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32 舞踏会①

「ユリア様、本当に大丈夫ですかね。私がちゃんとハリーの息子だと認めてもらえるんですよね?」


「ユリア嬢、本当に計画を実施すれば、令嬢から来るお誘いの手紙が減るんだな?」


「もう、お二人共。私は嘘を言いませんよ。」


今夜は舞踏会である。というよりもこれから会場に入場である。私は、これからの計画に胸踊らせているのに、二人はどうやらまだ不安や緊張が残っているようなので、メイから教わった色仕掛けを使って二人の緊張をほぐそうと思う。私に正面を向けている二人の胸より少し上を左右それぞれの手の人差し指ですぅっと一の字を書くようになぞる。それから、上目遣いでけれども妖艶に微笑むようにしながら言葉を紡ぐ。


「今日の私は、お二人を頼りにしているのです。よろしくお願いしますね。」


必死に練習したかいあってか、二人のカパカパ開いていた口が閉じたので成功したと言えるだろう。今回の計画は、落ち着いてみえた方がより効果が高いのだ。


「では、そろそろ行きましょうか。」


この舞踏会を主催している王家の使用人が呼びに来たので、準備はいいかという意味で言う。二人は、美しい顔面の造形に成功したらしく、まばゆい光を放っていた。これなら大丈夫だろう。




「アシュリー公爵令嬢ユリア様、イチュニア公爵令息エルカルド様、エブロ伯爵令息キアノ様。ご到着!」


掛け声とともに目の前にあった重そうな扉が開き、光が一気に射し込む。それから会場に一歩足を踏み入れると同時にたくさんの視線を感じた。計画的には大変嬉しい場面である。

私の今日のドレスは、全体的に薄い黄色の末広がりで、照明の光を受けてキラキラと輝くパールがたくさんついている。また、髪はハーフアップで耳が人に見えるようになっており、その耳には私の瞳と同じキャラメル色の翡翠がイヤリングとしてついている。

私は今日の服装であるときに、一番上手に光が当たる角度位置をしっかり把握済みである。


広間まで続く階段のちょうど真ん中でこれまでよりも少し長く時間をとり、耳についているイヤリングが輝くように左右に立っている二人に軽く視線を送る。それから、今までは伏し目がちで他の人達に見せていなかった顔をふっと上げ、美しく微笑みながら、残りの階段を再び降りた。


降りきった後、少し前に開催されたお茶会で見たメンバーが集まってきたのでパートナーの二人に「ありがとう」と言って別れる。お茶会のメンバー以外の人たちも話したそうに目線を送るので、微笑んで返す。

すると、次第に人がわらわらと集まってきた。



今回の計画は、会場にいる人達の注目を私達に集め、後から来る王太子に興味をそそられる人間を少なくすること。これが、私の推しを悪役令嬢にしない最適の方法である。

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