。
「……人よりよほど信心深かいのでしょう」




