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Enjoy your stay.  作者: ゆう
case.1
2/9

1-2

「デスクはそこを使ってくれ。武器課には、外回りのときにでも紹介しよう」

 課長室を後にしたベンが、親指で斜め後ろの席を指す。

 ウェーブのかかったブロンドに幼げな顔立ちだが、意志の強そうな目をした女性。メイジーは軽く頷くと、そのまま無言で腰を下ろした。

「……あの」

「ん?」

 ベンが自分の椅子に腰を下ろそうとしたとき、彼女が再び口を開いた。

「この地下オフィスには、EROの捜査官しかいないんですか?……他の部署は?」

「ああ……」

 ベンは肩をすくめ、すっかり冷えきったコーヒーを口に運ぶ。

 期待していなかったが、やはりひどい味だ。

「まぁ、普通ならHSI(ホームランド・セキュリティ捜査局)が同じフロアに入ってる。だけど、うちは特殊でな」

 『特殊』という言葉の意味を察したのか、メイジーの表情がわずかに曇った。

「……すみません。余計なことを聞きました」

「いいさ」

 ベンは苦い顔で紙コップを置くと、課長から渡されたファイルに目を落とす。

「FBI捜査官か。エリートじゃないか」

「入局して、SARTに2年いました」

 FBI:SART(特別案件処理班)。

 ひと言でいえば『Xファイル』。もっと正確に言えば、キャリアのどんづまり。

 良く言えば変わり種を集めた未解決事件や……アノマリーな事件に対する精鋭部隊。悪く言えば、人材のコンポスト。

 メイジーのまじめそうな態度からしても、そこで歓迎されていたとは思えなかった。

「あなたは?」

「ベンジャミンだ。ベンジャミン・タカハシ、まぁ、好きに呼んでくれ」

 軽く自己紹介して、不器用に微笑む。が、彼女は生真面目に頷いただけだった。

 ふと、そんな気まずい沈黙を押し割る様にスマートフォンの通知音が鳴った。

「……さっそく、出かけようか」

「どちらに?」

 メイジーが、きっちり着こなしたスーツの上にICEジャケットを羽織るのを横目に見ながら、ベンは歩き出す。

「EROの捜査官が、事件の事後処理に行く場所は決まってるだろ?」

 小さく笑いながら、ベンは言った。

「大使館さ」

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