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「それで、なにがわかったんです?」
SUVの助手席で、メイジーは小さくため息を吐くと、ウェットティッシュを引き抜いて薄い化粧ごと顔を拭った。
冷たい感触が、疲れと苛立ちを少しだけ溶かしていく。
「1%erで何かがあった。これを機に0.5%erくらいに減ってくれるなら、世のため人のためだが……まあ、結局は俺たちの手間が増えるだけだ」
乗り込んできたベンは肩をすくめ、指先でエンジンスタートボタンを押し込んだ。
低い振動とともに車内に微かな音楽が流れはじめる。
「1%イヤーとは?」
ビーリンが後部座席で身体を深く椅子に沈めながら、興味深そうに首を傾けた。
「全米の99%のバイク乗りはマトモだ、って反論した団体がいてな。単純計算で残りの1%はクズだって話だ」
ベンは淡々と答え、片手でハンドルを軽く叩いた。フロントガラスの先に、初夏の陽に霞む橋がゆらいで見えた。
「FBIでも、プレジデントをあげるときは地域の捜査官総がかりで大事ですよ」
メイジーはティッシュを畳んで膝に置き、窓の外を眺めた。真昼の光が川面を照らし、細かなさざ波を銀色にきらめかせている。
「OMCの連中はイカれた奴ら同士、仲間意識が筋金入りだからな」
「どれくらいイカれてるんです?」
加速していく重力に身を預けるように、ビーリンがそっと目を閉じた。赤い袖が空調の風にかすかに揺れる。
ベンは小さく肩をすくめ、ルームミラーを一度だけ見やった。
「大事な仲間が逮捕されると、連帯保証のように次々に報復に来る。俺ら絡みだと、死んでも魂が出入りしてる場合がある」
「……バイカーならともかく、幽霊がバイクに乗って囚人護送車の襲撃に来るとか、考えたくないんですけど」
メイジーは視線を窓の外に逃がした。真昼の明るい空と、流れる川の青と、まっすぐに伸びるハイウェイのコントラストが、現実感をひどく遠ざけていった。
「まあ、見たことはないが……奴らは死んでもバイクから降りないらしいからな。あり得ない話じゃない」
その声は冗談にしてはひどく現実味があった。
ひりつく沈黙が、エアコンの送風音とともに車内に沈む。
「バイカーの抗争に幽霊騒ぎって……どこのB級ホラー映画ですか」
メイジーはやっと声を絞り出すように言った。
バックミラーの端で、ビーリンがそっと口元を覆い、笑いをこらえている気配がした。
「安心しろよ、あのスター・ウォーズだって試写会じゃB級扱いされてたんだ」
ベンが少しだけ口角を上げる。
「その話の安心できるポイントってどこですか……」
情けない声で言い返しながら、メイジーは額を手の甲でそっと押さえた。
「それで、この車はどこに向かっているんです?」
「そういえばいい時間ですよね。昼食ですか?」
ビーリンがゆるく目を開け、赤い袖を整える仕草をした。
「あー、まぁ、そうだな。その前に、まずはお隣さんの所によって行く」
ベンが言いながらウィンカーを出す。
ルーズベルトドライブを下り、橋へと向かう坂道に差しかかる。
三人を乗せた白いSUVが、きらめく川風に押されるようにゆっくりと走り出していった。




