5話. 決行『クソガキ泣かす大作戦』
私たちの両親は仕事が忙しく、再婚して家族になってからもその状況は変わらなかった。
鍵っ子だった私たち姉弟は、家事も留守番も、できることは自分たちでこなしてきた。それでも、まだ幼かった夏波のことは、中学生だった私がずっと面倒を見ていたのだ。
可愛い夏波のお世話をするのは何の苦でもなかったし、何より、私自身の孤独や寂しさも彼のおかげで癒されていた。
私の貴重な青春時代は、夏波という義弟と過ごすことにすべて使い切っていたと言っても過言ではない。
確かに、二十五歳になった今でも私に恋愛経験がないのは、私自身の努力不足かもしれない。……だけど。
(それを、あんたが言っちゃダメじゃない……!?)
ギリッと奥歯を噛み締める。
私の貴重な時間をすべて吸い取って大きくなった張本人に、そんなふうに鼻で笑われる筋合いはない。
「ふ、ふふ……」
怒りが限界を突破すると、人は逆に笑えてくるらしい。
私の口から、低い笑い声が漏れた。
「……な、なに突然笑ってんの。気持ち悪いんだけど」
私の異変を察知したのか、夏波が少しだけ顔を引きつらせて一歩後ずさる。
「んーん? なぁーんにも?」
私は内心で燃え盛る怒りの業火を必死に隠し、完璧な笑顔を作ってみせた。
――もう怒った。絶対に許さない。
『クソガキ泣かす作戦』。決行は、今日だ。
家に帰ったら、こいつは絶対にすぐシャワーを浴びる。時間はおよそ二十分ほど。
その隙を突いて、ターゲットの部屋に潜入し、アイツの『最大の弱み』を探り当ててやる……!




