26 名前つけ②
「ハリーさん、、。どうですか? いい名前見つかりそうですか?」
「いえ、全く。いいなと思う名前は、やはり昔の貴族に使われてます。」
「そうですか、、、。こちらも、、同じです。」
いつもは商いの授業をしている時間だが、今日はハリーさんの頼みによってハリーさんの爵位の名前付けに時間を当てることになった。二人で爵位にふさわしい名前であること、縁起の良い名前であること、、、、などなどの条件に当てはまる名前で探しているのだが、この国は簡単に爵位をあげるものだから、そういうイイ名前がことごとく使用済みになっている。
これには、ハリーさんがあんな顔をしながら頼んできた理由がわかったような気がするわ、と今更ながらあの顔の真意に気づいたのであった。
朝ここに来てから、現時刻の十二時になるまでずっと名前を探していたので、さすがに一息つかないと浮かぶ案も浮かんでこない、ということになり気分転換も兼ねて二人で外食することにする。外食といえば、例のガキ大将さんこと、ガイルさんのお店だ。
お店に行くと今日も結構な繁盛ぶりであった。なので、軽く話題を共有するつもりで
「さすが公爵家お墨付きのレストランですね。」
と言ったら、ハリーさんが「そうなんですか!?」と驚いた顔でこっちを見てきた。どうやら今私は新たな面倒事を自分の手で増やしたようだ。これ以上はいけないと思い、口をキュッと結ぶ。何かを聞きたそうにしていたハリーさんも私の様子をみて諦めたようだ。
そして、私は何事もなかったかのようにお店に入った。あとは、どこのレストランとも同じように食事を済ませる。
食事を終えたら、散歩がてら歩いて商会に帰る。その間ハリーさんと私は他愛もない話をしていたけれど、私はずっと思っていた事をハリーさんに聞くことにする。
「ハリーさん。あなたは既に名前を思いついているのではありませんか?」
唐突な質問に驚いたのか、はたまた図星であったから驚いたのか、ハリーさんは目を少しだけ見開いた。諦めとよく似ている雰囲気が醸し出されているからおそらく、後者なのだろう。だが、何を気にして名前を付けられずにいるのかはわからないので、それを問うような視線を向ける。ハリーさんも言う準備ができたようで少し頷いてから口を開いた。
「私は、もともと平民です。なので、正直そこまで立派な名はいりません。私だけの名であればそれでいいのです。」
そう言ってから、「今まで名前付けに付き合わせてすみません」と謝罪も口にし、再び口を開く。
「なので、私は元から決めていたのかもしれません。ここで発表してもよろしいですか?」
「もちろんです。」
「私は、エブロという名が気にいっています。これは、遠い国の言葉で商人を意味するそうです。 どう思われますか?」
「よいと思いますよ。それに私がここでなんと言おうと、ハリーさんは”エブロ”にしたでしょう?」
「そうですね。今日はご協力くださりありがとうございました。また、ご協力を無下にしてしまい申し訳ございません。」
「謝罪は不要ですよ。私もいい息抜きができて楽しかったですわ。ありがとうございました。」
今日の努力を無視してしまったけど、これもまたいい時間だったかな、ということで納得している。
そして、ふと思ったことを口にする。
「ガイルさんのお店に行くと、モヤモヤしていることもスッキリしますね。」
「そうですね。そういうふうに謳ってみたら、さらに商売繁盛するかもしれませんね。」
ハリーさんも私と同じことを思っていたようだ。結局二人とも新しくつけた名前に浸る余韻を残さずに商いのことへと頭がシフトチェンジしたようだ。
こうしてハリーさんの名前付けは、無事におわったのだった。
ガイルさんのお店に何らかのジンクスを持たせたいと思ってハリーさんの名前付けの話を書きました。
後々、ガイルさんについても書けたらと思います。
あと、ハリーさんの名前はイイものが思いつかなそうだから付けないと言っていましたが、結局つけた方がかっこいいなと思い直したので、付けました。なのでこれからは、
ハリー・エブロ伯爵
となります。よろしくお願いします。




