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舗装されていることを除けば、まるで西部劇のワンシーンのような光景。
夜明け前のグレートベイン・ハイウェイを、二台のバイクが絡み合うように疾走していく。
薄明の空を切り裂くその姿は、地を這う流星のようだった。
「……? 新しいエアサポート?」
風を切るエンジン音と、スキール音の高周波に混じって、別種の爆音が耳を打つ。
それに気づいたメイジーが顔を上げた。
「……あれ、軍用ヘリじゃない?」
低く唸るような音が、遠くの空に浮かぶ機影と共に迫ってくる。
『州をまたいだんでエアサポートをオハイオ支局から飢餓が引き継いだ。ビーリン、視認できるか?』
「見えます。美国のAH-64D、ロングボウ・アパッチです」
「攻撃ヘリ? 馬鹿じゃないの?!」
彼女の視線の先、アパッチがまるで護衛機のように二台と並走し、荒野を低空でなぞっていた。
しかし隣で、ビーリンは冷静に周囲を見回していた。
風景はどこまでも続く大地。赤茶けた丘、サボテン、驚いて飛び起きる家畜。
まさにアメリカの象徴のような光景。
「アメリカらしい光景、ですね……次、右折です」
「ヘリまで含めてらしさ全開ね!」
朝焼けに照らされたネヴァダの地平は、確かに映画のような美しさを湛えていた。
だが、メイジーはそれどころではない。荒れ気味の運転で州政府事務所前を駆け抜ける。
二台のバイクは、時に身を寄せ、時にすれ違いながら、マッギル、イーリと次々に小さな町を突き抜けていった。
道路標識はやがてUS-6から州道318号線へと切り替わっていく。
「あー、もう! あいつまったく止まらな……って、ちょっと!?」
サニーサイドの休憩所脇を通過したその瞬間、苛立ちまじりに叫んでいたメイジーの声が裏返る。
彼女は腰に回していた手を、反射的に胸元、ホルスターへと伸ばした。
「そのままの進路を維持してください」
「ちょっと、こんな時にどこ触って……あっ、私の銃!?」
ビーリンは無言で、メイジーのチェストホルスターからリボルバーを抜き取っていた。
冷たい金属の重みが手のひらに伝わる。彼女の目は前方の一点を捉えて離さない。
『あー……法的には、ビーリンには執行時の銃使用の許可がないんだが……記録映像が乱れてる。今持ってるのはどっちだ?』
「メイジーです」
しれっと即答するビーリン。
メイジーは「あんたねぇ……!」と叫びながらも、バイクの制御に集中している。
『了解。そう記録する』
通信が途絶え、空の彼方には、依然としてアパッチのローター音が響いていた。
「次の国道93号との再合流で仕留めます。恐らく最後の好機です」
「……OK、チキンレースなら得意なの、ブリー相手にいくら巻き上げたか」
メイジーは、目前に迫る国道93号との直角交差を前にスロットルを最大まで開く。
ここを逃せば、後はもう追いつけるポイントがない。
ビーリンは足を延ばし、メイジーの頭上からリボルバーを両手で構える。
メイジーがハンドルを細かく操作して進路を安定させ、ビーリンはゆっくりハンマーをコックし……スッと大きなかわいらしい目がバイザーの下で細くなる。
空気を切り裂く暴風の音、エンジン音、スキール音、おそらく彼女の中には何も聞こえていないのだろう。
バイカーは狙いを散らすように蛇行していたが右折するため、予測可能な動きで小さく体を左に振った。
「大獎」
瞬間、うっすらと丘を乗り越えようとする朝日の下に銃声が鳴り響いた。




