♥ 瀬圉家 15 / 本家 15 / 別邸 3 / ダイニングキッチン 3
衛美
「 女性も居るんですね。
弓弦さん、モテそうですけどアプローチされたりするんですか? 」
厳蒔弓弦
「 …………されない事もない。
迷惑だから同僚に断ってもらっている 」
衛美
「 迷惑??
どうしてですか? 」
厳蒔弓弦
「 私には姉が4人も居てな。
そのお蔭もあり、私は極度の女性不信になった…。
≪ 厳蒔家 ≫は弓道一家としても有名で、男子は代々弓道を習う事になっている。
私は弓道に逃げ、ひたすら弓道に打ち込んだ。
学生時代は弓道と学業に励む日々だったな 」
衛美
「 そ…そうなんですか…。
お姉さんが4人も…。
壮絶そうですね……。
弓弦さんの実家って弓道でも有名なんて凄いですね 」
厳蒔弓弦
「 兄達の武器も魔喰いの弓だ。
弓使いは遠距離攻撃が主の後方支援だから、直接攻撃を受ける事も少ない。
後方支援をしていると同じ後方支援をしている祓魔師と親密になり易いそうだ。
実際に兄達の伴侶は皆、祓魔師だからな 」
衛美
「 そ…そうなんですか?
…………退魔師にも職場恋愛ってあるんですね 」
厳蒔弓弦
「 そう…だな。
兄達は弓の名手でもあったが、手も早いと有名だった…。
常に死と背中合わせの職場だからな、仕方無いのかも知れないな 」
衛美
「 弓弦さんのチームには女性の祓魔師は入らないんですか? 」
厳蒔弓弦
「 仲間が負傷して抜ける時には一時的に入ったりもするな。
私はなるべく関わらないようにしているが、向こうから寄って来るから困る… 」
衛美
「 そ、そうなんですか…。
苦労してるんですね…。
でもでも、弓弦さんが弓で戦う様子を見てみたいです!
弓だから単体攻撃が得意なんですか? 」
厳蒔弓弦
「 ≪ 厳蒔家 ≫は広範囲攻撃を得意としている。
法力を弓の先に込めて放つと矢の雨を降らせる事が出来るんだ。
私の場合は──、火属性,水属性,雷属性,氷属性の法力を使える。
水属性は体力回復に使う 」
衛美
「 法力…。
4つの属性を使えるなんて凄いんですね 」
厳蒔弓弦
「 そうでもない。
4属性の法力を使えても私は兄達よりも劣っているしな。
法力も強力ではないからな、主力にもなれない。
モノノケの体力を徐々に削る事ぐらいしか出来ないんだ。
チーム内で遠距離から広範囲攻撃と全体回復が出来るのは私だけだから重宝されてはいるが…。
何時、必要とされなくなるか分からない 」
衛美
「 弓弦さん……。
私…は、お兄さん達と比べなくて良いと思います!
お兄さん達がどんな人達なのか、分からないですけど、弓弦さんは劣ってないと思います! 」
厳蒔弓弦
「 有り難う、衛美… 」
玄武
「 弓弦、此を肌身離さず身に着けていろ。
何かあれば弓弦を守る 」
厳蒔弓弦
「 ──此は何だ?
プラチナリングか? 」
玄武
「 モノノケの中には有害な毒素を撒き散らす厄介なモノノケも居る。
一種の保険だ。
その紐は何があっても切れないから安心していい 」
厳蒔弓弦
「 有り難く受け取ろう 」
弓弦さんは玄武から渡されたプラチナリングに付いている紐を頭に潜らせた。
プラチナリングを服の中に入れた弓弦さんは少し嬉しそう。
プラチナリングって言っても指輪とかじゃない。
プラチナのワッカみたいな?
衛美
「 玄武、私には無いの? 」
玄武
「 衛美にはワタシが居る。
必要無い 」
衛美
「 そうなの?? 」
玄武
「 欲しいのか? 」
衛美
「 …………私だけ仲間外れみたいだし…(////)」
玄武
「 そうか?
なら、弓弦とお揃いにしてやろう 」
そう言うと玄武は、弓弦さんに渡したのと同じワッカのプラチナリングを私にくれた。
衛美
「 有り難う、玄武!
弓弦さんとお揃いで嬉しいです(////)」
厳蒔弓弦
「 私も嬉しい 」
玄武
「 婚約者同士、丁度良いかも知れないな。
見せびらかせば害虫除けにもなるぞ、弓弦 」
厳蒔弓弦
「 そうなると良いんだが… 」
弓弦さんは異性問わずモテるって事は話を聞いて何と無くなく分かった。
お揃いのプラチナリングを身に着けてるからって、弓弦さんが異性の退魔師や祓魔師と恋仲にならない──って保証はない。
幾ら “ 女性不信 ” だからと言ったって、絶対に恋心を抱かない──って保証はない。
弓弦さんと私は御互いに好き合って婚約者になったわけじゃない。
お祖母様から紹介されたから……、婚約者として付き合うだけで…。
私が男性不信で男性恐怖症なのは、玄武が関連でそういう事にしてるだけの嘘だし……。
私は弓弦さんの事が好きなのかしら??
弓弦さんは、お揃いのプラチナリングに「 嬉しい 」って言ってくれたけど…、きっと社交辞令よね?
…………弓弦さんが他の女性に取られちゃうのは嫌かもだわ…。
厳蒔弓弦
「 私は後片付けをしたら、そのまま弁当の仕込みをする。
衛美は先に休んだらどうだ? 」
衛美
「 弓弦さん、有り難う御座います。
後片付けなら私も手伝います 」
玄武
「 衛美が後片付けを手伝うのか?
止めとけ。
明日、大雪が降ったらどうするつもりだ 」
衛美
「 降るかぁ!!
皿洗いするだけで何で雪が降るのよ!
普通は雨でしょがっ!! 」
玄武
「 いや、明日は大雪警報──いや、猛吹雪警報が発令され兼ねない!
重大事件だ 」
衛美
「 大袈裟過ぎよぉ!! 」
厳蒔弓弦
「 猛吹雪警報は困るな。
衛美は先に休んでくれ 」
衛美
「 弓弦さんまでぇ!!
玄武に乗っからないでください!! 」
玄武にお説教しないといけないから、寝るのはもう少し後になりそうね!
もう、玄武ったらぁ〜〜〜!!
皿洗いを手伝ったぐらいで雪が降って堪りますか!!
衛美
「 ──玄武、ちょっと其処に座んなさい!! 」
玄武
「 もう座っている 」
衛美
「 椅子じゃなくて、床の上によ!! 」




