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F1マシン並み。あるいはそれ以上の速度で、メイジーのバイクは、大型トラックに荒らされた蛇行するワインディングロードを駆け抜けていく。
やがて、長く続いた下り坂が唐突に平坦になり、入り組んだ道筋はプレスされたかのように真っ直ぐになった。
『オデロン通過。ラ・グランドを抜けたら仕掛けろ』
無線越しのベンの指示に、メイジーは前方を睨みつける。
暗闇の帳の奥、微かに揺れながら赤い尾を引く複数のブレーキランプが、狂ったような速度で遠ざかっていく目標。封鎖された高速だ、あれがOMCのバイク以外のはずがない。
「こっちはまだ余裕があります、追いつけそうです……何で追いつけるのよ、このバイク」
街の明かりを背景に疾走しながらメイジーは小さくつぶやいた。
そうして、ラ・グランドのハイウェイ入口。
そこでは、市警のパトカーが列を成し、トラックや民間車輛を止めていた。
クラクションが断続的に鳴り響き、警官たちは苛立った顔で手を振る。
そのすぐ脇では、いかにも場違いな『規制中』の標識とバリケード。
重機や作業員たちが、やたら悠長に舗装路を掘り返している。
だが、彼らのすぐ背後のハイウェイを、数台のバイクが雷鳴のような爆音とともに通過した。
風圧が砂埃を巻き上げ、路上の紙くずやゴミ袋が宙に舞った。
それを目で追う間もなく、さらに別のバイクがこちらもまた超常的な加速で後を追っていった。
警官も、作業員も、誰もがぽかんと口を開けたまま、ただその光の尾を見送るしかなかった。
「ちょっと、入り口で止めるったってそんな近くで止めてたら、ガッツリみられたんじゃない!?」
「このペースなら、数分で市街を抜けます」
メイジーが騒ぐが後席のビーリンが、HUDを覗き込んで静かに報告する。
その声に合わせて、街の明かりがまるで銀河を駆け抜けるように、流星の帯となって背後に流れていく。
「……OK、コドラ、カウントダウンお願い」
「……ハァ。わかりました」
メイジーの挑発めいた声に、ビーリンは一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに呆れたように息を吐き、視線をディスプレイに戻した。
「次の緩い右コーナーを抜けたら、あとはオレゴン州交通局(DOT)のサービスエリア前までひたすらロングストレートです。コーナー通過までのカウントを行います」
「OK……」
「……15、14、13、21」
「いま21って言った?」
「……発音の問題です。5、4、3、2、1っ!」
その瞬間、大きく緩やかな右カーブを抜けながら、メイジーはギアを蹴り込み、スロットルを限界まで握りしめた。
異星のバイクがベベベベベと奇声じみた咆哮を上げ、闇を切り裂く閃光となって、まっすぐに加速していく。
「追いつける!」
チェストホルスターから拳銃を抜き、急速で迫るブレーキランプに向けてゆっくりと構えかけた、そのとき……今まで地面を掴んでいたタイヤが、急に接地感を失った。
「っ!?」
メイジーは体重移動とハンドル操作で必死にバランスを取ろうとする。
だが、まるで氷の上を滑っているかのように、バイクは不安定に揺らいだ。
そして……
一瞬後、メイジーとビーリンは、闇の中へと宙を舞った。




