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ベンの号令と同時に、メイジーがスロットルを一気に握り込む。ギアを蹴り上げた瞬間、スタンドが自動で跳ね上がり、タイヤは空転すら許さず、まるで鉄板を抉るように荷台を蹴った。
次の刹那、爆発的な加速が二人を押し出す。
「ちょっ……!」
荷台の縁を噛んでいたリアタイヤは、加速Gに押されて車体ごと数メートル宙へと跳ね上がり……そして、ハリウッド映画さながらの派手な着地を決める。
だが、その着地にも、スリップ音ひとつ響かない。
まるで重力そのものを制したかのように、タイヤは州間高速の荒れたコンクリートを完璧に掴み取っていた。
「狂ってるっ……!! これ、ライダースーツじゃなくて対Gスーツが必要だったんじゃ……!?」
「意識を保ってください……クラッシュしたら即、絞肉(挽肉)です」
メイジーが振り落とされまいとしがみつくように車体を操りながら呟き、それに背後から密着するビーリンが静かに応じた。
『聞こえるか? そのペースなら数秒で奴らのケツに追いつく。通常、最後尾を走ってるのは集団を統制してるやつだ』
ベンの声が無線から響く。
フルフェイスヘルメットの耳元から発せられたその声は、吹き抜けていく風が発する轟音の中でやけにクリアに届いた。
「止まりなさい! 繰り返します、こちらはICE捜査官です、あなた達の滞在ステイタスに!! ああもうっ!」
あっという間に近づいたブレーキランプに叫んでみるが、風の轟音と目の前の集団のエンジン音に流され自分の声がヘルメットから外に出ているのかもわからなかった。
「なんでクルーザーでこんなに速いのよ!?」
「質量が限りなく0に近く、生前と同じ馬力だとどうなると思いますか?」
「……馬力?」
「あー、パワーです。エンジンパワー」
ビーリンが無線越しに言った言葉にメイジーは少し考えてから溜息をついた。
「なんて迷惑なの」
時速200マイル近い追跡劇の中で、ほんのわずかに弛緩した空気が流れた。
「追いかけてるだけじゃ埒が明きません。銃を」
「は? 消したらまずいんでしょう?」
時間にして十数分。
本来なら一時間はかかるはずの距離を数倍の速度で駆け抜け、ボードマンの市街地をすでに抜けたタイミングだった。
川沿いの街並みを離れ、円形農場の広がる平野地帯を突っ切る中、ビーリンが静かに告げる。
「彼らの動きを止めるだけです」
「それは便利、ね!」
スロットルから手を離し、チェストホルスターからリボルバーを引き抜く。
そのまま、揺れる車体の上でゆっくりと狙いを定め、引き金を引いた。
銃弾は正確に、最後尾のライダーの背中をとらえる。
その瞬間、男の身体が硬直し、バイクは高速で左右にふらついたかと思うと……勢いよくひっくり返った。
200マイル以上での転倒の衝撃でガソリンタンクに火が回り、
コンクリートを削るような轟音を残して、火を噴いたマシンがライダーもろとも炎の尾を引いて背後へと転がり去った。
「は?」




