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『……チーム名やエンブレムはわかるか?』
ベンの声が無線越しに響く。
だがメイジーは、並走するライダーたちのジャケットに目を凝らしながら首を振った。
「いえ、そこまでは……でも、FBIアカデミーで見た顔じゃありません」
夜風とエンジンの轟音に紛れそうになりながらも、冷静に言葉を選ぶ。
ライダーたちのジャケットは、まるで寄せ集めのようにバラバラだった。
赤黒い悪魔。骸骨のエンブレム。翅の生えた蛇。
どのロゴも記憶に引っかかりはなく、チームカラーも統一されていない。
「エンブレムが統一されてません。モチーフからてんでバラバラです。なのに動きは連携してる」
『……OK。映像をもとに市警の組織犯罪対策課のデータベースに照合をかける。時間をくれ』
「時間はそう多くないようです」
後席のビーリンが、淡々とだが確かに急かすように言う。
実際、彼女の言うとおりだった。
いつの間にか円形農場は姿を消し、彼女たちは暗闇の荒野を切り裂くように疾走していた。
そして、その暗闇の中をかすめるように現れた道路標識には……
「ペンドルトンまで、数マイルしかないですよ!」
「マップによると、その先で道が蛇行しています」
『クソ暗いのとアホみたいな速度で走ってるせいでそちらからの映像が不鮮明だ。急がせるが……』
無線の最中にも、集団はけたたましい銃声とマズルフラッシュを連ねながら喧しいエンジン音を轟かせ、州間高速はペンドルトンの外縁にかすめるように突入した。
「こんな夜中にバンバンバン! ユーマティラ川近くの住民に悪いと思わないの!?」
メイジーがスロットルを握りしめながら怒鳴る。
「そういうのを気にするなら、最初から暴走族には入っていないと思いますが?」
出会って数日にして、もはや定番となりつつあるやり取り。
だがその背景では、現実味のない速度で街の外縁部が流れる。
街灯のない曲がり角、無人のガソリンスタンド、古びた鉄橋を遠目に、ペンドルトンの夜が彼女たちの走りを迎え入れていた。
『連邦裁判所の記録がヒットした。……周辺のチャプターのリーダー格がCCE(継続的犯罪企業)とRICO法違反でまるごと挙げられたみたいだな。ほとんどが州刑務所で獄死してる』
「なんで知らないんですか!? 死因は?」
『人間相手の法執行は管轄外だ……病死や自殺だと思うか?』
風の音が強くなり、一瞬、無線のノイズと重なって沈黙が走る。
メイジーは小さく肩をすくめ、背後でビーリンが不思議そうに首をかしげる。
その刹那。
一台のバイクが土煙を上げてハイウェイの車線を乗り越え、猛スピードで進路を横切ってきた。
メイジーたちの進路を塞ぐように、あからさまな意志を持った動き。
「……手練れです」
「そうみたいね」
ビーリンが目を細め、メイジーもまた、眉間に皺を寄せながら、無意識にスロットルをさらに絞った。




