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『ロードキャプテンとサージェント・アット・アームズをやったな。こっちで逮捕する』
「ええ。……道の右端に寄せて止まりなさいって呼びかけますか?」
ベンのどこか楽しそうな無線音声に、メイジーが苛立ち混じりに応じた。
『それでOMCが素直に従ってくれるなら、州警察も苦労しないな。そろそろ合流しろ。そこから先、山道はイーストとウェストで大きく分かれる』
「了解!」
ハンドルを切り、フェンスの切れ目をすり抜けるようにして走行車線へと戻る。後方で砂埃が舞い上がった。
「……奴ら、加速してる!」
「ええ。でも大人しくなりましたね」
先ほどまで頻発していた発砲がぴたりと止み、今はむしろ、こちらを振り切ろうとするようにバイクの列は暗闇を切り裂いて丘へ向かって加速していた。
「ねぇ、あれツーリングでしょ? ペンドルトン展望台で景色でも見ながら休憩したりしないの?」
「我々が追っていなければ、可能性はあったかもしれませんね」
疲労を隠すように軽口を飛ばしながら、メイジーはバイクを傾ける。大きく弧を描く山道を、異様な安定性で疾走していく。
通常のバイクであれば、とっくに慣性に負けてアウト側に吹き飛んでいたはずだ。だが、このSFバイクには地球の常識は通じないようだった。
「……山道で接近するのは危険です、この距離を保ちます」
『ああ、連中が大人しくしているうちはそれでいい。ラ・グランドからノース・パウダーまでの区間でもう一度仕掛ける』
「……ところで、質問いいですか?」
『暇になったか?』
「200マイルで山道運転してる時に暇って言えるなら、欠伸してみせてください。そうじゃなくて……なんなんです、あの、『空腹』って」
『……まさかとは思うが『飢餓』のことか?』
無線の向こうで、ベンがどこか呆れたように息を吐く音が聞こえた。
直後、送信スイッチを離したのか通信が一瞬だけ途切れ、すぐに電子音とともに復帰する。
『天界側の武力介入だ。いわゆる、黙示録の四騎士。見た目は……』
ベンの声が言いよどみ、メイジーの脳裏に、銀の鎧をまとった中世の騎士団の姿がぼんやりと浮かんだ。
『陸軍の特殊部隊……Dボーイズをイメージしてればいい』
「へ、デルタ? デルタフォースですか?」
『そうだ。中華民国軍の特戦郡でもいい』
ビーリンが背中にしがみつきながら背後で小さく頷くのを感じ、メイジーが質問を繰り返す。
「で、その特殊部隊の格好をした天使が、なんであの幽霊を待ち伏せしてるんです?」
『霊体の消滅権限を持っているのは天界側だけだからだ。十戒の修正第6条、補項第4項に基づいてな』
「それってつまり」
「到達してしまえばこの追跡は無意味というわけです」
ビーリンが静かに補足し、メイジーはわずかに顔をしかめて、ヘルメットから口元に伸びたドリンクチューブに噛みつき、水分を一口啜る。
「なら、派手にクラッシュさせるのはあのバイカー達の為ってわけね」
「對」
暗闇を切り裂くようにワインディングロードを駆け抜けながら、メイジーは無意識に上体のバランスを整えた。
照明のない夜道を、かすかな星明かりと異様に明るいヘッドライトだけが照らしていた。
追跡開始から、まだ一時間も経っていない。
にもかかわらず、走行距離はすでに全行程約900マイルの4分の1に差しかかろうとしていた。




