22 二人が決めたことなら
「ユリアぁぁぁぁぁ!!大丈夫かぁぁぁぁぁ!医者を呼んでくれ早く!!」
といううるさい声で目が覚めた。どうやら、市場で楽しく買い物をしていたお父様とハリーさんが帰って来たらしい。
「お父様。お医者様は呼ばなくて大丈夫ですわ。ただ、疲れて眠ってしまっただけなので。」
「 誰だ! 誰がうちのかわいいユリアを疲れさせたんだ!!」
なんともまあ、我が父は自覚がないように見える。その発言に少し言い返してやろうと思って疲れている頭を捻って答える。
「お父様がもう少し早く帰っていれば防げたのかもしれませんね。」
だが、こんな返事に父は首を傾けるばかりで、全く気づいていないようだった。なので、最後の希望としてハリーさんの方を見ると、「はっきり言わないと伝わりませんよ」といった顔で見られた。
これ以上労力を使う気にはならなかったので、自分を納得させるため「うん」と頷き、父に話題を振る。
「そういえば、どうでしたか?私が企画したお二人の食事会は。」
今まで散々ぎゃいぎゃい騒いでいた父が急に静かになり、ハリーさんも私から目をそらす。なんだか不吉な予感がしたけれど、主催したものとして感想を聞かないわけにはいかないので、二人を辛抱強く見つめる。
すると観念したように父がゆっくり口を開いた。
「ユリア、実はな。ハリーに僕が持っていた伯爵の位を与えることにした。それと、今後、僕とハリーは友だからお互いに名前で呼び合っていても気にしないように。」
情報過多だ。はっきり言って、簡潔に言って、情報過多だ。私が想像してたのは、二人の変な意地やわだかまりがなくなって、仲良くなる、くらいのものだったのに。想像をかるく超えてきた。
でも、結果がどうなろうと、私は確認しなければならないことがある。それを確認するために、父とハリーさんを一度ずつ見たあと、二人に聞く。
「これは、どちらか一方が強制的に決めたものではなく、双方の合意によって決められたものでありますか?」
「そうだ。」
「そうです。」
言葉は違えど、二人の声は重なった。
「なら問題ありません。どうせ、お父様は、私に公爵の位と伯爵の位の二つを渡せなかったことを気にしているんでしょうけれど、私は特に気になりませんから。」
父が心配であったであろうことを先に否定する。それから、私の気持ちを正直に伝える。
貴族は心を簡単に話してはいけないというけれど、ここぞという時には話すべきだと私は思うからだ。
「私は本日、お二人のために機会を提供しました。そんな二人が満足しているならなによりです。それに、お二人が決めたことなら私が口をはさむわけありませんわ。でしょう?お父様、伯爵さま。」
私の正直な気持ちに応えるように二人が笑ってくれたことに安心する。
しばらく、三人で談笑していると、メイがやって来て、私が眠ったために運ばれたベッドの横のデスクに、ドンッと大量の書類を置いた。私は恐る恐るメイにこれらの書類がなんなのかたずねる。
「メイ。これは何の書類かしら?」
メイは頭を下げてバカ丁寧に返事をした。
「これは、お嬢様がやってやろうと息まいて書類をもらったものの、結局できなかった公爵様と伯爵様の残りのお仕事でございます。」
メイの言葉を聞いた私を含めた三人は、一気に青ざめ、笑っている暇もなく、再び騒ぎながら次の朝日がのぼるまで仕事をした。




