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「すごい……」
メイジーは目を輝かせてバイクに歩み寄った。
メーカー名こそ見当たらないが、マットブラックのフレームに流線型のフォルム、カスタムされたフロントフォークと異様に分厚いタイヤ。
一目見ただけで「速い」とわかるその姿に、思わずため息が漏れた。
「乗ってみるかい、嬢ちゃん」
例の男がにやりと笑いながら声をかける。
「メイジー・ロックウッドです」
メイジーは顔を上げ、控えめながらもきっぱりと名乗った。
「失礼。どうぞ、ロックウッド捜査官」
男は肩をすくめ、少し愉快そうに言い直した。
彼女が颯爽とまたがると、まるで誂えたようにシートが身体に馴染み、グリップも自然と手に収まる。
「いいバイクだな。誰が持ち込んだんだ?」
バイクに興奮する部下を尻目に、ベンが問いかける。
「シリウス星人だよ。しかも今年のロサンゼルス・オートショーに登録してたんだぜ。即押収だ」
「誰ですって……?」
男の軽口に、夢中でバイクを眺めていたメイジーが素っ頓狂な声を上げた。
「シリウス第三惑星人。地球での呼び名はまあ、そんなとこだな」
男は飄々と答える。
両手でハンドルを握ったまま、メイジーが慌てて振り返った。
「OSTP(大統領府科学技術政策局)から来た技術屋よるとだな、動力はおそらく電動。しかも『高温』超電導推進だと。DARPAが欲しがってるが、シリウス星人が返還を要求して。今は係争中。書類上完全に宙に浮いてる」
あっけらかんとした言いぶりだったが、その内容はどう考えても現実離れしていた。
「幽霊の次は宇宙人ですか!?」
メイジーが我慢できずに声を上げる。
「アンタらが相手にしてる幽霊より、よっぽどマトモだよ」
男は気にも留めず肩をすくめた。
「マシだと? 主食が人間で、しかも食材に卵植えつける上品な客が、前にこの倉庫から逃げ出したろ。ウチどころかCIAの支局まで総動員になった奴だ」
ベンが呆れたように口を挟む。
「あれは知覚種族じゃない。だからうちじゃなくて、動植物検疫局のネタだ」
男は平然と、事務的に言い切った。
「シガニー・ウィーバーに任せればよさそうですね」
黙って聞いていたビーリンがバイクに歩み寄りながら、会話に割って入った。
「どうかな。相変わらずのナイスバディだがもう歳だ。エイリアンはこりごりだろ。で、コイツの処分はそっちで持ってくれるのか?」
男は肩をすくめ、苦笑まじりに返した後、ベンに問いかける。
「通例通りスクラップにしよう。ヤードまでの輸送はICEでやる。今夜届けてくれ」
ベンの言葉に男は頷き、メイジーに向き直った。
「さぁ、お客さん。試乗はおしまいだ。降りてくれ」




