♥ 瀬圉家 6 / 本家 6 / 別邸 6 / ダイニングキッチン 2
衛美
「 玄武は昔から食い意地が張ってたわ… 」
玄武
「 衛美、直ぐにでも大学を中退してもいいぞ。
ワタシは何時でも “ ウェルカム ” というやつだ 」
衛美
「 勝手にウェルカムしないでほしいわ… 」
玄武
「 衛美、論文とやらを書くなら心霊スポット巡りを題材にしてはどうだ?
全国の最凶心霊スポットを巡る大学生は何処を探しても衛美しか居ないぞ 」
衛美
「 嫌よぉ!!
論文のテーマを心霊スポットにするなんてぇ… 」
厳蒔弓弦
「 衛美、私も手伝おう。
単位は取れなくても論文は提出しといた方がいいからな。
同僚の退魔師や祓魔師の中には心霊スポットマニアや事故物件マニアも居る。
頼めばお薦めの心霊スポットや事故物件を教えてくれる 」
衛美
「 弓弦さんって実は心霊スポット巡りとか事故物件巡りとか好きな人ですか? 」
厳蒔弓弦
「 いや、好きではないが…。
職業柄な関わる事もある 」
衛美
「 職業柄……そうですよね…。
祓い屋ですもんね…。
…………でも、祓い屋が日本全国に居て、活動してるのに心霊現象とか怪奇とか減らないのはどうしてなのかしら?
事故物件も減らないし、心霊スポットだって増えるし…… 」
玄武
「 表面的に否定はしていても、人間は心の片隅で怪奇を求めているからな。
人間は昔から人智を超える不可思議な “ 何か ” に惹かれるものだ。
怪奇を生み出す元は人間自身が無意識に作り出す闇だ。
世界から怪奇を本気で無くしたいと思うならば、諸悪の根源である人間が絶滅すればいい。
人間が絶滅しない限り、怪奇はなくならない。
霊的現象や怪奇が世界中で起きるのは、呪詛術,怨恨術,禁忌術を私利私欲の為に作り出し、悪用した過去の人間達の所為でもある。
術式を発動させる事の出来る生物は地球上で人間だけだ。
故に人間が絶滅すれば怪奇は起きない 」
衛美
「 …………それは…流石に無理かも… 」
玄武
「 人間が生存している限り、心霊現象や怪奇とは “ 鼬ごっこ ” の関係だ。
諦めるしかない。
そのお蔭もあってか、オカルト業界は遥か昔から現在も変わらず潤っているわけだがな 」
衛美
「 …………これもお祖父様と伯父様に話すの? 」
玄武
「 勿論、話すぞ。
──弓弦も今の内に風呂へ入って来たらどうだ?
20時には未だ時間がある 」
厳蒔弓弦
「 そうだな。
何時頃に話が終わるか分からないしな 」
玄武
「 後片付けは式神にさせよう。
気にしないでゆっくり入って来るといい 」
厳蒔弓弦
「 助かる 」
玄武
「 弓弦、退魔師の衣装に着替えておけ。
何か起きても直ぐ動けるようにな 」
厳蒔弓弦
「 ……分かった 」
玄武
「 衛美もだ。
今の内に着替えておくといい 」
衛美
「 …………何か起きるの?? 」
玄武
「 念の為だ。
備えあれば──と言うだろう。
弓弦の魔喰いの弓はワタシが預かっておく。
本邸へ武器を持ち込むわけにもいかないからな 」
厳蒔弓弦
「 分かった。
下りて来る時に持って来よう 」
衛美
「 私も一緒に2階へ行きます 」
玄武
「 電話が掛かって来たらワタシが出よう 」
衛美
「 お願いね、玄武 」
椅子から腰を浮かせて立ち上がった私は弓弦さんと一緒にダイニングキッチンを出た。
階段を上がって2階の寝室へ向かう。
階段を上がり切った所で弓弦さんと分かれて、私は自分が使っている寝室のドアを開けると、寝室の中へ入った。