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「デスクはそこを使ってくれ。武器課には、外回りのときにでも紹介しよう」
課長室を後にしたベンが、親指で斜め後ろの席を指す。
ウェーブのかかったブロンドに幼げな顔立ちだが、意志の強そうな目をした女性。メイジーは軽く頷くと、そのまま無言で腰を下ろした。
「……あの」
「ん?」
ベンが自分の椅子に腰を下ろそうとしたとき、彼女が再び口を開いた。
「この地下オフィスには、EROの捜査官しかいないんですか?……他の部署は?」
「ああ……」
ベンは肩をすくめ、すっかり冷えきったコーヒーを口に運ぶ。
期待していなかったが、やはりひどい味だ。
「まぁ、普通ならHSI(ホームランド・セキュリティ捜査局)が同じフロアに入ってる。だけど、うちは特殊でな」
『特殊』という言葉の意味を察したのか、メイジーの表情がわずかに曇った。
「……すみません。余計なことを聞きました」
「いいさ」
ベンは苦い顔で紙コップを置くと、課長から渡されたファイルに目を落とす。
「FBI捜査官か。エリートじゃないか」
「入局して、SARTに2年いました」
FBI:SART(特別案件処理班)。
ひと言でいえば『Xファイル』。もっと正確に言えば、キャリアのどんづまり。
良く言えば変わり種を集めた未解決事件や……アノマリーな事件に対する精鋭部隊。悪く言えば、人材のコンポスト。
メイジーのまじめそうな態度からしても、そこで歓迎されていたとは思えなかった。
「あなたは?」
「ベンジャミンだ。ベンジャミン・タカハシ、まぁ、好きに呼んでくれ」
軽く自己紹介して、不器用に微笑む。が、彼女は生真面目に頷いただけだった。
ふと、そんな気まずい沈黙を押し割る様にスマートフォンの通知音が鳴った。
「……さっそく、出かけようか」
「どちらに?」
メイジーが、きっちり着こなしたスーツの上にICEジャケットを羽織るのを横目に見ながら、ベンは歩き出す。
「EROの捜査官が、事件の事後処理に行く場所は決まってるだろ?」
小さく笑いながら、ベンは言った。
「大使館さ」




