ごわ。
簡単に言えばこうだった。
「王子様の血にね、神様が力を流し込んだんだって。だから王子様の体に流れる血は、神様の力なんだって」
衝撃で死ぬかと思った。
目を見開いてカノンを凝視する。
そしておそるおそる視線を落として、見えた白い手をじっと見る。じっとじっと見ていると緑の血管が目に入る。手を持ち上げて近くで見る。
この血管の中を流れる血が。血、が。
「神の、力?」
くらっとした。
実際頭が揺れた。後ろに倒れそうになるのを、えい!と隣で俺の背中をさすっていたカノンが頭を弾いて防いだ。
ごんっと机に額をぶつけたのは仕方がない。もの凄く痛かったが。というか、一応俺、王子なんだけど。結構扱いがぞんざいじゃないだろうか。
「……ごめんなさい?」
何で疑問系。
頭を上げずに顔だけ動かしてカノンを見る。泣きたい。
いや、痛くて泣きたいわけじゃなくて。痛かったけど。そうじゃなくて。
「今も俺の体の中を神の力が流れてるのかと思うと、恐ろしくて仕方ないんだけど」
っていうか、そんなこと外に洩れたら俺の身が危なくないか?色々な組織から狙われそうな勢いじゃないか?
………っていうか。
「何でカノンの師匠がそんなこと知って…?」
「誕生の儀に参加してたんだって」
「はい?」
「あ、でも神様の姿は普通の人には見えないんだって。だからお師匠様しか知らないよ?」
知ってたら王子様、きっと監禁だよ?外出してもらえないよ?絶対その血、狙われるもん。なんて恐ろしいことを無表情で言わないでくれ。余計に怖くなるから。
に、しても。
「誕生の儀に参加できる、普通では見えないものを見る…」
そんな相手、は。
「大賢者ルヴィルド?」
「大賢者?ルヴィルドはお師匠様の名前だけど、大賢者ってなに?」
「………」
あの不老不死じゃないかと噂される若作りの大賢者の。
あの弟子なんて一度も取ったことがない大賢者の。
あの一人で一国を滅ぼせるんじゃないかと恐れられる大賢者の。
あの会うたびに母上と一緒に父上で遊んでいく大賢者の。
「弟子?」
きょとん、とした顔が可愛い、と思った。
*
衝撃の事実だ。
おおう、と呻いて机に懐いてる王子様の膝の上に額を落とす。
ただ単に頭を下ろしたところにあっただけなんだけど、王子様がへ?と間抜けた声を出した。
「大賢者。お師匠様、ただの隠居爺じゃなかったんだ」
隠居爺。王子様が繰り返すのが聞こえたけど、今は仕事って何してるの。いっつも家にいるよね?どこからお金流れてきてるの?なお師匠様が、大賢者なんて大層な肩書きを持ってた事実に受けた衝撃でそれどころじゃない。
大賢者っていったら、歴史書にも出てきた人物だ。
難しかったから全然読んでないけど、パラ読みした時に見た。大賢者。今まで一度も代替わりしたことない凄い魔法使いで。何でも知ってて。凄く賢くて。でもあんまり魔法使わないから大魔法使いじゃなくて大賢者って呼ばれてるんだって。
代々の国王とも仲良くしてて、時々は国政にも参加してて。十年に一度のお祭りの主役で。その時は大々的な幻影を使って国民を楽しませる。
それが、お師匠様…!!
「いつお嫁さんもらうのお師匠様とか思ってたら!もう絶望的!?」
「そっち!?」
ばっと顔を上げて叫べば、そっちに衝撃受けてたのか!?と王子様がばっと体を起こした。
普通、そんな凄い人だったのかって驚くところじゃないのか!?っていうのは正論だけど、でも私にとってはそんなことどうだっていい。それより大事なことなんだから。
「だって、だって!大賢者なら何百年も生きてるんだよね?なのにお嫁さんいないんだよ!?結婚歴ないって言ってたもん!あの綺麗な顔で何百年も生きててお嫁さんいないなら、もう絶望的ーーー!!!」
ふつつかな師匠ですがよろしくお願いしますっていつか言う日がくるのを願ってたのに!
路頭に迷うところを助けてもらったし、魔法も教えてもらったし。こうして独立して一人で生きていけるのもお師匠様のおかげだし。だから弟子としてお師匠様の幸せを願ってたのに。いつか可愛いお嫁さんもらって、可愛い子供作って、まいほーむぱぱなお師匠様を想像してたのに。
「もうこの際お婿さんでもいい。お師匠様を誰かもらってください」
王子様の膝に逆戻りする。
あの性格ちょっと捻じ曲がった人を柔らかくする誰かよ、かもん。
王子様が呆れたように息を吐いて、私の頭を優しく撫でた。
……今、ちょっと可笑しな気持ちになったんだけど。擦り寄りたくなったっていうか。
「王子様って罪深い」
「何で!?」
くすん、と泣いて、王子様の膝に頬をすり寄せる。
ころっといっちゃったらどうしてくれる。
大変お待たせいたしました。久しぶりの更新です。
これからも酷い時はこんな感じになるかと思います。すみません。
感想もお返しできません。本当すみません。