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「いい腕です」
「い、いやいやいや!!」
バックミラーから、超高速で小さくなっていく事故現場を見ながら、メイジーが叫んだ。
「死んでないわよね?!」
「お気になさらず、二度は死ねません。正確には特別な手段が必要です。それより、前を」
ビーリンの補足に、メイジーは慌てて視線を前へ戻す。
すると、フォーメーションの中にいた数人が、ゆっくりと半身をひねった。
「ちょ!?」
風に乗ってショットガンの散弾が襲い掛かるが、直前でさらに高速で飛び出した護符にぶつかって軌道がそれる。
「発砲、あいつら法執行官に発砲してきました!」
『何を相手にしてると思ってるんだ、OMCの残りカスだぞ?』
無線越しのベンの声は、むしろ当然と言わんばかりだった。
「部下が撃たれてるんですけど!? 今まさに!?」
メイジーが叫び、再び車体を左右に振って弾を避ける。
相対速度200マイル以上で飛んできた空のショットシェルがフロントカウルにかすり、風と熱が一瞬だけ皮膚を焦がすように通り抜けた。
「反撃を」
「もう一度聞くけど、あんな派手に転んでも例の消滅をさせることはないのよね?」
「是」
言い切ったビーリンの言葉で自身を納得させるように、頷きメイジーが再びホルスターからリボルバーを抜き放った。
風圧と振動に耐えながら、メイジーは肩越しにリボルバーを持ち上げ、前を睨む。
一発、二発。
引き金を引くたびに反動が手に伝わる。
だが、銃弾は恐らく暗闇の中に消えていった。
「命中せず」
「わかってるっ!」
ビーリンが冷静に言った言葉に叫び返す。
「最初の一発が何で当たったかわかんないけど、そもそもこの状況でそうそう何発も当たらないわよ」
呟きながら、ライトで照らされながら半身をひねってこちらに銃口を向け、しきりに発砲してくるライダーを睨みつける。
二人のようなライダースーツではなく、派手なジャケットとジーンズという典型的な格好だが……首から上がない。
その姿はもはや人間というより、形だけを保った悪意の残骸のようだった。
「ゴーストライダーというよりスリーピーホロウね……!」
「どう違うんです?」
「あー、ゴーストライダーはなんというかドクロ頭で燃えてる感じ。DCコミックの奴っ」
『おい、ゴーストライダーはマーヴェルだ。そもそも原作は……』
無線からの上司のツッコミを無視し、メイジーはショットガンの弾幕と射線をくぐり抜けながら、ハイウェイ脇に転がる廃車を踏んで飛び越える。
着地の衝撃とともに後輪が火花を散らす。
だが車体の安定性は異常なまでに高く、むしろメイジーの操作に呼応するかのように、滑らかな挙動で地面を掴み返す。
「最ッ高!」
「楽しそうですね」
ビーリンが静かに呟きながら、空中へ符を一枚放つ。
時速200マイルを優に超えて疾走しているのに、符はきっちりと彼女たちの周囲を旋回し、守るように周囲で舞っていた。
「マン島TTに出るのが高校の頃からの夢だったの! でもこれ、そんなの目じゃないわ!」
対向車線を疾走しながらバイカー集団と並走し、連続するマズルフラッシュに頭を低くする。
散弾がビーリンの護符に弾かれるたび、空気がバチッと音を立ててはじけた。
「装填!」
「貸してください」
撃ち返すものの、こちらの弾も虚空や風壁に吸い込まれるばかりで、決定打には至らない。
「OMCの抗争じゃないんだから……こんな状況で撃ち合って、当たるわけないでしょっ!」
そう言いながらスロットルをひねり、対面を並走する集団を睨みつける。
クルーザーバイクに乗った首無しライダーたちは、依然としてショットガン、拳銃、サブマシンガンを乱射している。
だが、メイジーはふと、彼らの装いに違和感を覚えた。
「装填完了」
「ありがとう」
肩越しに手渡されたリボルバーを受け取りながら、思考を巡らせる。
「……ベン。この辺りのチャプターは混合チームなんですか?」
『いや、西海岸の大動脈ってこともあって前はそれなりにクズも多かったが……最近はあらかた潰されて大手の『ヘヴンエンゼルスカル』ばかりだな。それがどうした?』
「詳しくはわかりませんが、全員、違うチーム名のジャケットを着てます」




