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車線に割り込んできたライダーが、スッと身体をずらすようにしてバイクの陰から何かを取り出した。
それは鈍く光を反射する金属。しかし銃ではなかった。
「何?」
ヘルメット越しに目を細めたメイジーが、瞬時に警戒心を募らせる。
「趴下(伏せて)!」
ビーリンの鋭い叫びとほぼ同時に、ライダーが驚くほど滑らかな動きでバイクごと身をひるがえした。
その刹那……
ビーリンは背後からメイジーの肩を強引に引き、半ば抱き込むようにして身体を伏せさせた。
咄嗟の動きにハンドルがぶれたが、シリウス星人製の異様な安定性を誇るバイクは、まるで磁石のように路面に吸いついたまま、地面に対して水平に近い角度で踏みとどまる。
直後、空気を裂くような金属音が耳を刺した。
「ひっ!?」
空気を裂く金属音と共に、目の前を一閃がかすめた。
ライダーが振りかぶったのはナイフだった。いや、ナイフというには長い湾曲した刀。
超高速ですれ違うハイウェイ、その相対速度はおよそ時速300マイル。
メイジーのヘルメットのバイザーに火花が弾け、衝撃で視界がぐらりと揺れる。
あと数センチずれていれば、首が飛んでいてもおかしくなかった。
「な、何今の!?」
呼吸が乱れて叫び声が裏返り、ハンドルを握る手がぶるぶると震える。
それでもメイジーは、必死に車体を制御し続けた。
「八斬刀です」
ビーリンはまるで、風景の一部を指さすような口調でそう言った。
落ち着いているというよりも、感情を切り離しているような響きだった。
だが、すれ違ったまま勢いのまま体勢を立て直すライダーを睨みつけるその顔には、次の一撃を見越す緊張がにじんでいた。
「は? 中国の?」
メイジーは咄嗟に聞き返したが、何よりまずその質問をしている自分が、まだ生きていることに驚いていた。
「対処します。そのまま進路を維持してください」
「は? なんて?」
ビーリンは新しく符を空中にバラまくと、メイジーとつないでいたハーネスのカラビナを取り外した。
「ちょっと何する気!?」
そのまま時速200マイル以上のバイクに立ち上がると……ビーリンはまるで木の葉のように宙に舞った。
メイジーは思わず手を伸ばすが、あっ、というまに小さくなってしまう。
『どうした?』
「ビーリンが落ちました! 救急車を…」
叫んだ直後、慌ててバックミラーに目をやる。
だがそこに映っていたのは、信じられない光景だった。
「は……?」
ビーリンが、高速で走る後方のバイクのまわりを……
まるで妖精か、カンフー映画のワイヤーアクションのように、軽やかに舞っていた。




